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虹の夢

生き難さを抱えている人たちの幸せな未来を願っている「お節介おばさん」の徒然日記です。

自閉症/発達障害のある方など生き難さを抱えスペシャル・ニーズを持つ方々の「未来を創りたい」…そんな大きな夢を叶えるために、「楽しく・嬉しく・明るい」情報発信をしていきます。

2020年度「放課後等デイサービス 評価アンケート」の結果を2021.2.19の記事に掲載しています。
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最近の自閉症研究から [2013年05月05日(Sun)]
DSMの改定に関するニュースです。
(以下朝日新聞記事より転載)
日本でも広く使われている米精神医学会の診断の手引(DSM)が5月に改訂され、発達障害の一種「アスペルガー症候群(AS)」の分類が消える見通しだ。「適切な支援が受けられなくなる人が出る」などの不安が米国で出ており、日本の臨床現場への影響も出そうだ。

 ASは、言語発達の遅れや知的障害はないが、対人関係を築くのが苦手なのが特徴で、「アスペルガー障害」とも呼ばれる。「軽い自閉症」と見なされることもあり、19年ぶりに改訂されるDSM第5版では、重い自閉症からASまでを連続的に捉える「自閉症スペクトラム(連続体)障害」に一本化される。

 診断に使う項目も改訂版では、「社会コミュニケーションの障害」「限定した興味や反復行動」に絞る。改訂に関わったグループは「第4版の基準は医師によって診断名が違ってくる」などとし、「より正確な診断が可能になる」としている。

 だが、米エール大の研究グループが、第4版でASと診断される人のデータを第5版で診断し直したところ、4分の3の人が、自閉症スペクトラム障害に該当しなくなった。

 そのため、今後は同じような障害を抱えていても診断で除外され、コミュニケーション技術の支援教育などが受けられない可能性があるという。さらに、現在、ASと診断されている人の間でも、診断名がなくなることへの不安の声が出ている。
(後略)

それを受けて社会学者の井出草平さんが興味深い解説をしてくださっています。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/idesohei/20130501-00024646/
2013年5月。アメリカ精神医学会の診断基準DSM(精神障害の診断と統計の手引き)が19年ぶりに改訂される。この診断基準はアメリカ精神医学会という一団体のによってつくられるものだが、世界中で使われており、事実上のグローバルスタンダードとなっている。ちなみに日本でもこのDSMを使うのがきわめて一般的である。

DSMの改訂によっていくつかの変更が加えられる。DSM-IVでは、小児自閉症やアスペルガー障害などのサブカテゴリーを含む広汎性発達障害とよばれていたものが、DSM-5では自閉症スペクトラム障害という一つの診断名に統合される。それに伴い「アスペルガー」カテゴリーが削除されることになった。

さて、件の記事を読むと「アスペルガー」の分類が消えるため、4分の3の人たちが自閉症スペクトラム障害と診断されなくなって社会サービスから除外されてしまう恐れがあるという論旨だ。しかし、それは改訂の大筋を見誤っているように思える。一つ一つの事実説明は間違いではないのだが、無理して別々のことをくっつけているためおかしな流れになっている。

少し専門的な点も含まれるが一つずつ誤解を解いていこう。

4分の3の人たちが診断されなくなるのは本当か?
第1に不安を煽っている4分の3の人たちが診断されなくなるという調査だ。ここに注釈がまず必要だろう。

記事ではイェール大学の研究グループと書かれているが、このグループはフレッド・ヴォルクマーらを中心としたグループである。DSM-5の策定で主導権を握れなかったグループであり、DSM-5の大筋が決まった後は批判を繰り返している。出典とされる論文は、McPartland, Reichow, Volkmar(2004)であり、ニューヨーク・タイムズの記事で有名になったデータである。

実際に、DSMの移行で診断から外れるのは89〜93%とされている(参照)。改訂によって診断から漏れ落ちるのは1割前後だと考えてよい。

アスペルガー症候群の人が自閉症スペクトラムの診断から外れるのか?
第2に、診断から外れるのは「アスペルガー」とカテゴライズされている人たちではない。
具体的にいうとDSM-IVの「特定不能」グループとカテゴライズされてきた人たちが中心となる。

どういうことか?
それはDSMーIVとDSM-Vの基準の要約をみるとわかりやすいと思う。
(本文に説明図)

社会性の障害:年齢に応じた社会集団の構成・人間関係の構成・コミュニケーションが取れないこと
常同性:無目的な行動を繰り返すこと。道順が決まっている、手をひらひらさせる、服を着る順番が決まってる等

