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3月28日「国産材の利用拡大とCNF開発」講演会の報告[2017年04月02日(Sun)]
 NPO法人農都会議 バイオマスWGは、3月28日(金)夕、「国産材の利用拡大とCNF開発 〜国産材活用の展望と課題、セルロースナノファイバーの応用研究」講演会を開催しました。
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3月28日WG講演会

 会場の港区神明いきいきプラザに60名余の参加者が集まり、林野庁林政審議会委員を長年努めて来られた鮫島氏とと森林分野のノーベル賞といわれる「マルクス・ヴァーレンベリ賞」を2015年に受賞された磯貝氏のお二人による特別講演と質疑、ディスカッションが行われました。

 第1部は、最初に、東京大学大学院農学生命科学研究科生物材料科学専攻 教授の鮫島正浩氏により、「国産材の利用拡大への今後の展望と取り組むべき課題について」のテーマで、講演がありました。

3月28日WG講演会

 鮫島氏は、我が国における森林資源と木材利用の推移、森林・林業・木材産業に関する最近の施策動向、木材利活用推進に向けた新たな取り組み、次世代を切り開く鍵は山村地域の振興、木材のマテリアルとエネルギー利用の共存化などについてお話しされました。
 また、木材のマテリアル利用やエネルギー利用について、オーストリアと日本を比較する中で、森林資源の循環的利用と国産材の利用拡大に向けての日本の木質バイオマスエネルギー利用の現状や熱利用の事例の説明もありました。

 鮫島氏の講演の概要を一部ご紹介します。
・戦後行われてきた拡大造林政策(天然広葉樹林を人工針葉樹林化する政策)により、人工林の蓄積は急拡大し、現在は30億m3に上り、一方、主伐期を迎える植栽後50年以上経過した高齢級樹林が50%以上を占めるようになってきている。
・我が国の過去の木材需要は、最大で年間1億2,000万m3を越え、国産材の供給不足から、高度成長期を境に輸入が急拡大した。最初は丸太輸入が中心で、海外林を荒廃させるということで日本の評判が下がった。その後、丸太から製品輸入への転換が進んだが、平成14年には国産材比率(自給率)が18.8%まで減少した。現在では、国産材の利用拡大の方向に政策誘導が進み、33%を越えるところまで回復した。
・その間の国産材の樹種別生産量の変化は、天然の広葉樹を伐採してパルプ原料とする時代が続いたが、大手の製紙企業が海外に植林した原料による開発輸入が増えたため、国産広葉樹の利用は大きく後退した。一方、国産材をみると、杉の供給量は必ずしも減っていない。また、最近では、杉の間伐材を利用した国産合板の供給が増えてきている。
・しかし、平成9年頃から住宅着工件数減少に伴い、木材の総需要(輸入材を含む)も減少し始め、現在に至っている。
・平成20年前後を境に輸入丸太由来の合板製造が減少し、国産材合板が増加したが、これは国産の小径間伐杉丸太を使い尽せる合板用のベニアを生産する丸太のカツラ剥き装置に「スピンドルレス方式」という革新的技術を開発した効果だ。
・CLTの導入と普及は、中高層集合住宅や公共建築物への木質材料使用を可能にする新技術。ヨーロッパでは実績が出つつあるが、地震国日本でも耐震性能や耐火性能の向上も視野に入れつつ、CLTの生産と供給体制を構築中だ。
・林野庁も国交省と連携し、需要と供給体制強化に取組んでいる。木材を利用した新たな土木事業(液状化対策)の展開も推進されている。
・国産材の安定供拾体制の構築として、国内には近年大型の工場新設が続いている。製材、LVL合板、集成材、CLT工場など。木質バイオマス発電施設の建設と併せ、循環型木材用途創出に貢献するものと期待している。
・日本の林業の課題と対策を考える際のヒントは、海外と比較することだ。オーストリアは、日本の北海道程の面積しかないが、国産材生産数量は日本に匹敵する規模。木質バイオマスエネルギー利用のフロー図をみると、熱電併給(コジェネ)だけではなく、小型のボイラーや家庭用のストーブ利用が目立っている。日本も考え方を参考にすべきだ。オーストリアでは木材利用の45%がマテリアル利用で、残りの55%はエネルギー利用。
・日本との違いはどこから来るのか。地理的・地形的な違いだけでなく、文化や民族の歴史の違いからくると思うが、どこかに日本へのヒントが有るはずだ。


