2007年版CSR報告書にみる情報開示度の傾向について(後編)[2008年03月19日(水)]
3)中項目全体平均点の年次推移
中項目全体平均点では、「EMS(環境マネジメントシステム)に関する取り組み」の項目が3.19と最も高く、ついで「環境負荷情報の開示に関する取り組み」(2.81)、「環境に関する技術開発と普及に関する取り組み」(1.84)と、環境関連項目が上位を占めている状況は2006年度調査より変化はみられない。詳細は表5を参照。
[表5 中項目全体平均の年次推移]

大きな変化としては、「安全の情報公開に関する取り組み」「コンプライアンスに関する取り組み」の2項目が、それぞれ0.29ポイント、0.44ポイントの上昇があった(中項目は4点満点で開示度を評価するため、上昇率に置き換えると、それぞれ7.1%、11.0%となる)。消費者から寄せられる期待への対応や、自社のリスク管理・コンプライアンス体制について、積極的に情報を開示する姿勢がよみとれる。また、「売り手良し」分野の「強制労働・児童労働に関する取り組み」、「雇用や昇進の差別に関する取り組み」においても、それぞれ0.1ポイント以上の開示度の上昇があった。詳細は表6を参照。
[表6 中項目全体平均の年次推移グラフ]

4) 項目別掲載企業数
2007年の調査で情報開示度が大幅に向上した項目は、「コンプライアンスに関する基本方針やマニュアルの作成」(75.90%)、「社外監査役の設置状況」(54.02%)「公益通報者保護に関する取り組み」(48.19%)「第三者機関によるラベリングの導入」(47.59%)である。2006年4月に施行された「公益通報者保護法」に準じた社内制度や、2008年4月から施行が予定される主に投資家保護を目的とした金融商品取引法改正(日本版SOX法)に対応する情報開示が増えたことが理由として考えられる。
環境に関する項目については、ほとんどの項目で6割以上の企業が情報を掲載している一方で、従業員の人権に関する取り組みの情報開示は、依然として少ない。
また、「グリーン購入の取り組み」(78.11%)の情報開示は進んではいるものの、より深く踏み込んで、サプライチェーンの取り組みを支援・推進する項目については、環境・人権の両面おいて、取り組みの情報開示が少ない。詳細は表7を参照。
[表7 項目別掲載企業数]

4.調査をふりかえって
環境に関する項目については、具体的なデータ開示、改善のPDCAにまで踏み込んだ記述があるが、従業員や顧客の人権に関する情報については具体的な数値が少なく、抽象的な記述にとどまるという全体的な傾向には、今年も大きくは変化がみられなかった。
また、項目別の開示度の変動からは、企業は、顧客からの要請や法令遵守に関する要求に関しては、比較的素早い対応と情報開示をおこなっていることがうかがえる。しかしながら、従業員への配慮については、「ワーク・ライフ・バランス」「ダイバーシティ」という文言こそ報告書に増えてはいるものの、明文化された指針や具体的なデータを伴わない抽象的な言及にとどまっているケースが多くみられた。
ネガティブ情報については、品質に関する不祥事や顧客の個人情報流出などは積極的に開示される傾向が見られた。消費者からみて、長期的には企業活動への信頼感を増す材料となる情報の開示は進んできているといえる。一方で、グループ会社の偽装請負など、従業員やサプライチェーンの人権・労働環境に関するネガティブ情報の開示は少ない。
以上のことからも、多様な働き手の労働環境に配慮した取り組みが、他の課題に対する取り組みに比べて不足していることは明らかであり、サプライチェーン・マネジメントも視野に入れて早急な対応が必要であるといえる。
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