自閉症の方が「働く」環境
[2012年01月31日(Tue)]
今日は午前中、息子の進路指導の一環で、宮城県の障害者能力開発校の見学会に参加させていただきました。
ここには「総合実務科」という知的障害者対象の学科があります。
学科の再編で販売管理・手工芸・物流ワークという3つのコースが設定されていてます。
入学当初は3つのコースをすべて体験しその後コースごとに分かれて1年間の訓練で「職場規律と幅広実務作業が出来る知識と技能をみにつける」ことが目標となっています。
実は25年近く前、私はこの学校の職業指導員として障害のある方が社会に出るお手伝いを始めました。
今でも同僚だった先生が数名いらっしゃいますし、雰囲気を知っているだけでも、将来息子を委ねるとすれば安心…
だと思っていました。
支援学校の数人のご父兄と進路ご担当の先生と、丁寧に案内をしていただきました。
手工芸のコースでは、作品の中から「どうぞお持ちください」と、お土産をいただきました。
少し見難いでしょうが、皮革工芸で作ったキーホルダー・紙工のコースターや名刺ホルダー・手芸のティッシュカバー。
どれもが根気良く取り組まれていることが解ります。
一番人気の「物流コース」では、コンビニと同じような棚が設えられピッキングや販売実習の設備が整っています。
生徒さんたちも皆さん立派!
「働く大人」の予備軍がたくさん育っていました。
だけど…
考え込んじゃいました。
授業の指示は全て口頭。その口頭指示に従える方が望まれるというお話。
先生としっかり「やりとり」の出来る生徒さんが大多数。
だから当然のように視覚的支援や構造化のような環境設定はありません。
ここでも自閉症の特性に配慮した教育は叶わないようです。
“観て解れば出来る人たちなのに…”
恩師林竹二は
「こどもたちは誰でも小さなたいせつなたからを持っている。
それを探り掘り起こすのが教師の仕事である」
と私たち弟子に教え諭して下さいました。
自閉症の息子を授かって、この教えの意味を深く感じるようになりました。
自閉症の方たちの強みを探り出し、強みの活かされる方略を練り、具体的な配慮があれば、「出来る」・「出来るようになる」ことがとても多い方々です。
一方、そうしたことが叶わなければいつもいつも意味の良く理解できない指示に引き回されながら行動して、意図に合わなければ修正をされ、不全感いっぱいで評価されることも少なく…
私は、息子がこういう指導の中で持てる力すら発揮できないでウロウロしている姿を見たくはありません。
だって、力の発揮できる場面もあることを日常生活でたくさん知っているから。
一昨年ノースカロライナで出会った「働く」自閉症の方々は、例え知的にはとても重い方であっても実に穏やかに自分で仕事の内容を解って楽しそうに働いておられました。
そこには当然個別の特性に配慮した「工夫」があったからです。
自閉症のこどもたちの「たから」を見つけ出し、磨きをかけて、役割を果たせる大人に育つステージは、やっぱり自分たちで創り上げていくしかないのでしょうか…
「ウ〜ム…」と悩む母です。
Posted by 伊藤 あづさ at 19:15 |
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日曜21時は見逃せない
[2012年01月30日(Mon)]
少し先の話ですが、以下デイリースポーツから転載です。
『SMAPの中居正広(39)がTBS系連続ドラマ「ATARU」(4月スタート 日曜後9・00)で主演を務めることが29日、分かった。
中居の連ドラ主演は、09年のフジテレビ系「婚カツ!」以来約3年ぶり。中居は今作で、米映画「レインマン」(88年)でダスティン・ホフマン(74)が演じ、話題となったサヴァン症候群と呼ばれる特殊な能力を持った謎の男役に挑戦。久しぶりの連ドラに気合をみなぎらせる中居が難役を乗り越え役者としての新境地を開拓する。
歌に司会にバラエティーと、あらゆるジャンルで活躍する中居が俳優として新たなステージに上る。TBS系連ドラ主演としては、04年ドラマ「砂の器」以来、約8年ぶり。「早くカンが戻れば」とおどけながらも、「非常に難しい役なので撮影は本当に大変だとは思いますが、しっかり演じていきたい」と久しぶりのドラマ撮影に気合をみなぎらせた。
作品は、サヴァン症候群を抱えた主人公・アタルが発する単語が犯罪事件を解決していく姿を描いたヒューマン・ミステリー。中居演じるアタルは、並外れた記憶力から事件現場の微細な証拠を発見。推理に役立つ単語だけを次々と発し、刑事らの捜査に一役買う。