DSM-IVでは社会性の障害か常同性のどちらか一つがあれば広汎性発達障害であったが、DSM-5では両方が要件になる。
IVではどちらか一つでよかったのが、5ではどちらも必要になるので、診断される範囲は当然狭くなるのである。

特に問題になるのは常同性の方だ。
知的障害を伴わない高機能群では、常同性を伴わない広汎性発達障害が存在する。つまり社会性であったりコミュニケーションのみに障害がある広汎性発達障害である。

このグループがDSM-5への改訂で自閉症スペクトラム障害から外れることになる。もちろん外れたからと言って、診断名が用意されていないという訳ではない。もちろん診断されたいか否かは別にして「社会コミュニケーション障害」という診断名が用意されている。

アスペルガー障害の有病率はかなり少ない
次に考えるのは「アスペルガー」カテゴリーの有用性である。

アスペルガー症候群というと、ギルバーグに代表されるようにスウェーデンの研究グループのように大きくとるグループやDSM-IVやICD-10のように小さくとる診断基準が存在している。診断基準がまちまちなのだ。

ギルバーグの診断基準を採用した疫学調査でアスペルガー症候群の有病率は0.48%となっている(Kadesjo et al. 1999)。一方、DSM-IVのアスペルガー障害の有病率は0.084%である(Chakrabarti et al. 2001)。DSMでのアスペルガー障害はひどく稀な障害として位置づけられていることがわかる。ギルバーグの診断基準と比較すると6分の1の規模である。

現行のDSMーIVではアスペルガー障害はどのようにの取り扱われているのだろか。
アスペルガー障害は広汎性発達障害という診断名のサブカテゴリーと設定されている。
それぞれのサブタイプごとに分けて有病率を示したのがしたの図だ。
(本文に解説図)

Chakrabarti et al. 2001
広汎性発達障害の有病率は全体で0.626%である。その中でアスペルガー障害の占める割合は非常に少ない。
DSM−IVから「アスペルガー」カテゴリが消えることは、診断学上、臨床上ほとんど影響を持たないのである。

問題になるのは慣例的に呼ばれているアスペルガー症候群
DSMの改訂によって「アスペルガー」カテゴリーに属している人たちは何も影響を受けないことを確認できた。問題になるのは、「特定不能」カテゴリに分類されてきた人たちだ。日本では、この人たちをアスペルガー症候群と診断する臨床医が多く、知的障害のない広汎性発達障害を呼称するためにアスペルガー症候群と呼ぶ慣例はある。

その中に「特定不能」カテゴリの人々が含まれるのだ。従って、診断から漏れ落ちることがあったとしても問題があるのは「社会性の障害」と「情動性」の2点両方を診断要件として求めるDSM-5の改訂である。

「アスペルガー」カテゴリーの消滅と診断範囲の縮小という2つの動きがあるために両者が連動しているかのように錯覚してしまう。しかし、それぞれ別の原因によって成り立っていることを確認しておきたい。

参考文献
McPartland JC, Reichow B, Volkmar FR.,2012, Sensitivity and specificity of proposed DSM-5 diagnostic criteria for autism spectrum disorder., Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry,Apr;51(4):368-83.

B Kadesjo, C Gillberg, B Hagberg,1999,Brief Report: Autism and Asperger Syndrome in Seven-Year-Old Children: A Total Population Study, Journal of Autism and Developmental Disorders 29:44, 327-331.
http://www.springerlink.com/content/q7842p370v730g2j/

S Chakrabarti, E Fombonne,2001, Pervasive Developmental Disorders in Preschool Children, JAMA vol. 285 No. 24 ;285:3093-3099.
http://jama.ama-assn.org/cgi/content/abstract/285/24/3093 

