CSRについての基本的な知識と、企業やNPO、自治体による取り組みの最新情報を知るためのコラムを掲載します。

 CSRプラスのデータ分析や、市民へのアンケート調査を掲載する「傾向と対策」をはじめ、 CSRの取り組みに熱心な企業にヒントを学ぶ「ケーススタディ」、社会的課題に直面するNPOのマネジャーが取り組みのポイントを提案する「ホットイシュー」、CSRに関心を持つ大学生によるレポート「CSR探検隊」。シリーズでお届けします。

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SRIとは? 〜投資の力でSR(社会責任)を推進する[2008年06月11日(水)]
お金の流れで世界を変えるという発想で、注目を集めるSRI(社会的責任投資)。
日本でも、ゆるやかではありますが、個人向けの市場が拡大してきています。
「市民のためのSRI」シリーズでは、入門編として、SRIの基礎知識や内外のSRIファンドの概要を紹介します。


執筆者:CANPAN運営事務局


SRIとは? 〜投資の力でSR(社会責任)を推進する 

 SRIとは、Socially Responsible Investmentの頭文字で、一般的に「社会責任投資」と訳されます。CSRの視点からの企業への投資や、企業へ社会責任を果たすことを求める株主行動、コミュニティへの投資など、社会に関わる広範な投資活動を意味しています。金銭的なリターンを目的とするのではなく、企業のCSRを促進するお金の流れをつくったり、通常は投資の対象になりにくいマイノリティ(少数者)を対象としたコミュニティ開発へ投資したりすることで、持続可能な社会を構築しようとする投資がSRIです。

 各社のCSR報告書を開くと、「当社は国内外のSRIインデックスに組み入れられています」「SRIファンドの組み入れ銘柄として選定されています」という記述がみられます。「SRIインデックス」や「SRIファンド」は、お金を運用するときにCSRを果たしている企業へ選択的に投資したい場合に利用されます。つまり、それらの組み入れ銘柄であるということは、その企業は収益性とCSRの取り組みの両面において、専門評価機関等から一定以上の評価を得ているという証となります。投資家でなければ関係のない情報のように思えますが、SRIの専門評価機関は企業の公開情報(CSR報告書など)やアンケート調査から各社のCSRの取り組みを詳しく調査して企業を選定しているので、どの企業がより高い社会責任を果たしているのかを知る手がかりになります。


SRIの歴史(1)〜70年代 <宗教的視点・社会運動との連携>

 SRIは直接的な投資行動以外にも、消費者や市民の立場でできる運動としての長い歴史があります。20世紀初頭の米国や英国では、キリスト教系の教会が資産を運用する際、その教義に基づいて、タバコ・アルコール・武器などに関連する企業への投資を避けたことがSRIのはじまりといわれています。70年代ベトナム戦争当時には反戦感情から、「武器・兵器に関わっていない企業へ投資したい」という意識が広く市民の共感を呼びました。1971年には軍事関連企業を投資対象から除外する世界初のSRIファンドPax World Fundが設定されました。

 また、公民権運動や反戦運動などの盛り上がりとともに、株主行動が盛んにおこなわれるようになるのもこの時代です。米国ではゼネラルモーターズ社の自動車の欠陥問題をきっかけに、車の排気ガス基準の強化を求めたり、人種や性別に配慮した役員構成を求める株主提案がおこりました(『キャンペーンGM』)。人種隔離政策(アパルトヘイト)を行っている南アフリカ共和国での企業活動をやめるよう求める株主提案や、ベトナム戦争で使われたナパーム弾の製造中止を求める株主提案など、当時の社会問題を背景に、企業に責任ある行動を求める活動は、NGO・市民とも連携していきます。それらは、株主行動であると同時に、消費者による製品やサービスの不買運動へと広がり、多くの企業の活動に影響を与えました。


SRIの歴史(2) 1980年代〜90年代 <環境・サスティナビリティ>

 80年代後半から90年代には、企業に対して環境配慮を求める動きが世界各国で高まります。1989年、アラスカ沖でタンカーが原油流出事故を起こし、環境に多大な悪影響を与えた「バルディーズ号事件」では、「セリーズ」(CERES)という環境保全を推進する市民グループや投資家団体のネットワーク組織によって、企業が環境への対応として守るべき10の倫理原則(「バルディーズ原則」、後に「セリーズ原則」と改名)がつくられました。

 セリーズは、その10原則を受け入れた企業に積極的に投資するようになりました。また、企業が環境に配慮した事業活動を継続しているかモニターするために、情報開示のガイドラインを示しました。これによって、企業が「環境報告書」を作成することが広まり、現在の「CSR報告書」へと発展しました。