会話能力に問題がありパニックを起こすこともある謎に満ちた主人公が抱えるサヴァン症候群は、自閉症や知的障害を持った人のうち、特定の分野に限って驚くべき才能を発揮する人の症状を指す。この症状を有名にしたのが、米映画「レインマン」。ダスティン・ホフマンがサヴァン症候群患者を好演し、88年度のアカデミー賞主演男優賞に輝き話題となった。
世界的に症例が少ないため、中居も「レインマン」を参考に役作り。当時、映画を見たというが、「もう一度彼の演技にも注目して見てみようと思っています」と3月上旬の撮影まで緻密な研究にあたる。
ドラマはオリジナル脚本となり、中居は「自分が面白いと思える台本に出合えるのは役者冥利(みょうり)に尽きますね。このドラマで中居正広の新たな一面を引き出せていければ」と強い決意をにじませた。』
またまたスペクトラムの人に注目が集まりますね。
10年ほど前の「光とともに…」が放映されたことを鮮明に覚えています。
息子がちょうど小学校1年生に入った年でした。
私たち親子にとっては、自閉症のこどものことを他の保護者の方に知っていただく・理解していただくためにはとても良い機会でした。
入学式の日、交流学級で他のご父兄に紹介をいただいた時、主人は
「今テレビでやっている『光とともに…』を時間があったら観てください。
光君とは違うところもたくさんあるけど、同じように不思議な所をたくさん持っている子です」
というようなことを他のご父兄に話してくれました。
未就学期に違う学区で過ごしていたこともあって、初めて出会うお子さんたちやお父さんお母さんに、私たち親は息子のことを隠さずにお伝えすることから学校生活を始めました。
初めて出会う「自閉症」の子をTVドラマを通してイメージしていただくことが出来たと思っています。
学芸会でも運動会でも、他の親御さんたちから
「こーちゃん頑張っていたね」
といつも声をかけていただきました。
運動会では悠々とニコニコとビリを走る息子がゴールするまで拍手や声援を貰い続けました。
同じ学年のお子さんたちも、息子と関わることで違いを認め合う育ちが出来たと、先生方から「良い学年だったね」と言っていただきました。
結果的にとても良い環境で義務教育を終えることが出来ました。
専門的な視点でドラマを観てしまうと、気になる事もあるかもしれません。
でも
「知っていただく」
ためには良いことだと思っています。
この春中居君から目が離せません。
Posted by 伊藤 あづさ at 21:35 |
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気付いた人が気付いたことから
[2012年01月29日(Sun)]
震災以降「こども」を中心に見据えて支援活動を展開している団体がたくさんできました。
避難所や仮設住宅での学習サポート・夏休みや冬休みなど長期休みの遊びのサポート…
その時々子どもたちにも親御さんにも、とても有難く喜ばれ、感謝へ繋がった活動でした。
さて…間もなく発災後11か月を迎えようとして、生活基盤が少しずつ落ち着き初め、日々の「暮らし」を「日常」とする動きが出る中、どれだけの団体が継続的に支援を続けていられるのかしらとも気がかりです。
そんな状況の中発災直後から避難所を回り、こどもたちの「学習」の遅れを気がかりなこととして捉えて動き出した「NPO法人アスイク」さんが、先般「3.11被災地子ども白書」を出版しされ、東京での記念シンポジウム 〜被災した子どもたちの今、これから必要なこと〜を地元仙台でもミニフォーラムとして開催されました。
代表の大橋さんとは、一昨年の「発達支援ひろがりネット」で企画・開催した支援機器展に彼がフラッといらしたことからご縁をいただきました。
知的な雰囲気の漂うイケメン社長です。
昨日は、彼がなぜこの活動を始め、たくさんの人を巻込み、続く活動として定着したのかを紐解くことが出来る話題がたくさん。そこに「続いている」ヒントがありました。
・臆せず飛び込んで必要性を訴えるプレゼン力。
・サポーターとして重要なカギを握る学生さんたちを惹きつける魅力。
上げればきりがないほど多角的に理由はあるのでしょう。
でもね…
「気づいた人が気付いたことから何かを始めることが大切」
だって感じたその感覚だと思いました。
市民が市民の力で課題を解決していくことの「原点」もここにあると思っています。
国の補正予算も受け皿が決まり始めガッカリするほど地元のお母さんたちや実践家が巻き込まれない動きが作られようとしている現実に
