今日の人権・部落問題と企業(後編)[2007年02月05日(月)]
社団法人 部落解放・人権研究所 中村清二
●労働者の個人情報保護と人権〜採用から退職後までを対象
2005年4月、個人情報の有用性と保護とのバランスを目的とした個人情報保護法が全面実施されました。部落問題の解決の点で重要なのことは、この法律が顧客情報だけでなく労働者の個人情報保護も当然ながら射程に入れていることです。すなわち、採用段階から退社後までの労働者の個人情報の保護を対象としているのです。2004年7月の厚労省の「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針」が全体を示しています。
採用段階では、既に個人情報保護法の特別法といえる職安法5条の4や2000年の「労働者の個人情報保護に関する行動指針」(厚労省)で、「社会的差別の原因となる恐れのある個人情報の収集の原則禁止」等が明確に定められていますし、中途採用者の情報収集の場合も「本人の事前同意を条件とする第3者からの間接情報の収集」となっています。
次に、労働協約締結以降としては、(1)センシティブ情報の収集禁止又は制限、(2)健康情報は法令に基づく特定目的の場合のみ収集可能で、当然、秘密保持義務があること、各種検査の実施も、HIV検査・遺伝子診断は禁止ですし、性格検査等も明確な本人同意が必要であること、(3)コンピュータのモニタリングも目的の特定化、社内規定の策定等による事前通知等が必要であること、(4)保管についても不採用者の情報は本人返還か廃棄処分が基本で退職者の個人情報も秘密保持義務があること、(5)提供では、出向・転籍の際でも事前同意のない第三者提供を原則禁止していること(ただし共同利用やオプト・アウトなどの例外もあり)等を定めています。
これまで部落問題に取組んできた企業にとって、身元調査や就職差別の撤廃が大きな取組みの柱でしたが、個人情報保護法が制定され「労働者の個人情報保護」という普遍的視点に位置づけ、取組みを発展させていくチャンスです。
●人権のまちづくりと企業
第3期の部落解放運動として、「人権のまちづくり」という理念を解放同盟は提案しています。部落だけをどうしていくのかということだけでなく、部落を含んだ小学校区・中学校区で人権という視点から、まちづくりをどのようにしていくかです。福祉の問題が象徴的だと思いますが、この施策は基本的には中学校区・小学校区で事業が実施されます。地域福祉計画を校区レベルで取り組んでいくのが一番望ましいのです。
しかし、一口に高齢者といっても、部落の高齢者は非識字率が高い状況にあります。在日韓国・朝鮮人の高齢者世代には日本語の問題への配慮が重要です。このような人権の視点を持った「まちづくり」の取り組みを通じ、部落の生活実態の課題の克服も積極的に取組んでいくのです。
さらに、これまでは差別の壁が厚すぎて、部落と部落外の人が共通な目標に向かって一緒に汗をかいていく取り組みはあまりありませんでした。しかし、人間は共通な目標に向かうことによって信頼関係が作り出されます。教育や啓発の力は大きいし大事ですが、同時にお互いにとって生活と密着した大切なテーマで協働する中で得た信頼関係は、偏見を小さくしていくものと思います。
アメリカの場合は、いわゆる都市部のインナーシティー開発という取組みに企業が大きく関わることがあります。有色人種やホームレスの人々が都市部のインナーシティーにスラムを形成していますが、その開発に企業の本業で関わるということが活発になっています。人権のまちづくりにも、企業の本業を活かしていろんな関わり方ができる可能性があると思います。
以上のように企業が部落問題や人権に関われる要素が多くあります。そして、社内研修は、こうしたことをいろいろ考えていくための大きな出発点ですし、通過点だと思います。そういう意味で社内研修は非常に重要ですし、これまでも一定の成果を上げています。しかし、ゴールではありません。一体ゴールをどこに求めていくのか、まさに企業の社会的責任の内実との関係で問われているのではないでしょうか。
