「独裁者」との交渉術
[2011年06月14日(Tue)]

明石康。
冷戦後、世界の安全保障の枠組みが激変するなかで、カンボジアPKOやボスニア紛争の調停をはじめ、国連が主導した1990年代の平和活動を指揮した日本人である。
国連の原理原則を守りながら、シアヌーク、ミロシェヴィッチといった現代史に名を残す政治家、ナショナリストたちと渡り合ってきた明石氏。
本書は、『オシムの言葉』で知られるジャーナリストの木村元彦が、1年間にわたって敢行した明石氏への連続インタビューの内容をまとめたものである。
先入観にとらわれず、徹底的に対話を重視した氏の姿勢は、ときに「手ぬるい」という印象を与え、欧米の政治家やメディアだけでなく、国連内部からも痛烈な批判を浴びた。
しかし、次のような文章を読むと、そうした批判がいかに表層的であるかということがわかる。
「私は、紛争当事者のリーダーたちとは、誰であっても平気で会っていたけれども、一部の欧米マスコミは、あんな残虐行為を働いた邪悪きわまる連中と交渉することは許されない、と主張していました。しかし、国連としては、それでは仕事にならない。平和な市民社会をかき乱すような行為が存在するならば、そういう行為をする人たちに、その動機や理由を確認してみる必要があるし、それを止めるように説得しなければなりません。いずれにしろ、紛争の当事者が何を考え、何を懸念し、何を求め、恐れているのかを確かめることからすべては始まるのです。」(同書51、52ページ)
「このごろの日本人は、国際的なプレゼンスが弱いから、もっと発言力を高めるべきだと異口同音にいいます。けれども、相手が何を考え何を心配し何を夢見ているのかを無視して、一方的にこちらの思いだけをぶちまけたって、素直に聞き入れられるはずもありません。文脈を無視したことを言ったら失笑を買うだけです。日本人は一般的にいって確かに発言力も弱いけれども、まずは鋭敏なアンテナを張り巡らして、世界の人々や政府が何を考えているのかを把握し、相手が聞きたいことをきちんと答えられるようになれば、相手も一生懸命こちらに耳を傾けてくれるのです。国内での議論は、発信力と受信力の関係について誤解している節があるように思われます。」(同書140、141ページ)
国の内外、問題の大小を問わず、あらゆる「交渉」にあたる人間にとって必読の書だと言えよう。
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また、カンボジア和平において、笹川平和財団が資金面などで大きな役割を果たしていたことなど、初めて知ったことが多かったです。
>ツッコミのキレがやや鈍っていらっしゃるように見受けられますが、お元気ですか?
……鋭いご指摘ですね。たしかに、3・11以来、ツッコミを忘れていたような気がします。反省(?)します。