訂正
文中アスペルガー障害の有病率が「0.0084%」となっていました。ただしくは「0.084%」です。
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またスペインのサンセバスチャンで開催された国際自閉症学会(IMFAR)に参加された北海道教育大学の安達潤先生の報告も興味深い内容です。
「1日目の基調講演でギルバーグ先生が、「重篤な障害、自閉症・・・本当か?」というタイトルで話をされましたが、とても納得できる内容でした。概略を記すと、自閉症やADHDなど発達障害のタイプはあるが、ピュアな状態像は存在しない。また、予後の状態とASDおよびその合併症を検討すると、予後不良をもたらすものはASDではなく、いくつかの合併症の方だと考えられる等々。そして、ASDの特徴については、定型発達の子どもたちの多くは、その一つ程度は持っているし、二つ程度持っている子どもも一定程度いる。ただし、成長につれて、そういった特徴は消えていく。よって、早期のASD診断は大きな間違いにつながる可能性がある。であるから、早期に行うべきは診断ではなく、将来の子どもの不適応につながりかねない様々な発達特徴を把握して、そこに焦点を当てたサポートを進めていくことだ、ということでした。僕はこのギルバーグ先生の考え方は、「障害」がスティグマになりやすい日本にフィットするように感じました。「専門的な支援のエッセンスを備えた子育て支援を早期に開始し、発達支援、そして必要な場合には、より専門的な療育」というように、子どもの育ちをシームレスに支えていくシステムが必要だと思います。そして、日本がインクルーシブ教育に転換していく経過の中で就学前から就学後をつないでいくシステムを考える時に、非常に重要な視点であると思っています。余談ですが、実は、上川で進めている支援ファイルの「すくらむ」も同じ着想がベースになっています。
 学会に戻ると、先のような話題の一方、IMFARのあるセッション(今日のセッション)では、生後6ヶ月でASDを把握することに焦点を当てた研究が報告されます。恐らく部屋は超満員なんだろうけど、聞いてみようと思います。僕の関心は「6ヶ月時点でのASDの把握が臨床的に意味があるのか否か?」ということです。
 あと、ポスター発表もたくさんあり、何名かの参加者と話ができました。アイトラッカー研究やASDの子どものemotional dysregulation の発表、ASDの子どもの行動に対する親御さんの同調行動など、興味深い研究がありました。

2日目の6ヶ月でのASDの把握は、報告の中身では、まだ確実にはASDは把握できず、研究進行中という状況でした。
 例えば、生後6ヶ月の赤ちゃんの人の顔に対する視線分析では、協力児が(1)目を優勢に見る群、(2)口を優勢に見る群、(3)特に注視がまとまらない群の3つに分けられるとの報告がありましたが、後にASDと診断される児、あるいは後に適応が良好でない児の割合は、(1)と(2)で変わらず、(3)が他の2群よりも多いという結果でした。これはASDの人たちが口を優勢に見るという現在の知見と合致しないデータとなっています。しかし臨床的に考えると、顔のどこを見ているか判然としない赤ちゃん(グループ3)に後の適応のまずさが出てくるとすると、やはり6ヶ月児における子育ての難しさや、何となく赤ちゃんと自分がしっくりつながっていないというお母さんの不安といったものをちゃんと受けとめていくことが必要だということだと考えられます。
 その他にも、6ヶ月児の母親と児の相互作用の研究があり、児の応答性が十分でないと、母親の応答性にもマイナスの影響を与えていくということが報告されており、できるだけはやく、母と子の相互関係が良好に展開していくようなサポートが必要とのことでした。
 これらの結果は、やはり、早期からの子育て支援を子どもの特性に合わせて進めていくことの重要性を示していると思います。
 僕は、6ヶ月でASDが確実に把握されても、診断告知といった形では、お母さんの受け止めを考えると、うまく支援ができないと思っているので、今回のセッションはある程度納得の結果でした。でも、科学研究は6ヶ月児のASD把握に向けても進んでいきます。僕が思うのは、6ヶ月児にASDを確実に把握できるような技術が開発された時に、それをどのように親子の幸せに結びつけていくかという臨床的議論を十分に積み重ねる必要があるということです。日本でも、そういった方向で「科学研究の成果とその臨床的応用における意義と限界、そして今後への展開の視点」といった議論を深めて行ければと思います。
 あと、僕自身の関心で驚いた報告がありました。それは、ASDと定型発達の児に単純なリズムや複雑なリズムを聴かせて学習してもらい、その後で、タッピングでそのリズムを再生してもらうという課題の報告でした。単純なリズムだと2群は変わりませんが、複雑なリズムではASD児の方が成績がよかった(リズム再生が正確だった)ということです。この報告については発表者と少し議論しましたが、ASD児はリズム知覚とその再生においても、丸暗記の記憶ができるとの解釈となりました。その上で、次の研究パラダイムなどのアイデアもいろいろと話をすることができました。」

安達先生は、臨床を大切にしながら、私たち親とこどものことをとても丁寧に考えてくださる発言がとても多いことが尊敬する点です。
この学会には、内山先生・服巻智子先生・黒田美保先生など、日本の国内の第一線でご活躍くださっている先生方もたくさんご参加の様子。
これからの報告を楽しみにしていきたいと思います。
Posted by 伊藤 あづさ at 19:31 | 今日の知恵 | この記事のURL | コメント(0)
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