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上野村バイオマス発電所&循環林業見学ツアーの報告[2015年08月08日(Sat)]
 農都地域部会バイオマス発電事業化促進WGは、NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク(BIN)、NPO法人蔵前バイオマスエネルギー技術サポートネットワーク(K-BETS)と共同で、7月17日(金)・18日(土)の二日間、群馬県上野村のCHP(熱源供給システム)を活用した林業活性化と村おこしを現地視察するフィールドワークを行いました。

上野村CHP見学ツアー

 群馬県の西南端、森林が96%で水田が1枚もない人口1,300人の上野村は、十数年前から、きのこの栽培や木質ペレットの製造、イノブタの生産など農林業の6次産業化に取り組んできました。
 昨年より木質バイオマス発電所を建設し、村産出の間伐材などで生産したペレットを燃料に発電し、電気と熱は村の公共施設(きのこセンター)で使用して、新規雇用の創出と地域産業の活性化を、さらに進めようとしています。


 あいにくの雨模様でしたが、見学ツアーには20名が参加しました。
 集合場所の高崎駅前から村役場手配のマイクロバスに乗車し、上野村に向かいました。二日間とも、上野村産業情報センターの三枝孝裕氏にご案内していただきました。

上野村CHP見学ツアー

 まず、ツアーのプログラムを記します。

■7月17日(金)
 10時  JR高崎駅前 集合
 11時半 森林組合製材所 見学
 12時  村営蕎麦店「福寿庵」 昼食
 13時半 神流川揚水式発電所 見学(対応:東京電力担当者)
 15時半 ペレット工場 見学
 16時半 老人福祉施設 太陽光パネル・蓄電 見学
 17時半 宿泊施設
 18時半 バイオマス発電所について事前説明(竹林征雄氏)
 20時  交流会。

■7月18日(土)
 9時   木質バイオマス発電所 見学
 10時  きのこセンター 見学
 11時  スカイブリッジ 見学
 11時半 銘木工芸館 昼食(イノブタ料理)
 13時  体験館 質疑応答
 14時  上野村管内の見学終了
 15時半 高崎駅前 解散

 予定通りの時間進行とならなかったところもありましたが、盛りだくさんの内容で、林業の上流から下流までの一貫事業による村おこしの現場をじっくりと見学させてもらいました。
 続いて、各見学場所についてポイントを記します。

【1日目】

 上信越自動車道の下仁田ICから下仁田町、南牧村を通り、湯ノ沢トンネルを抜けると上野村です。道中で三枝氏が村の紹介をしてくれましたが、「高齢化率日本一の南牧村からトンネルができて物流が格段に良くなった」と話されたのが印象に残りました。

上野村CHP見学ツアー

上野村CHP見学ツアー

上野村CHP見学ツアー

 最初は、森林組合製材所の見学でした。集材から製材、出荷までの工程の説明があった後、雇用効果は?との参加者の質問に、「組合では20数名が働いている。製材に4名、木工に7名、販売に2名と、山に13名。山の方は、作業道入れが1チーム4名、伐採が2チーム6名」などのお話がありました。若い方の多くは移住者で、説明された方自身もIターンとのことでした。

 午後は、東京電力の神流川揚水式発電所見学ツアーからスタートしました。
 神流川発電所は、長野県の南相木村を流れる信濃川水系南相木川の最上流部に上部調整池、群馬県の上野村を流れる利根川水系神流川の最上流部に下部調整池を設置し、この間の有効落差653mを利用した、最大出力282万kWの純揚水式発電所です。

上野村CHP見学ツアー

上野村CHP見学ツアー

 発電所は、二つの調整池の中間地点の御巣鷹山の地下500mに巨大なトンネルを掘って作られています。東京電力の担当者から、詳しい案内がありました。
 平成17年12月より1号機(47万kW)の運転を開始し、現在2号機(同)も稼働。さらに増設する計画となっている。揚水発電の利点は、起動から15分で最大出力に達すること。ピークタイム用のバックアップ電源として優れている。
 群馬県側の上野ダム(重力ダム形式)と長野県側の南相木ダム(ロックフィルダム形式)の二つの人造湖の建設工事で出た岩石の展示もありました。(発電所内は映像非公開のため写真を掲載しておりません)

