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NGOにとってのISO26000とは?[2008年01月30日(水)]
執筆者:黒田かをり(CSOネットワーク共同事業責任者)
ISO/SR規格策定NGOエキスパート
 


第5回ウィーン総会の概要

2007年11月初旬にオーストリアのウィーンで開催されたISO26000策定作業部会の第5回総会に、大阪ボランティア協会の水谷綾さんとともに、初めて参加しました。

第5回目となったウィーン総会は、78カ国、37国際機関からエキスパートとオブザーバー総計390名の参加を得て開催されました。2007年11月現在、登録しているエキスパート数は404名で、その内訳は表1の通りです。
【表1】


*「SSRO」についての説明は第2回コラムの注釈を参照。

私は、最終決議をおこなう本会議のほか、規格の第3次文書の社会的責任(SR)をめぐる主要課題(表2)について検討をするタスクグループ(TG)5の分科会と、総会の前日から毎日開催されたNGOステークホルダー・グループ会合に出席しました。

ウィーン総会では、主に第3次作業文書の検討と、次に第4次作業文書に行くか、あるいは委員会原案の作成段階に移るかの検討が行われました。その結果、作業文書に整合性と一貫性をもたせるために、統合原案タスクフォースを設置すること、次段階は、第4次作業文書の策定に移ることが決まりました。


際立つNGOのプレゼンス(存在感)

NGOのメンバーは、どの会合においても、積極的に発言するなどその存在感を見せていました。第2回のバンコク総会で、規格設計仕様書の策定の際に、英国のNGOのメンバーが見事な進行を務め、ともすれば分裂も辞さなかった議論を一気にまとめあげたという「伝説」があります。その「伝説」の人が今回も参加し、要所要所で的確な発言をしていました。

また、NGOステークホルダー・グループがプロセスの透明性や公正さにとことんこだわる姿勢が随所に出ていました。毎朝、行われたステークホルダー・グループの会合は、「作戦会議」の場でもありました。たとえば、規格策定のタスク・グループ(TG)4、5、6に分かれるときや、さらにTG5の中で、主要課題(表2)ごとに分かれて議論するときは、NGOがしっかりとプレゼンスを見せて、議論が他のステークホルダーに押し切られないような人員配置を敷いたりしました。


ISO26000の概要

ISO26000は、あらゆる組織に適用可能な、第三者認証を目的としないガイダンス文書です。つまり、品質や環境のISO規格のように要求事項を含むものではなく、指針を示すものだということです。ガイダンス文書になった理由として、社会的責任の概念はいまだ発展途上にあること、社会的責任は組織が主体性を持って促進するもの、多様性や柔軟性を重要視することなどから、第三者認証になじまないという考え方があげられています。また、認証ビジネスをこれ以上増やしたくない、という声があったとも聞いています。

第1回目のコラムにも書かれていますが、この規格は、当初は企業の社会的責任(CSR)として検討されていましたが、「社会的責任を問われるべきは、社会を構成する組織すべてである」という主張がなされたことから、あらゆる組織に適用可能な社会的責任(SR)規格として策定されることになりました。しかし、多くのNGOがこの規格策定に関わるようになった背景には、グローバル化が進展する中での企業への高まる関心や積極的な働きかけがありました。

CSRが世界的に広まった理由のひとつに、急速な経済のグローバル化があります。グローバル化は、世界経済や金融の発展に大きく貢献する一方で、環境破壊や、労働環境の悪化、人権問題など、マイナスの影響も拡大させました。


NGOがISO26000策定プロセスへ関心を寄せる背景
 
企業を取り巻くステークホルダーが、企業活動や製品などに対して監視や関心を高める一方で、持続可能な開発や貧困問題の解消に向けて、国連などの国際機関やNGOが民間セクターを重要なアクターとして位置づけ、積極的な関与を求めるようになりました。90年代中ごろから、対立関係ではなく、戦略的に企業と関わりを持つNGOが増え、企業の行動規範や基準・規格の制定に関与するNGOも登場しました。

ISO26000策定に初期段階から関わってきたNGOの主要メンバーは、労働・人権問題や、環境問題の解決をミッションに掲げているところが多いようです。また、CSRを推進するために、多様なステークホルダー間の連携を促進している団体もあります。

これまで、規格作成に関わってきた多くのNGOの第一義的な関心は、CSRの推進と言えるでしょう。NGOの中には、この規格が何ら強制力を持たないガイダンス規格であり、あらゆる組織に適用可能な規格になったことから企業へのインパクトが薄まるのではないかなどの理由で、規格策定から遠ざかっていった大手国際NGOもありました。


NGOにとってISO26000の重要性

この規格は、NGOにとっても重要なものになるのではないかと思います。それは以下のような根拠からです。

第1に、この規格が目指す持続可能な社会の実現は、多くのNGOがビジョンに掲げているものです。
この規格が定める7つの主要課題(表2)を活動目的とするNGOも多くあります。NGOは自らのミッションを達成するためにも、この規格を活用することができると思います。

【表2】


第2に、この規格が、多様なステークホルダーのプロセスを重要視していることです。
規格策定のプロセスもそうですが、多くのNGOは、地域社会の課題解決や持続可能な発展に向けて、多様なステークホルダーの連携や取り組みを推進しています。他のセクターに比べて、直接的な利害関係者をあまり持たないNGOは、多様なステークホルダー間の「つなぎ役」やコーディネーター的な役割を担うことも少なくありません。

第3に、この規格が発行されたときに、途上国のユーザー数はかなり多くなりそうだということです。
国際的なネットワークを持つNGOは、現場とのつながりを生かし、途上国の潜在的なユーザーや、力を持たないステークホルダーとの連携を強化することで、この規格を途上国のユーザーにとっても使い勝手の良いものにしていくことができるかもしれません。


問われるNGOの社会的責任

この規格により社会に関わる多様なステークホルダーが共有する概念や価値観が育まれれば、ステークホルダー間でそれぞれの違いを超えた理解向上や信頼関係の醸成の土台ができるかもしれません。その結果、より効果の高い連携や協働なども可能になるでしょう。
そのためにも、NGO自身も社会的責任が求められていくと思います。NGOもその影響力を拡大するにつれ、説明責任、組織統治能力、正当性などが問われるようになってきました。

それに伴い、行動規範や基準の作成 など自主的な取り組みも多くなっていますが、説明責任や統治能力などを担保するメカニズムは未成熟な状態です。ISO26000を、NGOが自身の社会的責任を高めるためのガイダンス・ツールにしていくことも必要だと思います。




ウィーン総会でのNGOステークホルダー・グループ会合の様子
(撮影:大阪ボランティア協会 水谷綾さん)


今後に向けて

2008年1月現在の状況は、ウィーン会議の討議と決定を受けて、第3次文書の修正版2が作成され、新たに設置された統合原案タスクフォースに引き渡されたところです。今後、第4次作業文書を経て、今年の秋ごろから委員会原案の作成段階に入るわけですが、そこからは、国内委員会が議論の中心となります。今後は、国内においても、なるべく多くのNPO・NGOの方々が議論に参加できるような枠組みづくりが必要になってくると思います。

Posted by CANPAN運営事務局 at 10:00 | CSRの傾向と対策 | この記事のURL

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