“「お節介おばさん」の心配は大きなお世話なのかしら”
とガッカリして凹むことも続いていましたが、
“もう少しジタバタしても良いかな”
って力を貰いました。
震災後仙台で暮らし始めた自閉症/発達障害のご本人やご家族を中心に、「スペシャルニーズ」の方々に
“この街で良かった”
と感じ取っていただけるようなお手伝いを実現できたら幸せです。
Posted by 伊藤 あづさ at 08:42 |
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「右腕」募集中
[2012年01月27日(Fri)]
東日本大震災からの復興に、「生き難さを抱える人」たちへの応援としてどんな仕組み(事業)が求めらえているのか…
そしてその役割を私や志を同じくする仲間がなぜ担うのか…
「ぶれいん・ゆに〜くす」の法人化を決意した時の命題です。
資金も脆弱な法人では、人材確保も大きな課題。
いつもスタッフとは呟きます。
「若い男の人が欲しいね」と。
福祉関連の仕事を始めた時から
“男性が寿退社しない経済保証が出来る組織になりないね”って願いも持ち続けています。
まぁ現実はなかなか理想とは遠いけど…
そんな私たちの前にフワリと舞い降りてきた素敵なプロジェクトがあります。
「みちのく仕事」
『時代を担う起業型リーダの輩出を通じて社会のイノベーションに貢献する』ことをミッションとするETICさんのプロジェクトです。
このプロジェクトに繋いでくださる方がいらして、ヒアリングのハードルを何とか飛び越え(ゴールにたどり着くまでに何台かハードルをなぎ倒したかもしれませんが)、「右腕」の支援をいただけることになりました。
『スペシャル・ニーズを持つ方々(生き難さを抱える方々)の「未来創生」プロジェクト』
またまた身の丈に合っていない大きな目標を掲げてしまったかもしれません。
でもね…
自閉症/発達障害のあるご本人やご家族を含めたスペシャル・ニーズの方々の日常の生活が、この震災以降の全国からのご支援・応援で何が叶い・何がこれからも求められているのか…
そしてその先に震災前よりも幸せな生活を創り上げるには…
そんなことを丁寧に考えながら、地元の親御さんや実践者・支援者が役割を担わせていただける機会がとっても少ないことを残念に感じるこの頃です。
“自分でジタバタするしかないか”
と覚悟しても、限られた時間の中で動ききれないことも山積してしまいました。
そこに舞い降りてた「右腕派遣できるよ」の情報。
前髪しかないチャンスの神様の髪を掴む一瞬を見逃さないのも私の「強み」(?)
ヒアリングではまた熱く語っちゃったかもしれません。
でも「うそつき」にならない覚悟はしています。
そして今の私のこんな夢のような願いを支えてくれる先輩・仲間にも恵まれています。
少し時間はいただくかもしれませんが、仲間になっていただける素敵な「右腕」さんに出会えることを楽しみにしています。
Posted by 伊藤 あづさ at 06:11 |
被災地支援 |
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福祉とは想像力
[2012年01月26日(Thu)]
震災以降数件の出版物から原稿の依頼をいただき、自分のプロフィールをまとめる機会が増えました。
「過去の整理/確認」みたいな感じです。
振返ると「原点」の一つが1981年から10年続いた「国際障害者年」の期間、仙台で展開された「われら人間コンサート」に関わらせていただいたことだったと思います。
そこで出会ったのが佐藤宗明さんであったり「ありのまま舎」の山田富也さんであったり、ごく普通に街で生きる様々な障害形態の方であったり、仙台で音楽活動をなさっている方であったり、手話サークルの大学生であったり…
今でも付かず離れず交流の続いている方々もたくさんいらっしゃいます。
その中にお姉ちゃんが実行委員として参加されていた「ゆにふりみやぎ」の伊藤清一(せいいち)さんがいます。
恐らく「われコン」時代にはあまり直接清(せい)ちゃん(大人になってもこう呼ばせていただいています)を意識することはありませんでしたが、その後福祉の大学で教員となった私の学生として再会しました。
今では私の「福祉の先生」みたいな存在の時もあります。
飄々としているように見えて、実はしっかりと自分だけではなく仲間の生きやすさも求めて精力的に活動しています。
そんな彼がずっと続けているのが街の中での「暮らしやすさチェック」(と、勝手に思っています)。もちろんただチェックするだけではありませんよ。そこから次の展開を考えて。
