2006年版CSR報告書にみる情報開示度の傾向について(後編)[2007年02月16日(金)]
執筆者:CANPAN運営事務局
3.調査結果 (3の1〜3は前編に掲載)
4) 「世間良し」 中項目別業種別順位
社会貢献に関する取り組みと、環境関連の取り組み3項目を比較すると、傾向にちがいが見られる。「社会貢献」(平均1.18)は、保険業、証券、小売業、情報・通信業といった業種が軒並み上位を占めており、製造・素材産業、輸送関連は低くなっている。
一方、環境関連の3項目(環境マネジメントシステム:3.22)(環境負荷:2.83)(環境に関する技術開発:2.04)は、製造・素材産業、輸送関連の業種が上位を占める。
詳細は、表6の通り。
※グラフ上のデータの数値については、こちらをご覧ください。
5)「売り手良し」中項目別業種別順位
「世間良し」「買い手良し」と比較して情報開示度が低いが、中でも、「強制労働・児童労働」の項目が最も低く(0.21)、グローバルな事業展開を見据えた上での情報開示が課題といえる。
一方、「雇用や昇進の差別」(1.23)が最も情報開示度が高いことから、障碍者や女性、中高年の雇用といった個別の取り組みのデータ実績の情報開示は進んできているといえる。
詳細は、表7の通り。
※グラフ上のデータの数値については、こちらをご覧ください。
6)「買い手良し」中項目別業種別順位
「安全の情報公開」(1.83)が最も情報開示度が高く、業種別では、繊維製品、化学、水産・農林業、食料品といった日常生活に身近な業種が上位を占める。コンプライアンス(1.58)、個人情報保護(1.04)の項目は、保険業、情報・通信業、証券など、個人情報を扱う業種で高くなっている。
詳細は表8の通り。
※グラフ上のデータの数値については、こちらをご覧ください。
7)中項目全体平均点の年次推移
中項目ごとの全体の平均点では、EMS(環境マネジメントシステム)に関する取り組みの項目が3.22と最も高く、ついで環境負荷情報の開示に関する取り組み(2.83)、環境に関する技術開発と普及に関する取り組み(2.04)と、環境関連項目が上位を占めている。
2005年版報告書を元に調査したデータとの比較では、2006年版の方が合計で1ポイント以上、開示度が下がっているが、2006年調査で掲載の有無についての条件を厳格化した(「研修の実施」だけでなく「研修内容、対象者、実施回数」の記載がなければ記述なしとする、など)ことが背景にあると思われる。
そのなかでも「環境負荷情報の開示に関する取り組み」「労働者としての権利に関する取り組み」「雇用や昇進の差別に関する取り組み」の3項目は開示度が向上している。これは、例えば障碍者の法定雇用数を達成していなくても数値は掲載するなど、いわゆるネガティブ情報も積極的に開示する企業が増えているためと考えられる。
詳細は表9参照。
8)項目別掲載企業数
環境関連の項目についてはほとんどの項目が6割以上の企業で情報を掲載している一方で、セクシャルハラスメントに関するガイドライン(15.19%)や、公益通報者保護(26.33%)など、社会的要請が強いにもかかわらず情報開示は進んでいない項目も見られる。
詳細は表10を参照。
4.調査をふりかえって
環境に関する項目についてはどの報告書でも具体的なデータに基づいて情報を開示できる状態になっているが、従業員や顧客の人権に関する情報については記載もあいまいで、国連「グローバルコンパクト」などの引用に留まっているようなケースも多く見られた。人的多様性分野の遅れを具体的な数字で示せたことは意義があると考える。
環境に関する情報開示もそれなりの期間を経てようやく今日に至った経緯をふまえると、障碍者や女性、外国人、高齢者、子どもなど、「人的多様性」に配慮のある企業活動のための取り組みが急がれていることを痛感する。
★なお、「2006年CSR報告書にみる情報開示度の傾向について」調査結果分析(詳細版)は、2007年5月頃、公表予定である。



