CSRについての基本的な知識と、企業やNPO、自治体による取り組みの最新情報を知るためのコラムを掲載します。

 CSRプラスのデータ分析や、市民へのアンケート調査を掲載する「傾向と対策」をはじめ、 CSRの取り組みに熱心な企業にヒントを学ぶ「ケーススタディ」、社会的課題に直面するNPOのマネジャーが取り組みのポイントを提案する「ホットイシュー」、CSRに関心を持つ大学生によるレポート「CSR探検隊」。シリーズでお届けします。

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人と地球にやさしいTシャツを[2008年06月25日(水)]

ケーススタディ:CSRな一品

このシリーズでは、CSRの考え方がギュッと詰まった「商品」や「サービス」を、「CSRな一品(逸品)」として、市民をはじめとした読者の皆様に分かりやすく、ご紹介していきます。



 オーガニックコットン+グリーン電力で人と地球にやさしいTシャツを


 汐風になびく オーガニックコットンTシャツ



高知県黒潮町で開催された「砂浜美術館」の「Tシャツアート展」
写真提供:久米繊維工業

 
約1000枚のTシャツが、青い空と海を背景に風になびいている。映画のワンシーンでも、ドラマのセットでもない。高知県黒潮町で開催された「砂浜美術館」の「Tシャツアート展」だ。毎年5月に開催されるこのアート展は、今年で 20回目を迎えた。全国から974人が応募。自作のイラストや写真がプリントされたTシャツが、汐風になびく景色は圧巻だ。

展示に使われたのは、「オーガニックコットン(有機栽培綿)Tシャツ」。1935年創業の老舗国産Tシャツメーカー、久米繊維工業(東京都墨田区)のこだわりのTシャツだ。


オーガニックコットンTシャツ
写真提供:久米繊維工業



知られざるコットン栽培の現実

オーガニックコットンは、農薬や化学肥料を一切使わずに栽培されたコットンのこと。通常のコットン栽培には、農薬や化学肥料が使われている。しかも、コットン畑は世界の耕地面積の3%にしか過ぎないが、世界で使用される農薬の10%を占めているというのだ。このため、労働者の健康被害や、土壌への悪影響が、日本から遠く離れた生産国で問題になっている。
久米繊維工業では、1999年からオーガニックコットンTシャツの生産を開始した。日本では、コットン生産がほとんど行われていないため、米国から輸入したオーガニックコットンを使用している。


写真提供:久米繊維工業


漂白も染色もされていない生成り色のTシャツには、茶色の葉片が紛れこんでいる。この葉片は、洗濯を繰り返すうちになくなるが、生地になる前のコットンボール(写真参照)を見れば、葉片が混じるのは、むしろ自然なことだと理解できるだろう。栽培中に落葉材を使い、収穫がしやすいように葉を落としたり、生地段階で入念に洗い、葉片を取り除くこともできるが、オーガニックコットンTシャツは、自然な色あいを、そのまま活かしている。


仕事について自信をもって語れる親でありたい

三代目代表取締役の久米信行さんは、オーガニックコットンを使い始めた理由をこう語る。
「息子達が大人になったとき、どうしてコットン畑は荒れてしまったのかと聞かれたら、何と答えられるのだろうか。と考えたことがきっかけでした」
 自分の仕事について胸を張って話せる父親でありたい。この思いが、Tシャツとオーガニックコットンを結び付けた。

1963年生まれの久米さんは、70年代、大気汚染公害で問題になった水島の石油化学コンビナートを、父親と訪問したことがあった。
「そこがどんな場所だか分からなくても、なんとなく嫌な印象を受けたことが忘れられません」
大学で読んだローマクラブの「成長の限界」は、環境破壊を省みない経済成長を続ければ、地球も人類も破滅すると警告していた。光化学スモッグ注意報の発令が珍しくない時代だった。

