脳科学と学校研修
ー学ぶ・感動のある教育課程の創造ー
桑原 清四郎
1、基本的な考え
・脳科学はイデオロギーを超える。
・脳科学は揺るぎなき教育の基盤となる。
・21世紀は、あらゆる学問が社会生物学と脳科学に収斂する。
・脳科学の世界には「分かった・分からない・今、実験中だ」の3つ
しかない。
・議論は最小限にとどめる。
・科学の基本は、特定の現象を客観的に観察することです。
・「数える、測る、比べる、メモをとる」これが研究の定石である。
・すすめ方は「仮説・実験・検証」です。
2、「脳科学と教育」研究の課題(文科省)
@ 学習やパッションの根源(意欲・関心)
A 学習可能な年齢(臨界期・感受性期)
B 氏か育ちか(遺伝と環境)
C 頭の柔らかさ(脳の可塑性)
D 物覚え(記憶のメカニズム)
E ご褒美の効果(脳の報償系)
F リハビリテーション(脳の機能回復)
G 健やかな老い(加齢と能力維持)
○教科指導に関わるもの
@ 注意力・意欲の増進や動機付け、創造性の涵養
A 適切な教育課程・教育方法の開発
B 学習障害や注意欠陥多動性障害などへの対応
などがある。
○脳研究の4つの分野(理化学研究所)
@ 脳を知る(脳の働きの解明)
A 脳を守る(脳の病気の克服)
B 脳を創る(脳型コンピュータの開発)
C 脳を育む(育児・教育への応用)
○現場で進めるとしたら
・基本形の解明(守)
・実践・検証の積み重ねから変化のある繰り返しの開発(破)
・難問・問題づくりへの応用(離)
などが考えられる。
○「脳科学と教育」研究の動向
・東大で脳科学講座開始
臨床認知脳科学(松井) 発達脳科学特論(多賀)
脳神経科学(北澤) 身体教育科学(野地)
・エーデルマン(1972年ノーベル賞)
1987年「神経ダーウィニズム」、
1998年「ダイナミック・コア仮説」
2006年「意識」研究の集大成として「Wider-than the Sky」発表
・ジョセフ・ルドゥー「シナプスが人格をつくる」発行
・2006年ノーベル賞(医学生理学)メロー博士、ファイアー博士、
「RNA干渉」
・利根川進博士「海馬の記憶研究」
・伊藤正男博士「小脳研究」
・澤口俊之博士「前頭連合野HQg研究」
・河西春郎博士・松崎政紀助手「記憶とスパイン研究」
3、脳科学の機能・知見
(1)脳は開放系である。
(2)経験の束がその人である。「君の人格は君のニューロン
である。」
(3)情動が大事、「知・情・意」でななく、「情・意・知」の順である。
・脳幹(生きている)価値系回路が重要
・大脳辺縁系ー情動の中枢ー(たくましく生きる)
・大脳新皮質ー知性の中枢ー(かしこく生きる)
・前頭前野ー人間性の中枢ー(人間らしく生きる)
を一体としてとらえることが大事である。
(4)ニュロン(樹状突起)は使えば伸びるし、使わないと衰える。
・樹状突起やスパインを伸ばし、ネットワークを豊かにすることが
教育活動の中身である。
・シナプスの発火・結合が原理である。
・1個のシナプスが記憶の素子となっている。
・シナプス増強は、特異性・協同性・連合性の3つがある。
◎強い刺激(感動)が到達したシナプスでは、スパインが大きくふく
らむ。
◎大きくふくらんだシナプスは信号が伝わりやすい。
・スパインが小さいシナプスは信号が伝わりにくい。
(5)教育の目的は情動のコントロ−ルである。前頭前野の開発とも
言える。
・我慢中枢・思いめぐらし中枢・人間関係中枢などがある。
・扁桃体や視床下部からの本能や情動を前頭前野を使ってコント
ロールする。
・教育の要締は意志を鍛えること。
(6)脳は進化の所産、最高傑作である。
・ヒト脳に生命38億の歴史が込められている。
・脳・体・遺伝子が三位一体で今の自己を創っている。
脳細胞から自己の総体へ
・シナプスが人格をつくる。
(7)実践の優劣は、活動が脳の機能と順行していること。
・脳に順行するとうまくいくし、逆行すると脳が混乱を起こし
人間がダメになる。
(8)指導要領は脳の中にある。
・指導要領は日本の教師が生み出した最高の財産である。
・特別活動などメチャメチャにされてしまった。
・文科省でも脳科学を基盤にした指導要領を作ろうとしている。
・いずれにしろ子どもに合わないのは成功しない。
(9)すすめ教職の専門性とは、脳の回路を探り当てることである。
4、脳の原理ー脳科学の知見を生かすー
『愛は脳を活性化するー松本元博士ー』
(1)脳はスポンジ どんどん吸収する。
(2)脳は二本足打法 やるかやらないか、暑いか寒いか、
「生ぬるい」は脳が混乱
(3)脳は思った方向、願った方向に伸びる。
(4)脳はネットワークである。
(5)シナプスは発火し、結合し、増強する。
(6)1素子1対応である。相手を選び、それ以外は刈り込まれる。
(7)シナプスのスパインは強い刺激で太く膨らみ、弱い刺激では
さくしか膨らまない。太鼓と同じ、打てば強く響き、弱く打つと
弱く響く。
(8)シナプスが人格をつくる。
(9)遺伝子は開いたり閉じたりする。遺伝子のONーOFFが大事
5、脳科学と授業
・「教育は愛」 これがアルファーでありオメガーである。
・情動を生かす。扁桃体は大事。側座核はもっと大事。
愛情核・安心核・意欲核である。
・脳科学の知見を授業、例えば算数の中で生かすには、
@授業にがばっと喰らいつくこと
A脳みそしぼりをすること
Bどんどん書く、どんどん発表することの3点が重要と思われる。
(現在検証中)
・脳の切れ味より、体の切れ味が先決である。
・入力情報は意識より運動系が先に作動する。
・情報処理の基本は「確認」である。
・運動はドーバミン系を作動させ、脳を覚醒させる。
・「説明」は30秒を超えない。説明よりも体験・体得を大事にする。
・ドーバミンは快感物質である。快感は更なる快感を求める性質が
ある。快感が快感を、感動が感動を呼ぶ。感動のない授業は
定着しない。
・「褒める」とドーバミン作動系を刺激する。快感が心を開かせる。
・短く力強く褒める。ぼんやりはダメ、「褒める」時は、端的に「よし!
うまい!
・緊張感は、ノルアドレナリン作動系ネットワークを刺激する。
・扁桃体は、快不快・好き嫌い。
・扁桃体を育てる授業
@ 見つめる A ほほえむ B 話しかける C 褒める
D 触る
・教科書は大事、実践研究の成果、教科書通り授業すること。
脳科学からみても効果的なのです。
6、私たちの使命
・脳科学の知見を現場の実践で検証すること。
・具体的な事実を一つ一つ生み出すこと