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次世代のために仙台の森を元気にする!

「杜の都」として知られる仙台。その名にふさわしい豊かな森を守り育てよう!と「仙台市森林アドバイザーの会」(通称「もりっと仙台」)は活動している。チェーンソーや鎌を手に森へ入り、草を刈り、切った丸太を運び出す。自然相手の地道で厳しい作業に向かわせるのは、里山に対する愛情だ。たくさんの植物や動物が育つ、恵みあふれる自然を取り戻したい。その情熱が、仙台の森をよみがえらせつつある。
雪にも負けず、笹刈りだ!森林整備の第一歩

 仙台駅から作並温泉へ向かう国道沿いにある、標高300メートルの箱倉山。雪のちらつく2月中旬、この山の雑木林で下刈り(※1)が行われた。「仙台市森林アドバイザーの会」の青いヘルメットをかぶり、防寒着に長靴姿の会員が12名。チェーンソーや刈払機(※2)、それらの燃料が次々と車から降ろされ、あちこちでブーンブーンとエンジンを試動させる音がする。ちょっとした工事現場だ。「機材は問題なし」と判断するとそれぞれが山の中へ。その見極めも足取りも慣れたものだ。

この日の現場、箱倉山
この日の現場、箱倉山

 まずはミーティング。その日の段取りが伝えられた後、作業・整備担当の佐藤英雄さんから「雪が積もっていて向こう側の国有林とこちら側の雑木林との境界がわからないので、今日は間伐せずに下刈りだけでお願いします」と指示が出される。続いて「軽く体を動かしましょう!」とラジオ体操でオイッチ・ニー・サン・シー。

仙台市森林アドバイザーの会の皆さん
仙台市森林アドバイザーの会の皆さん。青いヘルメットがトレードマーク

 積雪が10cmほどあり足元の土は見えないが、昔ここは棚田だったという。40年もの間すっかり放置されていたせいで、ハンノキ(※3)があちこちで立派に育っており、夏には薄暗いほどの雑木林になるそうだ。この棚田跡の平地の一部を丸太置き場にするために、この日は一面に茂った根強い笹を退治する。
 さすがは息のあった仲間同士、自然と役割分担ができている。チェーンソーで枯れ木を切る人、刈払機を左右に振りながら低く茂った笹を刈る人、鎌で地道に笹を刈る人。切った後は雪の上に落ちた笹や枝を手早く脇に集める。切っては寄せ、刈っては寄せ、自然相手の果てしない作業だ。雪も本格的に降り始めるなか、それぞれが作業に没頭して1時間後、辺りの笹薮がすっきりして見違えた。雪も止まず、今日の仕事はこれにて終了!

森林整備
 チェーンソー(左)、刈払機(中央)、鎌(右)を使って森林整備を行う

 山主さんからは「雑木林にツリーハウス(※4)などがあったらいい。たき火を囲んでお茶やランチが楽しめるような場所にしてほしい」と要望をもらっている。約束の3年後には「仙台市森林アドバイザーの会」のみなさんの手で、どんな山に変身しているか楽しみだ。

「森林アドバイザー」としてスキルアップを目指したい

 「仙台市森林アドバイザーの会」は、仙台市農林土木課が主催する「森林アドバイザー養成講座」の修了生たちによって2004年に結成された。講座は森林ボランティア活動のリーダーを育成することを目的に、植林、下刈り、枝打ち、間伐などの森林作業や、植物や鳥類などの自然観察を1年間学ぶというもの。毎年、講座の修了生たちを会員に迎えながら、主に仙台市から委託された植樹祭や育樹祭といった市民向け行事で、ボランティアへの作業指導などにあたっていた。
 意欲ある会員たちからは次第に、知識や技術をもっと現場で活かしたい、もっとスキルアップしたい、という声が出始めた。これまでの活動に加えて、「自分たちの現場を見つけよう」とフィールドを探し、その結果、仙台市から「旗立三丁目緑地」の整備を、知り合いの山主から「箱倉山雑木林」の整備を任されることになった。

荒廃した人工林をなんとか元気にしたい!

