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「地元がキライ!」で町おこし

町はずれの大型ショッピングセンターが繁盛する一方、駅前のシャッター商店街では閑古鳥が鳴く……。高齢化・過疎化が進んだ「地方」は、今では暗いイメージばかりがつきまとうようになった。そんな状況を何とかしようと地元の若者たちが考えた「100円商店街」という奇抜なアイデアが、地域活性化に成功をもたらし始めている。「100円商店街」を始めた「NPO-AMP」代表の齋藤さんにお話をうかがった。
「地元がキライ!」から始まった町おこし

――「100円商店街」を始めた経緯を教えてください。
 そもそもの始まりは、新庄市の商店街にある書店の店主が、「お前ら一度話してみろよ」と見知らぬ若者3、4人を引き合わせたことです。みな地元の若者でしたが、私以外は大都市からUターンして来た人たち。それぞれが店主に対してグチをこぼしていたんです。
――どんなグチだったのですか。
 「今の新庄市は大キライ!」です(笑)。特にUターン組の若者は、大都市に比べて新庄市があまりにさびれているので、落ち込んでいました。みんなで集まって話を重ねるうちに、何かアクションを起こしてみよう、ということになったのです。
――どんなアクションを起こしたのですか。
 日本で一番元気な商店街だと言われる、名古屋市の「大須商店街」を視察しました。地域活性化のためのヒントがほしかったのですが、視察しただけで見つけるのは難しかった。でも元気な商店街のイメージは強烈に印象に残りましたね。
――そして地元に戻って来た。
 ある日の夜、みんなで商店街を歩いていました。新庄市は人口約4万人の小さな町です。夜7時になると商店街のシャッターは下り、誰もいなくなってしまう。本当にさびしい雰囲気が漂っていました。
 するとメンバーの一人が、「どうせ売れない不良在庫はたくさんあるんだから、ワゴンセールでもすればいいのに」とつぶやきました。その言葉にピンと来たのです。
 「単なるワゴンセールではなく100円均一コーナーにすれば面白いのでは?」
 「どうせやるなら2、3店舗じゃなくて商店街全体でやったほうがいい!」
 次々にアイデアがふくらみ、「100円商店街」の元となる企画ができあがっていきました。

店頭の100円商品に、お客さんも思わず足を止める。「100円だったら」という気軽な気持ちから買い物が始まる
店頭の100円商品に、お客さんも思わず足を止める。「100円だったら」という気軽な気持ちから買い物が始まる


――その後はどうしたのですか。
 地元の商店街に企画を持ち込みました。もともとノリのいいおじさん・おばさんが多い商店街なので、いつもなら「ああー、いいんじゃねー、やれやれ」みたいな反応です。ところが「100円商店街」の企画を見せたとたん、「ちょっと待て」と真顔で聞き始めたんです。みなさん直感的にいけそうだと感じたんですね。
――準備にはどれくらいの時間がかかったのですか。
 企画を提案してから実施するまで、約6ヶ月かかりました。今まで誰も考えたことのない企画だったので、お店の方に納得してもらうのが大変だったのです。私たちはふだんの仕事の合間をぬって、何度も商店街の会合に参加し、企画内容を説明しました。

「100円商店街」は「三方よし」のビジネスモデル

――「100円商店街」の内容を教えてください。
 2ヵ月に1回のペースで、各店が店先にワゴンを出し、その中の商品をすべて100円で販売します。在庫処分品もたくさんありますが、基本的に売るものは何でもOK。クリーニング屋さんが店先で花を売ってもいいのです。

100円商品以外の通常商品が売れたと答えたお店は、初回にして全体の40%超
100円商品以外の通常商品が売れたと答えたお店は、初回にして全体の40%超


――地域活性化につながる秘訣は何ですか。
 大きなポイントは3つです。
 1つ目は、90%以上のお店が参加しないときは実施しないこと。商店街が一体となって参加しないと、お客さんにも魅力的に映らないし、地域活性化という目的からもはずれてしまうからです。
 2つ目は、歩行者天国を禁止したこと。お客さんを歩道だけに集めることで意図的に混雑させ、商店街全体の盛り上がりを強く演出するのです。
 3つ目は、会計を必ず店内ですること。ワゴンのある店先で会計したら、そこでお客さんは帰ってしまうかもしれない。でも店内会計なら、お客さんを店内に誘導できる。ふだんは入らないようなお店の雰囲気を知ってもらえるのです。
――なぜ2ヵ月に1回の開催なのですか。
 お客様からの要望としては、「毎週やってほしい」「月1回やってほしい」という声が非常に多いです。しかしながら、商店街というのは複数の商店によって構成されていますので、個々の体力には差があります。商店主の方々とお話をしながら、最大公約数として、2ヵ月に1回という開催にしました。
――商店街のみなさんの反応はどうですか。
 「商店街の雰囲気が前向きになった」「売上が増えた」など、とても良好です。
 現在、「100円商店街」は全国20ヵ所以上に広がっていますが、盛岡の商店街では200%、新潟の商店街では500%も来客数が増えたという結果が出ています。まさに「売り手よし、買い手よし、そして町おこしにもつながるので世間よし」という「三方よし」のビジネスモデルなのです。