環境への思いは、Tシャツ製造工場に導入された「グリーン電力」にも表れている。グリーン電力とは、風力や太陽光を使った電力のこと。「自然エネルギー」とも言われる。千葉県にある縫製工場は、長野県飯田市の「おひさま太陽光発電所」から。埼玉県のプリント工場は、秋田県の風力発電施設「風こまち」で発電された電力を久米繊維謹製ブランドの商品に使い始めた。今後、グリーン電力の使用比率を高めていくための努力を続けている。


着心地のいい国産Tシャツを

外国人が土産に「メイド・イン・ジャパン」のTシャツを見つけるのは至難の業だと言われるほど、国産Tシャツが珍しい今日、久米繊維工業では、国内の直営工場で裁断・縫製を行っている。
「日本には、繊維を細かくつややかにする素晴らし紡績技術があります」と久米さん。しかし、こうした作業が可能な工場は限られているのだという。

本社のある墨田区界隈はかつて、様々な技術を持つ工場がひしめきあっていた。
「近所の散歩が工場見学になってしまうような環境でした。どこの家も窓を全開にして機械を動かしていましたから、家の中は丸見えです」

汗水たらして働く大人たちを見てきた久米さんは、Tシャツづくりに携わる熟練職人の技術や情熱を、後世に引き継ぎたいと考えている。
「そのためには、職人が必要とされる環境をつくることが先決です。高品質の商品をつくり、認めていただける顧客を増やすこと。工場が回るようになったら、職人の育成に力を注ぎたい」


大人用のオーガニックコットンTシャツには、前身頃と後身頃のつなぎ目がない。筒状に編み立てた生地から仕立てているため、脇部分を縫い合わせる必要がないそうだ。肌にあたる凸部分がなく、その分、肌への刺激も少ない。また、生地を捨てる部分も少なくなるため、環境への配慮の面でも有効だ。こうしたものづくりへの細やかな心配りを維持するためにも、愛用者を増やしていきたいと語る。

国産のコットンでもTシャツを作りたいとの思いから、栃木県藤岡町で行われている和綿づくりに家族で参加している。先日、6歳になる息子さんが、一緒に遊んでいた友達に、  「僕のお父さん、すごく苦労してTシャツを作っているんだよ。だから粗末に扱っちゃダメだよ」と話しているのを耳にしたそうだ。

「おそらく、玩具を乱暴に扱ったとか、そういう類の話だったと思うのですが、息子は和綿づくりの体験から、ものを大切にすることを学んでいるようです」
  
                                   三代目代表取締役の久米信行さん
                                     本社1階のプレスルームにて


環境だけでなく、作り手にも配慮したものづくりが最大の魅力

オーガニックコットンTシャツは、日本最大の環境イベント「アースデイ東京2008」の公式販売用Tシャツに採用された。冒頭で紹介したTシャツアート展のほかにも、小笠原観光協会主催のエコTシャツコンテストでも、イベントを盛り上げるのに一役買った。
活躍の場は、イベントだけではない。パナソニックが商品のキャンペーングッツに、オーガニックコットンTシャツを採用したように、環境に配慮したTシャツは企業の販促商品としても注目されている。

「環境に配慮している」という商品への注目は、今後も続いていくだろう。そうした時、久米繊維工業のオーガニックコットンTシャツから学ぶべきことは、環境への配慮と同じくらい、良質な商品づくりを徹底する姿勢ではないだろうか。「素材のやわらかいところが気に入っています」といった購入者からの声が示すように、「環境配慮」のTシャツは、「着心地のいい」Tシャツとしても支持されているようだ。
(フリーライター 奥田みのり)                                     



オーガニックコットンTシャツ 3,990円(税込)

【商品問い合わせ先】
久米繊維工業株式会社
オンラインショップ:http://www.t-galaxy.com/
TEL:03-3625-4188 (平日9時〜17時)
FAX:03-3625-2695
Eメール: info_tokyo_1935@kume.jp


Posted by CANPAN運営事務局 at 10:00 | CSRな事例 | この記事のURL

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