●労働者の個人情報保護と人権〜採用から退職後までを対象
2005年4月、個人情報の有用性と保護とのバランスを目的とした個人情報保護法が全面実施されました。部落問題の解決の点で重要なのことは、この法律が顧客情報だけでなく労働者の個人情報保護も当然ながら射程に入れていることです。すなわち、採用段階から退社後までの労働者の個人情報の保護を対象としているのです。2004年7月の厚労省の「雇用管理に関する個人情報の適正な取扱いを確保するために事業者が講ずべき措置に関する指針」が全体を示しています。
採用段階では、既に個人情報保護法の特別法といえる職安法5条の4や2000年の「労働者の個人情報保護に関する行動指針」(厚労省)で、「社会的差別の原因となる恐れのある個人情報の収集の原則禁止」等が明確に定められていますし、中途採用者の情報収集の場合も「本人の事前同意を条件とする第3者からの間接情報の収集」となっています。
次に、労働協約締結以降としては、(1)センシティブ情報の収集禁止又は制限、(2)健康情報は法令に基づく特定目的の場合のみ収集可能で、当然、秘密保持義務があること、各種検査の実施も、HIV検査・遺伝子診断は禁止ですし、性格検査等も明確な本人同意が必要であること、(3)コンピュータのモニタリングも目的の特定化、社内規定の策定等による事前通知等が必要であること、(4)保管についても不採用者の情報は本人返還か廃棄処分が基本で退職者の個人情報も秘密保持義務があること、(5)提供では、出向・転籍の際でも事前同意のない第三者提供を原則禁止していること(ただし共同利用やオプト・アウトなどの例外もあり)等を定めています。
これまで部落問題に取組んできた企業にとって、身元調査や就職差別の撤廃が大きな取組みの柱でしたが、個人情報保護法が制定され「労働者の個人情報保護」という普遍的視点に位置づけ、取組みを発展させていくチャンスです。
●人権のまちづくりと企業
第3期の部落解放運動として、「人権のまちづくり」という理念を解放同盟は提案しています。部落だけをどうしていくのかということだけでなく、部落を含んだ小学校区・中学校区で人権という視点から、まちづくりをどのようにしていくかです。福祉の問題が象徴的だと思いますが、この施策は基本的には中学校区・小学校区で事業が実施されます。地域福祉計画を校区レベルで取り組んでいくのが一番望ましいのです。
しかし、一口に高齢者といっても、部落の高齢者は非識字率が高い状況にあります。在日韓国・朝鮮人の高齢者世代には日本語の問題への配慮が重要です。このような人権の視点を持った「まちづくり」の取り組みを通じ、部落の生活実態の課題の克服も積極的に取組んでいくのです。
さらに、これまでは差別の壁が厚すぎて、部落と部落外の人が共通な目標に向かって一緒に汗をかいていく取り組みはあまりありませんでした。しかし、人間は共通な目標に向かうことによって信頼関係が作り出されます。教育や啓発の力は大きいし大事ですが、同時にお互いにとって生活と密着した大切なテーマで協働する中で得た信頼関係は、偏見を小さくしていくものと思います。
アメリカの場合は、いわゆる都市部のインナーシティー開発という取組みに企業が大きく関わることがあります。有色人種やホームレスの人々が都市部のインナーシティーにスラムを形成していますが、その開発に企業の本業で関わるということが活発になっています。人権のまちづくりにも、企業の本業を活かしていろんな関わり方ができる可能性があると思います。
以上のように企業が部落問題や人権に関われる要素が多くあります。そして、社内研修は、こうしたことをいろいろ考えていくための大きな出発点ですし、通過点だと思います。そういう意味で社内研修は非常に重要ですし、これまでも一定の成果を上げています。しかし、ゴールではありません。一体ゴールをどこに求めていくのか、まさに企業の社会的責任の内実との関係で問われているのではないでしょうか。