 山では過酷な現場を経験した。「林業の大変さが身をもってわかりました。夏の時期の下刈りなんてきついもんです。刈払機を使えば汗が吹き出るし、虫にはやられる。蜂に刺された仲間もいましたよ」と代表幹事の鹿郷徳夫さん。そして木を切る以上に大変なのが、間伐した丸太の運び出しだ。チェーンソーで切り倒した木は、放置しないでできるだけ利用するのが原則。丸太を抱えて斜面を下り、平らな場所にまとめておくか、道路まで運び下ろす。大の男4人がかりで丸太1本をやっとこさ持ち上げるという重労働だ。山仕事に従事する人が減っているというのも頷ける。
 林業の衰退は、あちこちにある荒れ果てた人工林を見てもわかる。日本の森林面積の4割を占めるスギやヒノキなどの人工林は、燃料や資材としての需要が急増した1950~60年頃に植林された。しかし燃料が木炭から石油へと変わり、外国から安い木材が入ってくると、国産材は売れなくなり人工林は放置されてしまう。
 スギやヒノキは「競争して成長する」という性質を持つため、密集して植えられた。10数年ごとに間伐をし、成長の悪い木や病気の木を取り除いて、元気な木が日光をたくさん浴びてのびのび育てる環境を作るというのが約束事だ。しかし間伐には費用がかかる。売れない木々の世話に自腹を切る山主はほとんどいない。

間伐 杉
健康な木を残して間伐する。良質な杉が育つには50年かかる

 「里山は荒れています。笹やツルだらけで下草さえ生えていない。山に草がなければ虫もいないし、鳥もウサギもやって来ない。生態系が貧弱だから木も枯れるという悪循環なんです」と副代表幹事の忍頂寺晃嗣さんは言う。「だから元気で豊かな森に戻ってほしいという思いで、僕たちは間伐や下刈りなどの森林整備をしているんですよ」。
 森は水を蓄えたり、土砂災害を防いだり、地球温暖化を食い止める働きも持つ。「元気な森は私たち人間にとって欠かせない存在。地道な作業ですが、次世代のためにも頑張って続けていきます」と鹿郷さんは笑顔だ。

森が大好きな仲間が集まり、得意分野で森を守る

 現在67名の会員を抱える「仙台市森林アドバイザーの会」は、森林整備をはじめスキルアップ研修、他の森林保全団体との協働作業など活発に活動している。一方、会員は無給で参加しており、機材もまだ不十分。また、チェーンソーなど危険度の高い機材を扱うため、高額の「チェーンソー保険」へも加入しなくてはならない。財政状況が厳しいところに、昨年末、日本財団を通じて株式会社ウィル・シードから助成金を得られることになった。突然の幸運で必要な機材が一通り揃い、みんな大喜び。懸案が一つ減った今、「会員の意欲を維持向上するためにも交通費、できれば人件費も払えるように財政基盤を確立していきたい」と幹事の寺沢信志さんは意気込んでいる。

間伐 杉
株式会社ウィル・シードからの助成金で機材一式を購入

 箱倉山の現場では、男性陣がチェーンソーの音を響かせるなか、木に絡んだツルを集める女性がいた。「リースの材料にするの」とニコニコ顔の升和子さんは、こうした山の素材で作品を作り、クラフト部会の活動として仙台市の秋の収穫祭で販売している。部会には、子どもたちや市民と森林を歩きながら鳥や木の観察をする自然観察部会もある。
 切る人あり、作る人あり、見る人あり。大好きな森への関わり方は会員それぞれでかまわない。「私たちが最終的に目指しているのは、たくさんの植物や動物が共存する元気な森を育てることなんです」と寺沢さん。仙台の自然をとことん愛する気持ちは、みんな一緒だ。


(※1)植えられた苗木の生長を妨げる草木を刈り払うこと。
(※2)草木を刈り払うための機械。
(※3)湿原や沼沢地に生育する高木。荒廃地でも生息できる適応力を持つ。
(※4)生きている木を土台にして作られた建物。

「幹に穴が開いているでしょ。たぶんコゲラの巣。枯木だから倒れてくる危険性もあるの。安全のために木を倒すか、鳥のために木を残すか、いつも迷うんですよ」。枯木一本を前にみんなで腕を組み「う〜ん」。笹刈りの合間も木の話、鳥の話でワイワイ盛り上がる。みんな、山を愛してるんだなぁ。お土産に「クロモジ」の枝をいただきました。切り口からはとってもいい香り。「高級料亭の楊枝はこれなんだよ」。今度、頑張ってお箸に仕立ててみます。みなさん、ありがとうございました。
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