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若者の自立支援を続けてなんと20年!

NPOという言葉が定着していなかった1988年に、横浜を拠点として、社会にうまく出ていくことのできない若者たちの自立支援を始めた「コロンブスアカデミー」。現在は、自立支援だけでなく、子育て支援、学童保育の運営など、その活動は多岐に渡っている。取材では2008年にオープンしたばかりの「よこはま南部ユースプラザ」を中心に、さまざまな活動の場をのぞかせてもらった。
「かえるぴょこぴょこ三ぴょこぴょこ〜」

 JR根岸駅からほど近い雑居ビル2階のスタジオを開けたとたん、耳にとびこんできたのは、「かえるぴょこぴょこ三ぴょこぴょこ〜、あわせてぴょこぴょこ〜」という若者たちの早口言葉の声。しかも歌っているのは男性ばかりだから、その歌声はとても野太くて一瞬ひるんでしまうほどだ。
 ぴょんぴょんとはねたり、時には体を揺らしながら早口言葉や歌を口ずさむ若者たちは、なんだかとても楽しげで、聞いているこちらも思わず一緒に参加したくなってしまう。
これは、「よこはま南部ユースプラザ」が開催している「ボイストレーニング」の講座のひとコマ。「よこはま南部ユースプラザ」は、若者の自立をサポートするNPO団体「コロンブスアカデミー」と横浜市が、共同で運営している。他にも講座は毎日開催されており、パソコン講座、ビジネスマナー、就職セミナー、ヨガ講座など、実にバラエティに富んでいる。

「ボイストレーニング」の講座のようす。若い男性たちが声を出しながら、飛んだりはねたり
「ボイストレーニング」の講座のようす。若い男性たちが声を出しながら、飛んだりはねたり


 「ボイストレーニング」の講座の講師をして8年になる山内ちよこさんが、講座の主旨を説明してくれた。
 「ピアノにあわせて発声練習をしたり、早口言葉を言うことは、あいさつや会話のリズム感を養うために大事なことなんです。それは、人と上手にコミュニケーションをとることにもつながります。しかも歌ったり大きな声を出すことって普段あまりしないから、ストレス解消にもなりますよね」
 大きな声を出したり、思いっきり動いたせいか、講座が終わったあとの参加者は、心なしかすっきりしたようすだった。参加者のリクエストに応じて、J-POPを歌ったりすることもあるとのこと。そうした柔軟な対応には、山内先生の参加者に対する温かな目線が感じられる。

実社会とのクッションの場としての「フリースペース」

 ボイストレーニング終了後、参加者の一人が昼食をとるというのでついて行くことに。彼が向かったのは、同じく根岸駅から徒歩数分の場所にある、「よこはま南部ユースプラザ」が運営している「フリースペース」だ。
 学校の教室4部屋分くらいはあると思われる広々としたスペースに、椅子やテーブル、お座敷スペースのほか、棚1面にマンガコーナーがあったりと、とてもくつろぎやすい雰囲気。スタッフが常駐して自立のためのさまざまな相談にのってくれたり、自由に使えるキッチンコーナーがあったり……。他にも、ボランティアの人やちょっと顔を出した風の人がいて、みんな思い思いの場所で昼食をとったり、談笑している。

「南部ユースプラザ」が運営している「フリースペース」。それぞれが思い思いに過ごしている
「南部ユースプラザ」が運営している「フリースペース」。それぞれが思い思いに過ごしている


 「引きこもりからの脱出状態にある人にとって、本当の意味での社会ではないけれど、こういったいつでも訪れていい場所があるというのは大切なんです」とは、「コロンブスアカデミー」の若年者就労支援事業統括責任者でもあり、広報も担当している岩本真実さん。

元々はOLだったという「コロンブスアカデミー」の岩本さん。優しくて頼りがいのある組織の中心的存在だ
元々はOLだったという「コロンブスアカデミー」の岩本さん。優しくて頼りがいのある組織の中心的存在だ


 「高校の学園祭や体育祭、大学のサークル活動などを通じて他人とのコミュニケーションのとり方を学ぶ。そういう普通の経験が、彼らは抜け落ちているんです。ですから、このフリースペースでは、みんなで行事を計画したり実行したりしてもらいます。たとえそこで失敗したり、ケンカになって人間関係がうまくいかないことがあってもいいんです。そこから学ぶものって多いはずですから」
 岩本さんによれば、スタッフの人たちは何か問題が起きたときでも、できるだけ口出しをしないで見守るそうだ。

