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渋谷に咲く、人々の温かな想い

若者の街、渋谷。「その喧騒(けんそう)と猥雑(わいざつ)さの中に、花が咲いていたら? きっとゴミもポイ捨てする人も減っていくはず……」。一人の女性のそんな想いからスタートしたのが「渋谷Flowerプロジェクト」(=通称「シブハナ」)だ。主なメンバーは学生やサラリーマンなどの社会人。現在、渋谷で公園や道路わきの花の手入れをしたり、街のシンボルでもあるモヤイ像の花壇の手入れをしたり、「アースデイ」のイベントにも参加している。そんな「シブハナ」の定例活動のようすをレポート。
日曜の11時、モヤイ像前集合!

 あと1時間で正午だというのに、日曜日のモヤイ像前は、さほど待ち合わせする人もおらず、人影もまばら。「シブハナ」代表の小島盛利さんを待っていると、この日植える予定のデイジーの鉢植えを提げて現れた。すると、ボランティアに参加する人も集まってくる。
 最近では、『R25(首都圏を中心に配布中のサラリーマン向けフリーペーパー)』や『non-no(10〜20代向けの女性誌)』に取り上げられるなど、知名度があがってきている「シブハナ」。そのメンバーは20人ほど。この日のスタート時刻にいたのは、小島さんほか常連メンバーや初参加の人など計6名。ボランティアサークルに所属している女子大生や、飲み会でメンバーに誘われたという社会人の男性など、その肩書きも参加理由もさまざまだ。みな平日は学校や仕事で忙しいから、活動は主に週末に行われる。

渋谷駅の待ち合わせのシンボル、モヤイ像。「シブハナ」のメインの活動場所だ
渋谷駅の待ち合わせのシンボル、モヤイ像。「シブハナ」のメインの活動場所だ


定例活動はまずモヤイ像から

 「アースデイ」のイベントに参加するなど、特別なとき以外はほぼ毎週末、渋谷の花を手入れする定例活動を行う「シブハナ」。この日も、まずはモヤイ像のまわりの花壇に落ちているゴミ拾いを開始した。

初めて参加する人にもわかるように、まずは作業の進め方を小島さんがていねいに説明してくれる
初めて参加する人にもわかるように、まずは作業の進め方を小島さんがていねいに説明してくれる


 一見きれいに見える花壇でも、アメやガムの包み紙、たばこの吸殻など、よく見ると結構な数のゴミが落ちている。メンバーはゴミを拾っては、各自が持参したコンビニ袋などのゴミ袋に入れていく。ちなみに定例活動に参加するために必要な持ち物はないが、「軍手」があればよりよいとのこと。

花壇の中の花を一つひとつ確認しながら作業を進めていく
花壇の中の花を一つひとつ確認しながら作業を進めていく



 ゴミ拾いが終わったら、花がら摘み。これは枯れてきた花の花びらをがく(※1)ごと摘むというもの。こうしておかないと株が弱くなり、花つきも悪くなるので、花壇全体の見た目が美しくなくなってしまうのだそうだ。

モヤイ像の花壇で、参加者全員で摘んだ「花がら」。結構な量になる
モヤイ像の花壇で、参加者全員で摘んだ「花がら」。結構な量になる


 よく見ると、地面にはチューリップの芽があちこちから顔を出している。気をつけて花壇の中に入らないと、間違って芽を踏んでしまいそうになる。「気候が温かくなってきて、今植えてある花の前に植えておいたチューリップの球根が芽を出してきたんですよ」と広報担当の山田涼介さんが説明してくれた。

春の訪れを感じさせるチューリップの芽が、花壇のあちらこちらに顔を出していた
春の訪れを感じさせるチューリップの芽が、花壇のあちらこちらに顔を出していた


 「シブハナ」が活動をしていると、親子連れの子どもが近づいてきたり、花を携帯電話で撮影している人も。「『きれい』と言ってもらえるのが一番だよね」と山田さん。「子どものほうが土の匂いに敏感。土の入れ替えをしていたときに『カブトムシの匂いがしてきた〜』とよってきた男の子もいましたよ」と小島さんが教えてくれた。
 花壇に常に花が咲いているためには、咲き加減に応じて花を植え替えたり、花壇全体の雰囲気も考慮しなくてはならない。この日のモヤイ像の花壇は、花もきれいに咲いており、特に新しい花に植え替える必要もないため、ゴミ拾いと花がら摘みだけで活動は終了した。
「花の手入れは、地面をデザインしているイメージですね。さらに花の色合いや生育状況を見ていく必要があります。ある程度のノウハウは必要です。周囲の景観とのバランスも考慮しなくてはならないし」と小島さん。実は小島さんは高校と大学で農業を学んでいた。5年前、モヤイ像の前に置かれていた「シブハナ」のメンバー募集の看板を見て、「おもしろそう」と参加したのがきっかけだという。