先日定禅寺通りに新しく開店したコンビニとの関わりを地元の新聞のネットワーク版のようなサイトで書いています。
清ちゃんは言っています。
『福祉とは想像力』だと。
「誰かの立場になる…よく言われることだけど本当に相手の立場になることは出来ない。でも私たちにはそれを補う「想像力」がある。
相手の立場には立てないけど立つ努力を続ける。」
そんなことを清ちゃんは「福祉の定義」としているようです。
全文をここでご紹介することは叶いません。
ぜひリンクを追ってみてください。
日々清ちゃんが街の中でどんな視点を持って生きているかも一端が伺われます。
仙台で素敵に生きている若者です。
Posted by 伊藤 あづさ at 06:13 |
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「魔法のじゅうたん」プロジェクト
[2012年01月22日(Sun)]
「楽暮(らぼ)プロジェクト」とという仙台で「AACを広げよう!」という仲間の皆さんとの活動も7年目に入りました。
京都で開催されている「ATACカンファレンス」に仙台から参加した者同士が声を掛け合って始まった勉強会です。
その楽暮プロジェクトの仲間の先生からお知らせをいただきました。
先崎です。
「魔法のふでばこプロジェクト 成果報告会」に行ってきました。
詳しくは別メールでお伝えします。(とにかくすごい熱気でした。大きな流れ,波が起こりそうな予感・・・。)
その報告会で,次年度のプロジェクトのお知らせがあったので,お伝えします。
その名も「魔法のじゅうたんプロジェクト」。
このプロジェクトは,
・希望し(選ばれた)特別支援学校(等)に対して、iPad、 iPhone、Androide端末等の無償貸出を一定期間(1年間)行ない、それらを活用した障がい児の学習支援について事例研究を行う。
・実際に教育現場でご活用いただくことで、その有効性を検証し、研究成果を公開することで、障がい児の学習支援を促進していく。
というものです。
応募要件がいくつかあるので,関心がある方はご確認ください。→ 研究協力校応募要項 ( http://maho-prj.com/?page_id=757 )
今回の目玉は,
指導者(教員)と対象者のペアでの応募であることだと思います。 (選ばれると,それぞれに1台貸し出される! という話だったと思います。勘違いだったらごめんなさい。)
ちなみに,「同じ学校から複数のペアが応募することも可能です。ただし、ペアごとに応募してください。」とのことです。
保護者の皆さまから,学校の先生方に呼びかけていただくという方法もありです!
応募受付は 2012年1月21日〜2月3日24:00までです。(所定の応募フォームに入力後送信) あまり期間がない!
とにかく,どうも様子を見ていると,宮城県はこの分野で出遅れている気がします。(格差が生まれる予感・・・)
特別支援学校、特別支援学級の先生やお子さんを通わせている方で,関心のありそうな方にぜひこの情報をお知らせいただけると助かります。
詳しくは,あきちゃんの魔法のじゅうたんプロジェクト Webページ ( http://maho-prj.com/?page_id=785
)まで。
言葉が出ないこどもたちでもその「代替」となる道具を使うってコミュニケーションの世界が広がりますように!
使うと便利な道具を「当たり前」に使って生活の幅が広がりますように!
4月から本気になってこの課題とも取り組みます。
Posted by 伊藤 あづさ at 20:04 |
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支援者のエンパワメント
[2012年01月14日(Sat)]
名古屋に来ています。
カイパパさんのネットワーク上の情報公開で知ることの出来た「ふわりんクルージョンセッション」に参加させていただくためです。
反貧困ネットワークの湯浅誠さん・ダイバーシティ研究所の田村太郎さん・むそうの戸枝陽基さんらを講師にお迎えしtての講演。
そして事例ごとのグループに分かれてのワークショップ。
お誘い文にあった
ユニバーサルせボーダレスなソーシャルインクルージョン
の機会をいただいたことに深く感謝しています。
Posted by 伊藤 あづさ at 20:33 |
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