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12月12日バイオマス燃料セミナー「バイオマス発電と輸入材」の報告[2016年12月27日(Tue)]
 NPO農都会議バイオマスWGは、12月12日(月)夕、バイオマス燃料セミナー2016-4「バイオマス発電と輸入材 〜輸入木材のFITにおける一般木材としての利用」を開催しました。
 →イベント案内

12月12日バイオマス燃料セミナー

 FIT施行から4年以上経ち、再生可能エネルギーに占めるバイオマスの比率は急速に増えています。今回のセミナーは、輸入バイオマスにフォーカスし、大学や政府研究機関の研究者をお招きし、輸入材や新設発電所の最新情報、バイオマス発電と林業との関係などについてお聞きすることになりました。会場の港区神明いきいきプラザに約60名の参加者が集まり、講演と意見交換が行われました。
 NPO農都会議の代表理事の杉浦英世より、「4月にNPO法人へ組織変更し、市民協働と地域協働を基本理念として、勉強会やフィールドワーク、提言取りまとめ等の活動が継続できるように運営体制の強化を図っている。バイオマスWGは、今年4回のバイオマス燃料セミナーと複数官庁から講師をお招きする官民交流勉強会などを実施した。また、バイオマス発電事業の推進とバイオマス産業の健全な発展をめざして、『一般社団法人バイオマス発電事業者協会』の設立に尽力した。会員やML参加者、本日ご参加の皆さまに感謝するとともに、来年もよろしくお願いします」と、開会挨拶がありました。

12月12日バイオマス燃料セミナー

 第1部は、研究者お二人の講演がありました。

 最初に、東京農業大学・農山村支援センター学術研究員の今野知樹氏により、「バイオマス発電と輸入材の可能性・留意点」のテーマで講演がありました。
 今野氏は、農大農山村支援センターの役割のお話に続いて、FIT法の改正ポイント、燃料としての輸入材、輸入材が「一般木材」として認定を受ける由来証明の明確化、既設・新設の発電所の最新情報、木質バイオマス発電と森林・林業の共存などについて説明されました。 また、今野氏が個人的に感じている疑問や懸念材料についてのお話もありました。

 今野氏の講演の概要を一部ご紹介します。
・我が国のバイオマス発電に関するFIT制度の根幹は、エネルギーの由来が明確なら高価、曖昧なら安くするというのが大原則。
・バイオマスという場合、木質に限らず農業残渣(メタン発酵など)も含まれる。また木質バイオマスも、国産・輸入材、未利用材・一般木材、更にPKSや農業残渣までも対象とするので、その由来をどのように証明するのかがカギとなる。
・5年後の平成32年に国産材利用を増やして輸入材を減らす計画では、現在30%の国産材比率を5年後に50%に高めるため、大量に発生する放置残材の活用が計画されているが、実現性に懸念がある。
・安定した木質バイオマスを確保するため、森林施業のシステム構築(路網設置、日本の林地に適した高性能林業機械の開発・導入等)が不可欠。
・大規模発電所用に、燃料の安定供給及び量、品質、輸送距離、価格等総合的なメリットを考え、輸入材が注目されてきている。
・バイオマス発電業界を囲む流動的要素として、大規模化への傾向と対策、輸入材の安定的確保策(パリ協定の流動的な要素)、輸出国の突然の方針転換への対応準備などが考えられる。

12月12日バイオマス燃料セミナー

 続いて、国立研究開発法人森林総合研究所企画部上席研究員の田中良平氏より、「東南アジアにおける木質バイオマスのエネルギー資源としての可能性」のテーマで講演が行われました。
 田中氏は、森林総研におけるバイオマス化学関連の研究開発(バイオマス化学/森林資源化学)、東南アジア産バイオマス原料の現状と利用全般などについてお話しされました。

 田中氏の講演の概要を一部ご紹介します。
・森林総研における主たる研究領域は、森林資源や農業残渣などのバイオマスを化学的手法によってマテリアル(材料)に変換すること(エネルギー利用の研究にはあまり関わっていない)。1998年1月〜2001年3月の3年間、長期在外研究員としてマレーシアへ。2014年5月〜2016年5月の2年間、JICAシニア海外ボランティアとしてインドネシアのスマトラ島ランプン州にて各種バイオマス材料の有効活用に取り組んできた。
・自身で手掛けた研究。
 −EFB複合材料の開発
 −EFBからのパルプ製造
 −OPTに含まれる樹液からエタノールを製造する技術開発
・バイオマスの有効利用に関わる研究開発の理念と意義は、
 −環境を守る
 −廃棄物から利益を得る(=有益な物を作り出す)
 −産業(=林業、農業、木材加工業、農産加工業)を持続可能にする
と考えている。


 第2部は、講師への質疑と、フロアの参加者も一緒にディスカッションが行われました。モデレーター(司会)は、NPO農都会議理事バイオマスWG座長の澤一誠氏でした。

12月12日バイオマス燃料セミナー

 質疑応答、意見交換を一部ご紹介します。(○印:質問・意見、・印:回答)
・司会:講師の方々とフロアの参加者の意見交換の判断材料を提供するため、まず、資料をご覧ください。
○再エネ賦課金の問題だが、デメリットだけでなくメリットも考慮した議論が必要では?
○材のマテリアル利用とエネルギー利用のバランスを理解すべきでは? FIT制度は搬出間伐等の支援金に充てられているが、同時に林業、林家の基盤再構築にも貢献している筈。
・司会:材のカスケード利用促進支援も、主目的は材とペレット利用の両方と考える。タイの老齢ゴム樹の活用、パームオイル樹のカスケード利用などは、アジア各国と連携した2国間クレジット(JCM)を活用した世界のCO2削減事業に貢献している。
今回、農都会議バイオマスWG主導で設立したバイオマス発電事業者協会の活動目的は、  発電燃料の多様性確保、海外材の開発輸入、プラントメーカーの協力でコストダウン、運転管理技術の情報共有でコストダウン支援、FIT制度の課題解決(朝令暮改的な小手先の変更ではなく長期的視点からの改善提案)、FIT制度を活かした適正な発電規模の推奨(木質バイオマス発電のFIT容量は現状では数パーセントに留まる)、会員からのあらゆる課題に対するワンストップの解決案提供、などである。今後、協会の活用をお願いしたい。

12月12日バイオマス燃料セミナー

 アンケートへも多数の回答をいただきました。
*今野氏と田中氏の講演と質疑・意見交換、アンケート結果の概要や資料など詳細をお知りになりたい方は、事務局へメールでお尋ねください。会員様には詳細レポートをお送りします。

 本年度4回目のバイオマス燃料セミナーであり、発電燃料としての木質バイオマス、輸入材のガイドライン、海外の開発輸入と燃料の多様性、FIT制度の課題の解決、制度を活かした適正な発電規模等々の問題が浮かび、バイオマスWGからの次の提言(第5次)取りまとめに向けて、課題整理が更に進んだと思われます。
 講師並びにご出席の皆さま、誠にありがとうございました。
Posted by NPO農都会議 at 17:40 | 勉強会 | この記事のURL | コメント(0)
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