 続いて、東京大学大学院農学生命科学研究科生物材料科学専攻 教授の磯貝明氏より、「木質バイオマス由来の新規セルロースナノファイバーの製造技術の開発とその応用研究の方向性について」のテーマで、講演がありました。

3月28日WG講演会

 磯貝氏は、バイオマス系素材利用促進の背景、日本でのナノセルロース研究(新規製造プロセスとメカニズム、製造コスト等)と世界市場へ向けた将来戦略、応用研究事例(軽量最強度複合材料、透明ガスバリア包装フィルム、電子基板材料、純水製造用逆浸透膜中空糸、高効率触媒担体、高性能エアフィルター、分散安定剤、医療材料等の開発と実用化に向けた産官学連携や製造プラント、実用化例)、先端産業としての可能性と課題などについて説明されました。
 また、循環型社会の構築、脱石油化、地球温暖化防止のために、植物による再生可能なセルロースの質的・量的利用の拡大が求められていること、日本発の新技術をオールジャパン体制(ナノセルロースフォーラム)で実用化研究を進めていることなどのお話もありました。

 磯貝氏の講演の概要を一部ご紹介します。
・木質バイオマスを利用したCNF開発は、再生可能資源の利用、循環型社会基盤構築、化石資源の使用量削減とともにCO2を固定・排出削減し地球温暖化防止にも貢献する技術。
・2010年に「バイオマス活用推進基本計画」を閣議決定した中で、2020年に5,000億円市場を目指す事を決めた。
・昔は木を使うと森林破壊に繋がると非難される時代もあったが、特に若木が成長過程で大量のCO2を吸収し木材として固定して大木になるが、その木材を燃やさずに活用するTOCN技術の開発こそ、真のCO2排出削減・地球温暖化防止技術だ。
・人口減社会の到来で紙の使用量や住宅市場が縮減する時代を迎えた現在、旧来の木材資源の用途拡大に加え、新たにチップ重量の半分を占めるセルロースを活用する新しい炭素マテリアルストリームを創生し、2つのサイクルを回す新時代を切り開こうとしている。
・木質セルロースは樹体を重力、風雨、生物アタックから守るための強靭な組織構造を持っており、非常に安定した物質。化学反応や溶解には不向きの材料。
・製紙業界は長年蓄積された技術と製造工場を持っており、堅牢な木材から連続的、効率的、安価な製紙用パルプを製造しており、資源を無駄なく使いながら電力まで賄っている。
・有機化合物のTEMPO酸化セルロースナノファイバー(TOCN)製造技術は、木材パルプからセルロースナノファイバーを効率よく分離し単離するブレークスル―技術で、高強度機械物性、耐熱性、光学透明性、酸素バリア性、ネットワーク構造形成、ナノ分散性、界面相互作用、導電性、触媒機能等の発現が期待されている。
・現在60円/kgという安価な紙パルプを原料にしている。生産量が100kg/日程度の初期には価格は5,000円〜10,000円/kgしているが、2030年には250t/日と増産することで価格は500円/kgまで下げられ、大きなマーケットに拡がることが期待される。
・「TEMPO酸化バイオナノファイバー研究のコンセプトと波及効果」を、農学生命科学の先端テクノロジー分野への展開として纏めると、世界初で日本独自技術として有効性が見えて来る。素材・製造プロセス・使用後全体の安全性の確認や市場形成・実用化を推進する組織の連携が必要。まだまだ安全性確認等課題は沢山ある。


3月28日WG講演会

 第2部は、質疑応答と「セルロースナノファイバーと国産材拡大を実現するには」をテーマとしたディスカッションがありました。
 モデレーターは、NPO蔵前バイオエネルギー 副理事長、NPO農都会議 バイオマスWG運営委員の米谷栄二氏でした。