 その後、村の高台にあるペレット工場へ移動し、ペレット製造工程や設備についてなどの説明がありました。ペレット製造能力は、発電所ができる前は500kg/h、年産600t。発電所ができてからは日量6〜7t。年間1,600tを目標に製造量を増やしている。ペレット価格は、小売り420円/10kg、村営温泉向けは36円/kgだが、CHP向けは政策的に23円/kgと計算している。ペレット工場建設には、サイロ(新設)を含まないで2.7億円かかっている。
 三枝氏の説明から、ペレット製造が村の循環林業の要となっていることがよく分かりました。

上野村CHP見学ツアー

上野村CHP見学ツアー

 また、伐採、製材、木工、販売の各部門合せてたくさんの雇用を創出しているが、民営化はこれからで、情報センターは第三セクターとしてその先駆けである。神流川発電所の固定資産税(17億円)が村の財政を支え(一般会計の半分以上)、村おこしのための村営企業への投資や移住者誘致など、村の政策実行の基盤となっている、との説明もありました。

 高齢者生活福祉センター「いこいの里」では、エネルギーシステムを見学しました。大型の蓄電池に屋根一面の太陽光パネルの電力を蓄電。木質バイオマスボイラーも二基ありました。

上野村CHP見学ツアー

 宿舎は、今井家旅館(電話0274-59-2009)でした。この時期、村営のホテルはスポーツ合宿で空きがなかったためですが、天狗党事件の刀傷が残っているという鄙びた山里の落ち着いた雰囲気の宿でした。

上野村CHP見学ツアー

上野村CHP見学ツアー

上野村CHP見学ツアー

 入浴と夕食を慌しく済ませ、懇談会を行いました。三団体共同のツアーだったため、普通なら顔を合すことのないメンバー同士の交流が進みました。
 また、上野村へのCHP導入に尽力された竹林征雄氏(BIN副理事長、WGアドバイザー)から、翌日見学するバイオマス発電所について事前の詳しい説明がありました。

 →竹林征雄氏の説明資料(抜粋)

【2日目】

 二日目は、いよいよ木質バイオマス発電所(CHP)の見学です。
 発電所は、村営上野村きのこセンターの敷地内にありました。熱交換設備とともに、立派な建屋が二つあり、一つはペレット燃料貯蔵所、もう片方にドイツBurkhardt社製の木質ペレットガス化熱電併給装置が収められています。ドイツ製の機械は、見た目も非常に美しいものでした。

上野村CHP見学ツアー

上野村CHP見学ツアー

上野村CHP見学ツアー

上野村CHP見学ツアー

 装置の説明は前述の資料にありますが、CHP設備に3.5億円、建屋に6千万円、きのこセンター全体で約13億円を費やしたとのことです。前日の説明にあったように、東電発電所からの税収と国・県からの補助金が原資となっています。

 続いて見学したきのこセンターでは、菌床仕込→培養→出荷・販売を一貫して村が行っている、村の人口約1,300人のうち70人ほどの雇用をつくり出していると、村役場の職員の方から説明がありました。
 CHPが作る電気と熱は、きのこセンターの電力を賄い、きのこの発熱を抑える冷房用に転換されて使われています。隣接地では、イチゴ栽培設備用の造成が進み、CHPをもう一基導入する計画が検討されているとのことです。

上野村CHP見学ツアー

上野村CHP見学ツアー

 今回は、自然・再生可能エネルギー施設を中心にした見学ツアーでしたが、スカイブリッジ見物や木工製品の紹介もありました。村営レストランで食べた特産のお蕎麦やイノブタ鍋は美味しかったです。ジャムや野菜などのお土産を買って帰る参加者が多かったです。

上野村CHP見学ツアー

上野村CHP見学ツアー

 参加者全員からアンケートへの回答をいただきました。今後の参考にしたいと思います。

 バイオマス発電所やペレット工場について感じたこと、思ったことは?の質問に、「中規模熱電供給プロジェクトの先駆けとして関心を持った。ぜひ成功させてほしい」、「ドイツのメーカーがすばらしい設備を開発されたことに敬意を表したい。日本はこれからだと思うが、追いつけるか?」、「ペレット材料の問題はあるが、設備そのものは問題ないと感じた。ドイツでは常時運転状態を管理しているのに感心した(上野村のCHP運転データもネットでドイツに届けられている)」、「ペレット工場の原料の流れが複雑。前夜の発電所の説明が分かりやすかったので、見学時の要点がよくわかった」、「ペレット製造の乾燥工程で製品ペレットを燃料として用いている。樹皮等の低質材を燃料にすればもっと生産が上がるのでは? それによってガス化発電に必要とされるホワイトペレットも作れる」、「CHPとマッチしたペレットの生産など、システム等については課題が大きく、改善を期待」などの回答がありました。

