CSRについての基本的な知識と、企業やNPO、自治体による取り組みの最新情報を知るためのコラムを掲載します。

 CSRプラスのデータ分析や、市民へのアンケート調査を掲載する「傾向と対策」をはじめ、 CSRの取り組みに熱心な企業にヒントを学ぶ「ケーススタディ」、社会的課題に直面するNPOのマネジャーが取り組みのポイントを提案する「ホットイシュー」、CSRに関心を持つ大学生によるレポート「CSR探検隊」。シリーズでお届けします。

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「むそう」が誇る黒豚うんぷう麺[2008年09月25日(木)]
ケーススタディ:CSRな一品

このシリーズでは、CSRの考え方がギュッと詰まった「商品」や「サービス」を、「CSRな一品(逸品)」として、市民をはじめとした読者の皆様に分かりやすく、ご紹介していきます。



 むそうが誇る「黒豚うんぷう麺」


こだわりの逸品「黒豚うんぷう麺」


 愛知県知多半田の小高い丘にある、木をふんだんに使った建物「アートスクウェア」に「中華茶房うんぷう」がある。ここの名物メニューがしょうゆベースのこってり系ラーメン「黒豚うんぷう麺」である。スープは、江戸時代から醤油所として有名な地元武豊町の「傳右衛門(でんうえもん)」を使っている。この醤油は江戸時代から使っている樽を使って醸造しており、そこに生きついている菌がコクのある味を作り出している。
 また、ベースにはアゴの干物やサバ節等これも地域名産物を使用しており、しっかりとした味ながらもあっさりとしているので、国産小麦を使用した太麺との相性は抜群!


 このスープにとろけるチャーシューがのっているが、これがまたうまい! 本場鹿児島産の純系黒豚のバラ肉を独自のタレで煮込んだもの。ここに朝とったばかりの玉子を使った味付け玉子とやわらかいメンマがのり、バランスのとれた仕上がりになっている。開発者はなんと有名ホテルのフレンチの元料理長…。


障害をもつ人の「特性」はすべて「品質・サービス向上」へ

 ランチを中心とした48席の飲食店で、土日には3回転する程繁盛しているこの中華茶房、実は障害者支援施設である。4人の障害者と1人の支援者でこの忙しい店を切り盛りしているのだ。ハード・ソフト共、今まで福祉支援現場で培ってきたノウハウをふんだんに盛り込み、結果、見た目は「ただ繁盛している中華茶房」なのである。


「中華茶房うんぷう」


 例えば、太麺なのは、こってり味なので麺と絡む方が良いのと、適度なコシが欲しかったからではあるが、調理で茹ですぎることがあるかもしれないため、麺が伸びにくい国産小麦を使用した太麺を利用しているという配慮にもつながっている(※国産小麦は水分の吸収が遅い)。注文が伝票記入式なのも、できる限りヒューマンエラーを減らし、待ち時間を短くしてもらうため。また、女性の利用が多いことから、サラダバーを併設しているのだが、これも自閉症をお持ちの方にとっては苦手なコミュニケーションを省いてサービス提供しやすいためでもある。

 さらにハード面では、調理工程を細分化するために、厨房を長く設計する、洗い場は前に壁が来るようにする等、どのような特性を持つ人が働くのかを考慮に入れた設計が施されている。言うなれば「障害をもつ人の特性」はすべて「品質・サービス向上」につながっているのである。ちなみに、黒豚は鹿児島の障害者施設で丁寧に育てられたもので玉子は自身の社会福祉法人で実施している養鶏事業で採れたものを使用している。障害者の方は動物と相性が良く、丁寧に世話をするという特性がここでも活かされているのだ。昨今叫ばれている安心・安全の食といった観点からすれば、今後、この特性は、市場での競争優位を確保できるものとなっていくであろう。


創発型地域生活支援 を目指して

 配慮はこれだけにとどまらない。これらの具材やノウハウはすべてFC(フランチャイズ)で提供できる状態になっている。例えばスープはエバラ食品 で生産しパックとして納品されるので、全国どこでも再現可能な味となっている。調理や就労支援についてはインターンを受け入れられる態勢を整えており、ソフト・ハードともに提供できるように準備している。

 何故、ここまで準備するのか? 
 
 これは障害者自立支援法の改定によって、今後は授産事業の意義がより重要視されるからである。しかしながら、全国の障害者系施設は、今まで「支援」を中心に取り組んできた部分が強く、事業化や商品開発は苦手なところが多い。そこで、むそうは自身達で開発してきた秘伝のノウハウを惜しみなく外に出すことで、多くの関係者が喜び、その関係者達と共に創発を生みだして行こうという「創発型地域生活支援」というコンセプトで進めてきたわけである。 
 ヤマト福祉財団とヤマト運輸が中心となって設立した「スワンベーカリー」も同コンセプトで機能しており、このアプローチは有用であると思われる。「生きにくい人が、暮したいところで暮らせるような社会にしたいんです」と中華茶房うんぷうを運営する社会福祉法人むそう理事長の戸枝陽基さんは力強く話す。

(戸枝陽基さん 社会福祉法人むそう理事長)

単純に“普通”においしいものを

 商品開発もまだまだ続く。暑いシーズンには、冷製ものとして「冷やしラーメン」「トマトラーメン」を開発。法人としては、5月に商店街の中につけそばと大判焼を販売する「狐坊庵」をオープン。このそばの付け汁にラー油を入れて食べると、そばの風味が際立ってさらっと一盛すぐに平らげられる。
 エネルギッシュに活動を続けるむそう、その商品開発の秘訣を聞いてみた。「いやぁ、秘訣って言うか…、単純に“普通”においしいものを作ろうと思っているだけです。」と戸枝理事長。この顧客視点をぶらさないところは見事である。
 取材を通じて、他施設と異なると感じた点は「やりきる力強さ」にあるだろう。商品開発して市場に問うというのは誰にとっても怖さを感じるはずである。しかし、むそうは違う。代表がぶれずに高い視座を持ち続けるからこそ利用者もスタッフも理念を共有し、多くの困難を乗り越えていくのであろう。それにしてもおいしいラーメンだった…(笑)。

   狐坊庵で人気の大判焼

(執筆:関原深(株)インサイト代表取締役)


【店舗紹介】

「中華茶房うんぷう」
営業時間:8:00〜17:00(17:00以降は予約のみ、お気軽にお問い合わせください。)
定休日:月曜
住所:愛知県半田市長根町3-1-11
URL:http://www.musou03.org/art/chuuka.html

「狐坊庵」
営業時間:10:00〜18:00
定休日:水曜、日曜
住所:愛知県半田市銀座本町3-15
URL:http://www.musou03.org/office/store.html


Posted by columnist1 at 10:00 | CSRな事例 | この記事のURL

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