防災ドロップス(前編)[2008年10月15日(水)]
ケーススタディ:CSRな一品
このシリーズでは、CSRの考え方がギュッと詰まった「商品」や「サービス」を、「CSRな一品(逸品)」として、市民をはじめとした読者の皆様に分かりやすく、ご紹介していきます。
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サクマのドロップス+東京ガスのコラボで「防災ドロップス」誕生
手のひらサイズの缶に入ったドロップスといえばサクマ製菓のドロップス。なかでも、市販品の「非常用サクマドロップス」(非常食)を使った東京ガスの「防災ドロップス」(写真参照)は、企業のノベルティグッズであるだけでなく、震災時に自動停止するガスメーターの復帰方法を四コマ漫画で紹介するPRグッズとしても注目されています。

缶の中央に描かれているのはガスメーター。
側面には「ガスメーターは、震度5程度の地震を感知すると安全装置が作動し、ガスを止めます」という説明が。しかし、このことを知っている人は少なく、また、停止したガスメーターの復帰方法も、あまり知られていません。
そこで東京ガスは、ガスメーターの復帰方法をドロップスの缶に掲載したのでした。
NPO法人プラス・アーツとの出会いで、人を惹きつけるアートの力を実感
防災ドロップス誕生までの経緯を、東京ガス広報部社会文化センターの山田俊彦さんにお聞きしました。
「2006年頃に『安心・安全』をテーマにした社会文化活動を行いたいと考えていた矢先、NPO法人プラス・アーツさんから、親子で参加できる防災訓練を一緒に行いませんかという提案が入ってきたのです」(山田さん)
プラス・アーツは阪神・淡路大震災から10年目の節目に、神戸市から依頼を受けて、新しく親子を対象にした防災訓練「イザ!カエルキャラバン!」を開発し、実施した団体です。プラス・アーツ理事長の永田さんは、神戸以外でも開催できないかと考え、東京ガスと連絡を取り、山田さんと出会いました。この出会いが、後の防災ドロップスの誕生につながったといいます。
2006年にプラス・アーツと東京ガスのコラボで、初めて関東で「イザ!カエルキャラバン!」を開催。二日間で2600人の親子が参加する大盛況な防災訓練になりました。水を運ぶバケツリレーでは、水槽が水でいっぱいになるとカエルのシルエットが浮き上がるなど、楽しい防災訓練が体験できる工夫が随所にほどこされていたそうです。
あるとき、永田さんは山田さんに、「これを使って何かやりませんか」と、非常用サクマドロップスを手渡したそうです。サクマドロップスの缶を使った企業のノベルティグッズは他社でも作っていたので、それ自体は新しいアイディアではなかったのですが、山田さんが思いついたのは、ガスメーターの復帰方法をPRするツールとして活用することでした。
ガスメーターの復帰方法を楽しく知ってもらいたい
「2005年に東京都足立区で震度5強を記録する地震が起きたときのこと、ちょうど家内の実家の千葉県市川市にいた私は、急いで本社に向かいました。弊社の広報部の社員は、ガスを供給しているエリアで震度5弱以上の地震があった場合、会社へ駆けつけることになっているのです。高速が閉鎖されていたので、電車を乗り継いで、どうにか会社にたどり着くと、コールセンターだけでは対応できないらしく、問い合わせの電話を本社でも受けていました。その内容は「ガスが使えない、」というものばかりでした。それまでは、震度5程度の地震でガスメーターの安全装置が作動することや、その復帰方法について、当然お客様はご存知だと信じていましたので、こうした認識が一気に覆されてしまったのです」(山田さん)
この日だけで、約5万件の電話があり、電話口で社員は一様に、ガスメーターの復帰方法を説明していたといいます。この日から山田さんは、どうしたらメーターの復帰方法を知ってもらえるのか考えるようになりました。そして、約2年後、永田さんから非常用ドロップスを使って何かしないかという提案があり、缶に復帰方法を掲載するというアイディアが、山田さんの頭を横切ったのです。また、プラス・アーツと開催した防災訓練の経験から、アートを取り入れたものにしたいと考えていました。
分かりやすく、しかも親しみやすいイラストを描いてもらえたら、という山田さんの要望に永田さんは、フリーペーパー「R25」でおなじみのイラストレーター・寄藤文平(よりふじぶんぺい)さんを紹介。事情を説明すると、寄藤さんはすぐに承諾してくれたそうです。
親しみやすいイラストが社内で評判に
次なる山田さんの課題は、製造の最低ロット5000個分を満たす注文を確保することでした。「まだイラストが完成していなかったので、R25などから寄藤さんのイラストを抜き出し、いろいろな部所に注文のお願いに走り回りました。寄藤さんから実際に使うイラストが届いてからは、ぐんと社員の反応がよくなりました」(山田さん)。山田さんと永田さんは寄藤さんからイラストが届いた時、その素晴らしさに「これはイケる!」と強く感じたといいます。
最終的に各部所からの注文は65000個にまで増えました。購入先の一つ人事部の採用担当者は、「学生に配るグッズとして、安心・安全を重視する会社の姿勢だけでなく、ガスメーター復帰方法のPRにも役立つから」と8000個注文してくれたそうです。
(写真説明)東京ガスのホームページ上に公開されているオンラインゲーム「KIKU(聞く)・KIKU(効く)」も、プラス・アーツが製作したもの。
阪神・淡路大震災の被災者の体験談を聞きながら、重要だと思う発言部分で「うなずく」ボタンをクリックするとポイントが溜まります。
筆者も挑戦してみましたが、これが意外と難しい。高得点は獲得できませんでしたが、自然に災害時に役立つ知識が身につくことに感動しました。