「100円商店街」のファンに年齢は関係ありません。子供から年配の方までみんなが楽しめます
「100円商店街」のファンに年齢は関係ありません。子供から年配の方までみんなが楽しめます


――すごい効果ですね。
 成功するためには、お店側の工夫も欠かせません。
 あるお茶屋さんは、店先にベンチを置いて無料で緑茶をふるまいました。そしてワゴンにはお茶のお試しパックを100円で販売。すると店内の商品も驚くほど売れたのです。最初は、お茶をタダでご馳走になったから100円のお試しパックでも買おうか、そして会計をしようと店内に入り、他の商品も手にとる、という具合です。
 またある美容室では、ワゴンで「まゆげカット」のクーポン券を100円で販売しました。クーポンが使えるのをお客さんの少ない曜日と時間だけにすることで、上手にお店の売上を増やしています。

脳をやわらかくして、楽しみながら

――地方の商店街に活気がない理由をどうお考えですか。
 高齢化や過疎化など、いろいろ理由はあると思いますが、根本的な原因は商店街が考えることを止めてしまったからではないでしょうか。
 商店街の人たちは、最初は物を売るために工夫を重ねながら商売していたはず。ところが、高度経済成長を経験し、考えることを止めた時間があったのでは。当時は物を置けば売れた時代でしたから、無理もないかもしれませんが。
――でも高度経済成長は終わり、バブルもはじけ、不況の波が押し寄せる。
 高度成長期という時代の遺産というか、お客さんの集め方も昔のままです。たとえば、商店街の一角にある広場に著名人や大道芸人などを呼んでイベントを開催して、人を集める試みが全国各地でいまだに数多く行われています。「お客さんが集まれば、何か買って帰るだろう」と期待するけど、実際は何も買わない。しかも店主は、自分の店を離れてそのイベントのお手伝いをしなくてはならない。商売あがったりです。
 一方の「100円商店街」は、各店が自分の店でイベントを開いているようなものです。究極の販促事業だと言えるでしょう。その代わり、お店は真剣勝負を強いられます。100円の物を買うために店内に入って来たお客さんが、そこで何も買わなければ、お店に何か問題がある、ということにもなりますから。

奈良県生駒市の「100円商店街」のようす。「100円商店街」は汎用性が高いため、地域を問いません
奈良県生駒市の「100円商店街」のようす。「100円商店街」は汎用性が高いため、地域を問いません
 

――常に考えることが必要なのですね。
 私たちも常に試行錯誤です。「100円商店街」が終わった後には、店主の方々から意見や感想をフィードバックしてもらって、それを次回に反映します。新庄市以外の「100円商店街」でも、その地域の特性に合った工夫を加えて、独自の形に改善していってほしいですね。
 脳をやわらかくして、楽しみながら商売に結び付けることで、もうかる。そんな活気あふれる商店街が全国に広がれば、何も言うことはありません。

生駒市でも、「過去これほどお客様が来た記憶はない」というほどの集客力
生駒市でも、「過去これほどお客様が来た記憶はない」というほどの集客力
 

取材前日、齋藤さんは横浜市から招かれ「100円商店街」の講演を行いました。横浜港開港150周年を記念して、市内150の商店街に「100円商店街」を導入する計画が進んでいるそうです。実現すれば、日本最大の100円商店街が誕生すると喜ぶ齋藤さんの姿が印象的でした。現在、齊藤さんはほぼ毎日のように全国を飛び回り講演を続けています。家にもほとんど帰れないとのこと。新庄市長からは、「齋藤はいないものと思え!」という辞令(?)までくだったとか。市の職員でありながら、全国の地域活性化のために飛び回る齋藤さんをあたたかく見守る新庄市の懐の深さにも、感銘を受けました。

団体HP:http://stlk.jp/amp/
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