NPdOのセッションが終わって、ナルサッパが登場。
数人の州リーダーだけではなく、県レベル、コロニーレベルでリーダーが力をつけていくことの重要性について説く。
ナショナル・フォーラムの会長就任以来、自分には向かない事務職と、逆風の強い中で「ハイレベルの仕事」を背伸びしながら頑張っているナルサッパ。
久しぶりに地に足をつけて、テレグ語で、本来の得意分野での話ができたのは嬉しかったのだろう。表情と口調からも伝わってくる。
本当はこういうことがやりたいんだよね。
でも、これをAP州だけでなく全国に広めるためには、やっぱり彼が会長の椅子に座っている意味は大きいと思う。
恐れずに実践できるだけの自信と、それを支えるチームがきちんと整いさえすれば。
続いて、
ササカワ・インド・ハンセン病財団と共同で若者の職業訓練を実施している
Youth 4 Jobsのサンディープ氏がちょこっと登場。
ハンセン病の差別は、回復者本人のみでなく、その家族にもつきまとう。
10年生以上の教育を経た若者を対象に、特に最近需要が増えているサービス業での就職を目指して、英会話や面接の方法など3ヶ月間のトレーニングを行う。(詳しくは
こちら)
こういう各地域からリーダーが集まる機会は、プログラムの参加候補者を募る絶好のチャンス。
そして、最後のスピーカーは、
Human Rights Law Network (HRLN)のシャキール氏。
2005年からSLAPの活動を応援してきた人。
2009年の5月に開催された人権ワークショップでも、スピーカーとして登壇した。
彼はほとんど自分では話さず、参加者から問題を聞き出すことに時間を割いた。
たとえば、貧困線以下の家庭への配給カードの発給が遅れていること。
医療キットがまだ届いていないコロニーがあること。
最後に、もう一度NPdOのパフォーマンス。
閉会のセッションで私にも話す順番が回ってきてしまったので、振り返りを試みた。
ずっと座りっぱなしなので、まずは一旦立ち上がって、2回大きく背伸びと深呼吸。
そして、目をつぶって一日の流れを朝から思い出してもらう。
私からした質問は2つ。
「今日学んだことで、一番印象に残っていることは何ですか?」
「今後それを生かすために、家に帰って、何を実行にうつしますか?」
まず、1人に手を挙げて話してもらった。
友達に借りて読んだばかりの阿川佐和子の「聞く力」と、
先週のJICAの懇親会でお会いしたNGOの方に聞いた、「受身ではなく自主性を育てるためには、とにかく誉めること。小さなことでも誉めて、自信をつけさせる。そうすれば自分から意見を言うようになる」という言葉を思い出して、
とにかく誉めるポイントをみつけて誉めてみた。
続いて、もう1人。
2人男性が続いたところで、(いけるかな)と迷いながら、
「女性の参加者からも意見が聞きたい」
と振ってみる。
さんざん渋って立ち上がった赤いサリーの女性。
「女性にしかわからない問題がある、女性がリーダーとして外に出ていくよう呼びかけないといけないことがわかりました」
「自分のコロニーで、積極的に外に出ていくように他の女性にも話をします」
ちゃんと前に立って、参加者の方を向いて堂々と話してくれた。
最後まで、一番真剣に話を聞いていた最前列のふたり。
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全体の感想。
州よりもさらに下のレベルの、県ごとにリーダーを育てるという方針はとても良い。
「州組織」といっても、出身地域のバランスが取れていない州は多い。
(中には全員ひとつのコロニー出身という州もある)
県レベルのリーダーを育てることは、カバーされる地域が広がり、発言力を持つ人の数が増え、州組織の民主化を促進することにもつながる。
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このようなリーダーのトレーニングプログラムは、複数州をまとめて開催するよりも、州ごとに地元で開催する方が遥かに効果が高い。
言語の面、法律の面、リソースパーソンとの距離、全てにおいて。
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LEPRA(ハンセン病系NGO)とSLAP(州回復者組織)の共催という形をとってはいるけど、ほぼ99%、当事者の主導で運営されていた。
他の州であればNGO側主導で進行されることが多いのに、
同席はするものの最後列で一言も挟まず、動かず、ずっと見守っていたLEPRAスタッフの姿勢は、さすがという他ない。
それは興味がない惰性の沈黙ではなく、明らかに「見守る」、「育てる」沈黙。
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アンドラ・プラデーシュ州が他州よりも一歩先を行っているという話は、
以前にも記事で書いた。
その時にその理由として、
精力的な州リーダー(ナルサッパ氏)が州都の近くに居住していること、
同じく州都に、「当事者主体」の概念を表面的ではなく心から理解し実現しようとする、ハンセン病関係のNGO(LEPRA Society)があること、
そしてそれに上乗せする形で外部の支援が集まりやすいこと、を挙げた。
けれど、それだけではない。
NPdOとHRLNの存在も忘れてはならない。
LEPRAだけだったら、ここまでSLAPは成長できなかっただろう。
障害者と権利ベースのアプローチに目を開かせたのは、NPdOの存在だ。
そして、まだ活動を始めたばかりのナルサッパが、ハンセン病コロニーに医療キットが届かない窮状を訴えて扉を叩いた時、「高等裁判所に起訴しよう」と提案し、実際に起訴して、高等裁判所から良心的な勧告を出させるまで漕ぎつけた敏腕弁護士のシャキール氏。
(その様子はこちらのChannel4の
"Unreported World: India's Leprosy Heroes"から垣間見られます)
そして、それぞれの鍵となる立場に、感度の良い人物が集まっていたこと。
「当事者主体」を頭だけでなく行動で実践する、LEPRAの代表であるラオ氏。
ハンセン病回復者を平等な仲間として微塵も差別しない、NPdOのスリニヴァスル氏。
きりがないような訴えを一つ一つ丁寧に拾い上げる、HRLNのシャキール氏。
それが偶然なのか、ハイデラバードという土地がなせる業なのかはわからない。
そして、「この人が言うことは正しい」というアンテナを頼りに、協力者を惹きつけていくナルサッパ氏。
なぜか彼の周りの人たちは、口先だけでなく、労力も資金も含めて、「協力を惜しまない」。
ナルサッパ氏のこの牽引力を、ハイデラバードが持つこの連帯力を、
ナショナル・フォーラムという土台の上に乗せた時に、他の土地にも複製して広めていけるだろうか。
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おまけ。
ワークショップ終了後、日当の支払いを求めて列を作る参加者の図。
支払いを待つ参加者を廊下に、支払いをするスタッフを教室内に分けて、郵便局の窓口みたいになってるのがおかしかった。
講師陣の皆さんも、運営者のSLAPも、参加者の皆さんも、
濃い内容の長い長い一日、お疲れさまでした。