「よこはま南部ユースプラザ」が持つ解放感

 「よこはま南部ユースプラザ」は、社会に出ていくことの難しい若者たち(ニートや引きこもり、またはそれに近い人たち)の「自立」を支援しようとする場。「相談スペース」と「フリースペース」の二つから成り立っている。
 どちらのスペースも、「ボイストレーニング」をしていたスタジオのすぐ近くにある、ビルの2階に入っている。年代ものを感じさせるビルの外観とは対象的に、室内は白を基調にした清潔感あふれる場所だ。
 長く引きこもっていると、こういう場に来ることさえ困難になるであろうことを考え、少しでも訪れやすい雰囲気をつくろうとしていることが伝わってくる。
 「相談スペース」の中には、個別カウンセリングをするための個室もいくつかある。取材をしたときは、そのうちの一つを「癒しの場所」に改造中だった。スタッフの中で看護士の資格を持つ人が中心となって、マッサージを施術したり、訪問者がちょっと横になって休憩できる場所にすべく、照明を変えたり癒しグッズを置いたりしていた。
 スタッフ側のアイデアがすぐに生かされる。これが「コロンブスアカデミー」が長く地域に根付いている理由の一つなのかなと、具体例を垣間見た気がした。

「相談スペース」の入り口。訪れた人は、まずはここで名前などを記入することになっている
「相談スペース」の入り口。訪れた人は、まずはここで名前などを記入することになっている


「お好み焼きころんぶす」は開店18年目!

 最後にのぞかせてもらったのは、これまた「ボイストレーニング」のスタジオからも「よこはま南部ユースプラザ」からも程近い「お好み焼きころんぶす」。
 引きこもりやニートの若者たちが、家を出ることができても、働く場がなくては「真の自立」にはならない。そこで、「コロンブスアカデミー」の若者たちが就労体験や就労研修をするために、18年前につくったのがこのお店だ。

若者たちに働く場を提供している「お好み焼きころんぶす」。夜の時間帯だけでなく、ランチタイムも営業している
若者たちに働く場を提供している「お好み焼きころんぶす」。夜の時間帯だけでなく、ランチタイムも営業している


 現在は根岸にある1号店のほか、港南台や石川町にもお店がある。岩本さんほか「コロンブスアカデミー」のスタッフは全員、調理師の免許を持っているとのこと。スタッフが若者たちと一緒にお店に立つこともしばしばだという。
 黒を基調にした店内は一度改装済みで、町のお好み焼き屋さんとなんら変わらない。むしろ店構えはお好み焼き屋としては、かなりお洒落な雰囲気。メニューも若者たちとスタッフみんなで考えているそうだ。
 店長の藤田正登さんは、もともとは「コロンブスアカデミー」で支援を受けていた。
「でも今や一児の父でもあり、お店を切り盛りする責任ある立場。彼のような人は、『コロンブスアカデミー』にいる若者たちにとって、目標でもあり、希望でもあるんです」と岩本さん。「コロンブスアカデミー」では支援されていた側の若者が、何人もスタッフとして働いている。

お好み焼きころんぶす」の店長の藤田さん。慣れた手つきで注文された品を作っていく。支援を受ける若者たちの憧れの存在でもある
お好み焼きころんぶす」の店長の藤田さん。慣れた手つきで注文された品を作っていく。支援を受ける若者たちの憧れの存在でもある


 「せっかく家を出て働きたい、自立したい、というところまでこぎつけても、その先がないのでは、せっかくの思いや努力も意味がなくなってしまう。支援される側から、どれだけ支援できる側にまわれるようになるかが、私たちの活動の結果でもあるんです」という岩本さんの言葉に、「コロンブスアカデミー」が目指す目標がくっきり見えた気がした。

とにかく活動範囲の広い団体。根岸を中心に、寮や関連施設がたくさんあるのには驚きでした。歴史も古いし、それだけ地域にうまく溶け込んでいるという印象を受けます。「現在は、派遣切りなど社会問題と関連した引きこもりや、心身に障がいがあることによる引きこもりなど、昔より問題が複雑化しています」(岩本さん)。こんな世の中だからこそ、地域とともにがんばっていくことが、問題解決の糸口につながるのではと思いました。

団体HP:http://www.npocolumbus.or.jp/
ブログ:http://blog.canpan.info/nanpla/
団体情報:https://canpan.info/open/dantai/00003847/dantai_detail.html
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