「シブハナ」の魅力とは?

 2006年から「シブハナ」の代表を務めている小島さんは、活動の魅力を「0(ゼロ)を+(プラス)にすること」だと語る。
 「×(バツ)や−(マイナス)といった『良くない事柄』を0(ゼロ)にするのではないところに、魅力や楽しさ、そして前向きな雰囲気があるんだと思います。花というと華やかなイメージがありますが、『シブハナ』の活動は造園業のような地味な作業が多い。手も汚れるし泥まみれにもなる。参加者も長く来てくれる人に男性が多いのは、その辺に理由があるのかも(笑)」
 今後の活動の目標について尋ねると、「この活動に100人の人が参加してほしいとか、そういうことは考えていません。僕たちが渋谷でやっていることを、日本全国のあちこちで誰かが同時多発的にやってくれたらいいな、と思っています」と答えてくれた。

「シブハナ」代表の小島さん。気さくな雰囲気と関西弁で、男女どちらからも人気がありそう
「シブハナ」代表の小島さん。気さくな雰囲気と関西弁で、男女どちらからも人気がありそう


続いて宮下公園脇の花壇へ

 参加者全員でモヤイ像を離れ、宮下公園脇の花壇から程近いカフェで昼食タイム。初対面同士がいても、なんだかなごやかなムードだ。
 「シブハナ」では、活動に参加すると毎回500円分の「アースデイマネー」がもらえる。これは、渋谷区内のカフェや美容院などのお店で、特典や割引を受けることができる地域通貨。チケットでももらえるし、携帯に専用のサイトを登録しておけば、ウェブマネーとして振り込んでもらうことも可能。参加メンバーの中には1万円近くためている人もいてビックリ! 昼食をとったカフェも「アースデイマネー」が使える店なので、よく利用しているそうだ。
おなかがいっぱいになったところで、次の活動場所、宮下公園脇の花壇へ。途中で「仕事があるから」と帰る人や、昼食あたりから合流してくる人もいて、この自由さが「シブハナ」ののんびりした雰囲気をつくりだしているようだ。
 小雨が降る中、宮下公園脇の花壇でもゴミ拾いと花がら摘みをし、最後に小島さんが持参してきたデイジーを植える。モヤイ像の花壇より面積が広く、ここでもチューリップの芽があちこちに顔を出している。参加者は芽を踏まないように気をつけながら作業を続行。最終的に参加者は9名となり、11時に始まった活動は、3時ごろに終了した。

宮下公園脇の花壇。モヤイ像の花壇よりも広いので、作業も時間がかかる
宮下公園脇の花壇。モヤイ像の花壇よりも広いので、作業も時間がかかる


 参加者に感想を聞くと、「自分がこういう活動をしていると、ゴミを路上に捨てたりしなくなりますよね」「たまたま歩いていた道に手入れされた花が咲いていると、『あぁ、誰かがちゃんと世話しているんだな。いい街だな』って思えるようになりました」といった声が。花を手入れするということは、「優しい心」を手に入れることでもあるんだな、と感じさせられる活動だった。

(※1)花冠(花びら、またはその集まり)の外側の部分。

「シブハナ」を取材してから、街の花壇が気になるようになりました。花壇の花がきれいなのは、定期的に花を植え替え、水をあげている人があってこそ。モヤイ像の花壇の花も、季節ごとに入れ替えるだけでなく、必要に応じて継ぎ足したり、部分的に入れ替えたりしているのだそうです。週末に花を手入れすることで花壇もきれいになるし、自分もいい気分になれる。今度は軍手とゴミ袋持参で参加してみようと思っています。

団体HP:http://shibuhana.sunnyday.jp/
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