 上野村の林業の川上から川下までの一貫事業(循環林業)については、「(林業は)収益性の低い事業なので川上から川下までの垂直統合が理に適っている。今後は生産性の改善を積み上げられることを期待」、「地産地消の成功事例となってほしい」、「木材の供給〜利用を安定させるために必要なことと思う」、「行政としての力を感じた。経済面のつながりが分ると尚良かった」、「村全体で損益を考えるということに感心した」、「村主導から、各々営利企業へ分割できればいいと思った」、「きのこセンターを軸として、伐採からペレット工場、発電所までうまくまとめた力量に感服。これからの日本の山間部とお手本となってほしい」などの意見がありました。

 観光・宿泊施設などについては、「事業の多くを村が経営していることに驚いた」、「“木が産業”で、“木が観光資源”となっていることは印象深い」、「取組みが一貫していて上手くいっていると思った。親切、思いやり、一生懸命が心に残った」、「年間20万人の観光客があると知りびっくりした。日帰りでなく宿泊客を増やすにはもう一工夫が必要」、「今回は大型ホテルでなかったので親しみを感じた。夏は涼しいのでまた来たい」、「宿のレベルアップが必要だろうが、観光を収入源とする取組みの体制づくりがまず必要」などの答えがありました。

 今回のツアーについては、「バイオマスツアーとして良かった」、「いろいろなバックグラウンドを持った方々と二日間の合宿ツアーで一緒に議論、情報交換でき、非常に有意義だった」、「同行者の意見も勉強になった」、「すばらしい企画に感謝。このグループで上野村に続く村おこしのお手伝いがしたい」、「メニュー盛りだくさんでおなかいっぱいだった。ありがとうございました」、「木材搬出現場なども見たかった」などの感想がありました。

 今後やってほしい勉強会やフィールドワークのテーマについては、「急峻な山林で高性能林業機械を用いて作業している現場、本格的な製材工場の見学」、「長野県飯田市のCHP施設見学」、「生ゴミ発電の見学」、「再エネと農業のコラボ」、「何もない地域で村おこしを行うために必要な要素を拾い出して一つ一つ勉強していけるような企画」などの要望がありました。

上野村CHP見学ツアー

 循環林業を実施している上野村の実行力に感心する意見がほとんどという一方、村営事業の民営化や宿泊者に満足してもらう設備・観光施策を望むご意見、木材伐採現場を見たかったなどのご希望も目立ちました。上野村の今後のバイオマスツアーの参考にしていただければと思います。

 後日、三枝氏からいただいたメールの概要を記させてもらいます。
 『このたびはご来訪いただきましてありがとうございます。バイオマスツアーは、こちらも始めたばかりですので、頂戴したご意見は真摯に受け止め、可能な限り対応させていただきます。
 上野村にとっての課題は、ご指摘の通り民間企業がないことです。上野村は慢性的な人不足です。私たち観光の職員を含め、あるときは村営蕎麦店、あるときは村営温泉、あるときは道の駅売店、またあるときは村外イベント、村内つかみ取り大会・・・とあげたらきりが無いほどの兼務で動いています。
 よりよいサービスを提供するには人材の追加とともに、人材の教育にお金をかけなければならないと思います。地方創生が言われている昨今、皆様からのご意見は貴重であり、大変に考えされられる内容と思いました。』

上野村CHP見学ツアー

 今回のツアーでは、集合の不揃いなどはありましたが、おかげさまで、全行程を無事終了することができました。二日間、上野村の循環林業の現場をたっぷり見学でき、参加者には大いに参考になったと思います。上野村をご紹介いただいた竹林氏から、「悪天候ながら うまく視察が出来ほっとしています」との感想もいただきました。

 三枝氏はじめ上野村の関係者の皆様と、ご参加の皆様に、心より感謝申し上げます。幹事として十分な対応ができずに失礼いたしましたが、本ツアーが少しでも皆様のお役に立ったとしたら幸甚です。
Posted by NPO農都会議 at 22:07 | フィールドワーク | この記事のURL | コメント(0)
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