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ランバライの悩み [2012年11月23日(Fri)]

ランバライ氏については、以前別の記事でも紹介した。
英文ニューズレターでも紹介されている。

rambarai.jpg


彼が居住するのは、あるミッション系NGOが運営する大規模なコミュニティ。

そのコミュニティにはハンセン病の専門病院がある。
8歳で発病し、家族から家を追い出されて泣きながら掘立小屋で一人で暮らしていたランバライは、この病院で初めてハンセン病の治療を受けた。

子どもたちのための全寮制の学校もある。

機織りの作業所があり、シルクを中心とした布製品を製造することで住人に収入をもたらしている。

障害があっても、病院の門番、電気の配線点検など、何らかの役割を与えられて働く住人には、月2,000ルピー(約3,000円)の給与が出る。

そのように、たくさんのハンセン病患者の人生を変え、支えてきた。
その功績は疑いようがない。

DSC01864_.jpg


が、一方で、設立者である神父は、コミュニティの住人が外に出ていくことを良しとしなかった。

「ハンセン病回復者の生活向上」という目的は共通している。

でも神父が目指したのは、支援者である自分たちがつくったコミュニティの中で、ハンセン病回復者が衣食住を得て、不自由なく暮らすこと。
住人が自立して、支援者のコントロールが及ばない領域に出ていくことには難色を示した。

残念ながら古くから活動するミッション系の団体において、しばしば見られる傾向だ。



「当事者が主役となって問題解決のために働く」という笹川会長が提唱するナショナル・フォーラムの概念は、その神父にとっては受け入れられるものではなかった。

ラン・バライがビハール州組織の役員として、またナショナル・フォーラムの理事として活動するようになると、彼の妻は職を失った。



そのコミュニティの創立者である神父が昨年逝去し、新しく外部から来た女性が代表となった。
代表に就任してしばらく経った頃、彼女はランバライに言った。

「州組織とナショナル・フォーラムを辞めて、コミュニティのために働きなさい」

言葉だけでなく、何が効果があるかを知っている彼女は、順番待ちをしている何人もの住人を抜かして、優先的にランバライの妻を病院の職に戻した。

DSC01863_.jpg


ラン・バライは家に併設した小さな日用雑貨屋を営んでいる。
かつてコミュニティに来た欧米人をネパールの病院に案内した際、「ガイド料」としてもらった謝礼を元手に立ち上げた店だ。
店先に座って話をしながら、慣れた様子で客をあしらう。

その雑貨屋で得た収入で、コミュニティの外に家を持っている。
昨年オートバイも購入した。
息子二人はデリーの大学で学んでいる。

コミュニティを出て外で暮らすという選択肢も、手が届くところにはある。
そうすれば州組織やナショナル・フォーラムの活動に専念することに何の支障もない。


が、その選択肢を選ぶことは、コミュニティに住み続けることで得られる利益を手放すことを意味する。

コミュニティに出入りする欧米人との出会い。
月々入ってくる2,000ルピーの給与。
妻の仕事。

どちらも手放さないよう、曖昧なバランスを保ち続けることを彼は選んでいる。


双方の予定が重なる度に、また州組織およびナショナル・フォーラムの方針とコミュニティを運営する女性との方針が相反する度に、彼の足元は揺らぐ。

タイミングを調整して、曖昧に、どちらにも角が立たないように切り抜ける。


いつまでそのバランスを保ち続けられるか。
バランスが崩れた時に、コミュニティに居続けることと、本当の意味で自立して自分の力で困難に立ち向かいながら生活することと、どちらを選ぶのか。


それは他の誰が決めることでもなく、彼自身が決めることだ。
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