 サスティナビリティとは、「持続可能性」と訳され、1987年、国連の委員会による報告書の中で「(社会と環境が)将来世代のニーズを満たす力を損なうことなく、現在世代のニーズに沿って発展していくこと」と定義されています。90年代以降、SRIはサスティナビリティの理念と共に急速に広まっていきます。1992年、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP)は「環境と持続可能な発展に関する銀行声明」を発表しました。これは、金融機関に対して途上国へ投資をおこなう際にはその地域の「環境や社会問題への影響を評価してモニターしていくこと」を求めるものです。投資の力が社会に与える影響は甚大で、その責任を積極的に果たすことをと呼びかけています。


拡大する欧米の「SRIファンド」

 経済のグローバル化とともに投資や金融商品の国際化が進むようになった90年代以降は、欧米を中心に多種多様なSRIファンド及びSRIインデックスが存在するようになりました。
 「2007 Report on Socially Responsible Investing Trends in the Unites State」(米国のSRI調査組織「Social Investment Forum」が隔年で発行しているレポート)によると、2007年現在、米国では260のSRIファンドが設定され、残高は約21兆円(2,020億ドル)にのぼります。イタリアのAVANZI SRI research とVigeoが共同で実施した調査の報告書「Green, social and ethical funds in Europe 2007 Review」によると、欧州には、2007年現在、437のSRIファンドがあり、その残高は約7兆8950億円(487億ユーロ)となっています。

図表1)SRIファンド 純資産額国内外比較


 米国のSRI市場においては、公募型のファンド(日本の個人向けファンドに相当)の占める割合が市場全体の約7.5%であり、企業年金や宗教法人の資産を預かる機関投資家による運用がSRI市場の主流を占めています。また、SIFのレポートによると、ファンドでの運用金額に比べて規模は小さいながらも、コミュニティ投資や株主行動への投資金額もSRI市場全体の金額に含まれています。欧州においても同様に、個人向け公募ファンドはSRI市場全体の6%を占めています。

図表2)SRI市場全体の国内外比較



日本のSRIファンド

 日本国内で初のSRIファンド(個人向け公募型)は、1999年に設定された「日興エコファンド」といわれています。「日本SRI年報2007」(NPO法人社会的責任投資フォーラム編)によると、2007年9月現在、国内に50本の公募SRIファンドがあり、純資産残高は7,470億円になっています。 欧米のSRIは、企業への投資、株主行動、コミュニティ投資と、それぞれの手法を発展させていますが、日本では金融商品としてのSRIファンドへの投資が大半で、その多くが環境配慮型のものであることも日本のSRIの特徴です。

 直接投資を行うファンド以外の手法を含めたSRI市場全体の規模の比較を試みると、日本のSRI市場の規模は、個人向けSRIファンドに企業年金等を加えた約8,500億円(SIF-Japan,2007年)と推定されていますが、米国では285兆円(2兆7110億ドル:SIF,2007年)欧州では167兆円(1兆0330ユーロ: Eurosif,2005年末)と、その金額は桁違いです。日本国内でのSRIの取り組みは、欧米と比べて極めて小さいということがわかります。

 日本では、宗教団体や機関投資家がほとんどSRIに参加していないという特徴はありますが、公的年金や企業年金など、今後、SRI運用される可能性のある潜在的な資金はそれなりの規模で存在しています。個人投資家によって支えられているSRIファンドの本数は日本でも2003年以降、毎年、前年比40%前後増加しており、残高も4年で10倍になりました。国内における個人の環境・持続可能な社会づくりに関する意識は、確実に高まっています。また欧米の主要なSRIインデックスに組み込まれる日本企業の数も増加しているなど、今後の日本マネーや日本企業の動向は注目されるところです。

 次回は、SRIインデックスについて詳しく紹介していきます。


*参考文献:「SRI 社会的責任投資入門」谷本寛治編著(日本経済新聞社)
「日本SRI年報2007」(NPO法人社会的責任投資フォーラム(SIF-Japan))編
「2007 Report on Socially Responsible Investing Trends in the Unites State」(SIF)
「Green, social and ethical funds in Europe 2007 Review」(VANZI SRI research /Vigeo)
「European SRI Study 2006」(Eurosif)

*換算レート 1ユーロ=162円、1ドル=105円で計算。

Posted by CANPAN運営事務局 at 10:00 | CSRな事例 | この記事のURL

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