 質疑とディスカッションの一部を記します。(○印:質問・意見、・印:回答)
○鮫島先生に、「国産材の利用拡大」に関してお聞きする。山地の立木価格の度を越えた低価格の原因と対策、木材のもつ健康増進効果について科学的な解明、日本の木質家屋のライフが短すぎる理由と対策の三点ついては如何か?
・鮫島氏:山元の立木価格が低すぎる。丸太を製材してから出材する仕組みが取れないか。そこでエネルギー利用とマテリアル利用とを分離して搬送負担も減らせないか。木質住宅の調湿機能・断熱・香気成分などの効用で健康増進が期待できる。
 日本住宅は施主の自己流の好みが多くて中古住宅市場が機能しない、内装、設備もライフが短い仕様のものが多い、など30年程度で作り変えになってしまう。100年住宅への発想転換が必要。
○磯貝先生に、CNFはセルロース原料重視のようだが ヘミセルロースやリグニンなどの利用価値についてお聞きしたい。
・磯貝氏:バイオマスリファイナリーの面から3成分を分離して有効利用することは世界の要請だ。しかしリグニンやヘミセルロースは、講演でお話ししたように原料の多様性があり、均一の成分が取り出しにくい。オーストリアの白樺材から取れるキシリトール利用が唯一。まだまだ研究はしなければならないが、ブレークスル―する技術が無い。まだ時間がかかるのではないか。

3月28日WG講演会

○先生はベンチャーの位置づけをどう思われているか。アメリカ等と比較して日本の体制をどう思われるか。新しい人たちへの思いは?
・磯貝氏:先日、私よりもはるかに若くてベンチャー企業を設立し成功されたユーグレナ社の出雲氏と対談する機会を得た。また山形のスパイバ―という蜘蛛の糸の研究しているベンチャーも物凄く苦労をされていると話していた。まだまだ日本はベンチャーを育てる風土がない。気の毒な状況が続いている。一方で大きな会社は研究員を使っていろいろやっているが、決断と小回りが利かないところが北米と日本の違いだ。一般に日本の大企業は、これこれの投資をすればどれくらいの期間でいくらの収益を上げられるか等の計画を細かく求めるので、迅速な判断が出来ない。しかし中堅企業は期待できる。意欲を持っている中小企業から沢山の打診が来ている。見込みはある。
・司会:本日は国産材の課題の現状と将来について、鮫島先生にご講演をいただいた。鮫島先生はバイオエタノール開発をセルロースの酵素糖化技術で取組まれてきた。林業の復興を任されていたが何故日本はうまくゆかないのか、社会の仕組みとの関係があるのかと思う。
 磯貝氏は、現在森林分野の世界で最も人気のある研究者。その磯貝研究室の全ての皆様がTEMPO酸化セルロースナノファイバーの用途を考えずに研究されていたことを知り、何故研究に花が咲いたのか理解できた。しかしこの世界で日本が何時までいつまでトップを維持できるのか、抱負を聞きたい。
・磯貝氏:講演で話したように、大学では基礎研究のみに取組み応用研究は企業の皆様に任せてきた。今では世界で数千社〜1万社近い会社が日夜切磋琢磨して取組くんでいる。
 何時までやる気を持ってやれるかは、質問にもあったが、リグニン研究の位置づけも考えながら今後も続ける事が大事だ。その際は人や組織のネットワーク構築が大事だ。この研究はいくら優れた研究者でも一人で完成する世界ではない。


 アンケートへも多数の回答をいただきました。
 鮫島氏と磯貝氏の講演と質疑・ディスカッションの概要や資料など詳細をお知りになりたい方は、事務局へメールでお尋ねください。会員様には詳細レポートをお送りします。

3月28日WG講演会


 今回も盛況な講演会となり、CNF開発の事例などを通して、国産材の現状と課題、マテリアル利用の可能性について考える有意義な場になったと思います。
 講師の皆さま並びにご出席の皆さま、誠にありがとうございました。
Posted by NPO農都会議 at 12:01 | 勉強会 | この記事のURL | コメント(0)
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