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ISO26000と参加型プロセス[2007年05月24日(木)]
執筆者:今田克司 (CSOネットワーク 共同事業責任者)


 最初に3つの誤解について述べさせてください。ISO(国際標準化機構)という、それなりに名の知れている国際機関が社会的責任に関する規格づくりをしているということで、それなりに知れているISO26000にまつわる誤解です。


ISO26000:3つの誤解

 まずひとつめ。
 例えば、品質管理については、ISO9000シリーズがあり、環境マネジメントについては、ISO14000シリーズがあるというのはよく知られています。ということで、ISO26000というのは、社会的責任に関するマネジメント・システム規格と考えられているふしがあります。確かに、ISO26000というのは、ISOがつくっている社会的責任規格なのですが、これはマネジメント・システム規格ではなく、ガイダンス規格なのです。これだけではよくわからないですね。これについては次回説明します。

 2つめの誤解。
 ISO26000は、企業の社会的責任(CSR)に関する国際規格であるという誤解です。いや、誤解と言ってしまってはいけないかもしれません。昨今のCSRの流れのなかにISO26000を位置づけるのは決して間違いではないのですから。ただ、ISO26000は、ISO/SRと表記されることもありますが、CSR規格ではなく、SR(Social Responsibility=社会的責任)規格なのです。CSRの「C」がとれています。つまり、企業に限らず、すべての種類の組織に適用されることがこの規格の主眼のひとつなのです。

 3つめの誤解。
 ISO26000という規格があって、すでにそれが運用されているという誤解です。ISO26000は、まだ成立していません。ISOでのSR規格の検討は2001年頃から始まっていますが、現段階でまだ作成中なのです。成立は2009年末頃(まだあと2年半かかる!)と想定されています。
   

シドニー総会

 今年の1月末から2月頭にかけて、オーストラリアのシドニーで、ISO26000に関する第4回総会が開催されました。これに筆者は日本のNGOのオブザーバーとして参加しています。


本格的な規格作成がスタートして、ブラジルのサルバドールで第1回の総会が開かれたのが、2005年1月のことです。以後、第2回がタイのバンコク(2005年9月)、第3回がポルトガルのリスボン(2006年5月)で総会が開かれていて、今回のシドニー総会にいたっています。総会に出席するエキスパートの参加型しかもコンセンサス・スタイルの方式で意思決定を行っているため、成立までに時間がかかっています。

シドニー総会時点において、登録されているエキスパートの数は355名、参加国数は72にのぼっています。加えて、国単位の参加のほかに、リエゾン団体という国際組織(国際機関、国を超えた業界団体、国際NGO等)単位での登録制度があり、35団体が登録しています。

 現在までのところ、総会は作業文書(WD)について討議する段階にあり、シドニー総会で議論の対象となったのは、WD2と呼ばれるもので、この段階では各エキスパートが個人の資格で議論に参加します355人全員のエキスパートがシドニー総会に参加したわけではありませんが、私のようなオブザーバーも含め、300人近くがシドニーに出かけていました。
 シドニー総会の最後に組み直した行程表によると、成立は2009年末です。かなりずれこんでいますが、この2009年末成立という予定はもう動かないだろうと予測されています。
 

六者のステークホルダーのかかわり

 ISO26000の大きな特徴のひとつは、六種類のステークホルダーによる参加型でこれを作成していくと規定されていることです。六種類とは、政府、産業界、労働界、消費者団体、NGO、専門家その他で、組織の社会的責任というテーマで規格を作成するにあたって、これらの人々が作成にかかわるべきであろうというISOの姿勢が示されています。

 
しかしながら、70を超える国、300名を超えるエキスパート、そしてそれぞれ思惑の異なる六者が、コンセンサス・ベースでかかわるということを想像してみてください。協議は決して容易ではありません。それなりに時間がかかるのも納得できるのではないでしょうか。

 シドニー総会では、それまでの3回の総会と同様、月曜日から金曜日まで5日間みっちり会議が続き、しかも早朝はステークホルダーの会議や各国単位の会合があったり、夕方以降も個別の会議が開かれたりと、まさに会議づくめの一週間でした。
 
最後に決議文を採択し、次回総会までの行程表と作業の役割分担を確認して会議を終えています。次の総会は今年11月、場所はウィーンです。それまでに、次の作業文書(WD3)を作成し、これについて討議するのが第五回ウィーン総会になります。


社会的責任の主要素 

 このように、ISO26000は、参加型でつくられているため、「社会的責任」がそもそもなんであるかも、4回の総会を経てようやく固まってきたところです。シドニー総会で「SR」の主たる要素として確認されたのは、(1)環境、(2)人権、(3)労働慣行、(4)組織統治、(5)公正な事業活動、(6)社会開発、(7)消費者課題の7つです。これらを含め、規格の文章を分担してそれぞれの執筆チームが草稿を書いているというのが現在の状況です。
(この項つづく)


*筆者が2月に大阪と東京で行ったNPONGO向け報告会の資料は、CSOネットワークのホームページ(http://www.csonj.org)からご覧になれます。 また、この規格の概要については、日本規格協会のホームページ(http://www.jsa.or.jp/stdz/sr/sr.asp)をご覧ください。ISO26000-SR について(英文)は、http://www.iso.org/sr、ISO26000-SR の公開の作業文書(英文)は、 http://www.iso.org/wgsr からご覧になれます。

*日本のNPO/NGOとして、ISO26000に関する情報交換を行い、いかに成立過程にかかわっていくかを議論するメーリングリストが立ち上がっています。参加ご興味の方は、上での情報交換に参加したい方は、npongo-sr@jnpoc.ne.jpまでご氏名、ご所属、連絡先を添えてメールをお送りください。

Posted by CANPAN運営事務局 at 10:00 | CSRの傾向と対策 | この記事のURL

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