6月17日石炭混焼SG勉強会の報告[2016年06月25日(Sat)]
NPO法人農都会議 バイオマスWG 石炭混焼SG(スタディグループ)は、6月17日(月)夕、第12回勉強会「大幅なCO2排出削減はどうすれば可能?」を開催しました。
石炭混焼SGは、昨年度より、石炭火力発電への木質バイオマスの混焼に関する課題を検討する場を設ける活動を続けてきました。
COP21後、石炭火力発電を巡る問題について、「既存の石炭火力でバイオマスの混焼を行なうことがCO2削減策としては現実的な選択肢ではないか」という意見がある一方、「原発ゼロ・石炭火力ゼロとしてその分を全て再生可能エネルギーで賄うことが可能である」という意見も出ており、第12回SGとなる今回、島根大学の上園先生をお招きして議論する機会を持つことになりました。
会場の港区神明いきいきプラザに定員いっぱいの30名の参加者が集まり、講演と質疑応答、意見交換が行われました。
石炭混焼SGは、昨年度より、石炭火力発電への木質バイオマスの混焼に関する課題を検討する場を設ける活動を続けてきました。
COP21後、石炭火力発電を巡る問題について、「既存の石炭火力でバイオマスの混焼を行なうことがCO2削減策としては現実的な選択肢ではないか」という意見がある一方、「原発ゼロ・石炭火力ゼロとしてその分を全て再生可能エネルギーで賄うことが可能である」という意見も出ており、第12回SGとなる今回、島根大学の上園先生をお招きして議論する機会を持つことになりました。
会場の港区神明いきいきプラザに定員いっぱいの30名の参加者が集まり、講演と質疑応答、意見交換が行われました。
第1部は、島根大学法文学部法経学科教授、NPO地球環境市民会議=CASA理事の上園昌武(うえぞのまさたけ)氏により、「大幅なCO2排出削減はどうすれば可能なのか―『CASA2030モデル』の試算結果」のテーマで、講演と質疑が行われました。
上園氏は、「CASA2030モデル」では脱原発・脱化石燃料を進めながらもCO2の40%削減は可能、長期エネルギー需給見通しとの比較、再生可能エネルギーへの転換で経済成長できることなどについて、資料を元に詳しくお話しされました。
上園氏の講演の概要を一部ご紹介します。
・2015年12月、パリ協定が締結されたが、日本の環境・エネルギー政策はパリ協定に逆行している。
・原発・石炭依存の エネルギー政策を見直すべきである。長期エネルギー需給見通し(2015年)については、以下の問題(4つ)がある。
−2030年のCO2排出削減量は、1990年比で13%と低い。これは、省エネ対策と再エネ普及の見込みが少ないからである。
−原発の原則40年稼働を、60年に延長することを前提にしている。これは「原発依存度を可能な限り低減させる」とするエネルギー基本計画と矛盾する。
−2030年の化石燃料供給量は、全体の76.4%と高く、再エネ・水力による国内自給率は13.1%にとどまる。特に、石炭火力発電所の増設や海外輸出は、パリ協定の長期目標に反している。
−経済影響評価は、「原発安価、再エネ高価」を前提とし、省エネや再エネによる経済効果などのプラス評価が考慮されていない。佐和(隆光)教授も「マイナス面だけの経済評価は、経済分析ではない」とされている。
・CASAは、以前から日本における排出削減可能性のシミュレーションモデルの開発に取り組んできた。そして、ボトムアップモデルと経済モデルを統合した「CASA2030モデル」を独自に開発した。
・一次エネルギー供給量については、2030年、BaU515,169百億kcal、CASA対策(原発即ゼロ)366,728百億kcal(再エネ100%は無理。石炭も一定割合見込む)、政府対策451,400百億kcalとなっている。
・CASAの試算によると、「脱原発・脱化石燃料」を進めながらも、省エネとエネルギーシフトで、2030年のエネルギー源CO2排出量「40%削減」は、十分に実現可能である。
・また、温暖化対策によるマクロ経済への悪影響は軽微であり、むしろ温暖化対策による経済波及効果が見込める。
・再エネ普及や省エネ推進は、国民運動のような意識啓発では効果が乏しく、設備投資を伴う事業を促進すべきである。また、再エネ事業と省エネ事業を組み合わせた事業展開が必要である。
・石炭火力発電所の新増設や輸出は、温暖化対策と逆行するものであり、即座に中止すべきである。
・温暖化防止社会は、安全で豊かな暮らしを実現し、環境リスクを軽減するだけでなく、新たな経済発展にもつながるものである。断熱材の普及など重要である。
第2部は、大幅なCO2排出削減はどうすれば可能か? 石炭火力のバイオマス混焼によるCO2削減の現実性は? などについて、活発に意見交換が行われました。モデレーターは、NPO法人農都会議理事 バイオマスWG座長の澤一誠氏でした。
アンケートへも多数の回答をいただきました。
上園氏の講演と質疑・意見交換の概要や資料等の詳細をお知りになりたい方は、事務局へメールでお尋ねください。会員様には詳細レポートをお送りします。
今回の石炭混焼SGでは、脱原発・脱化石燃料を進めながらもCO2の40%削減は可能なこと、再生可能エネルギーへの転換で経済成長できることのお話があり、小人数ではもったいない内容でした。次回は大きな会場で上園先生にお話ししていただけたらと思います。
講師並びにご参加の皆さま、誠にありがとうございました。
上園氏は、「CASA2030モデル」では脱原発・脱化石燃料を進めながらもCO2の40%削減は可能、長期エネルギー需給見通しとの比較、再生可能エネルギーへの転換で経済成長できることなどについて、資料を元に詳しくお話しされました。
上園氏の講演の概要を一部ご紹介します。
・2015年12月、パリ協定が締結されたが、日本の環境・エネルギー政策はパリ協定に逆行している。
・原発・石炭依存の エネルギー政策を見直すべきである。長期エネルギー需給見通し(2015年)については、以下の問題(4つ)がある。
−2030年のCO2排出削減量は、1990年比で13%と低い。これは、省エネ対策と再エネ普及の見込みが少ないからである。
−原発の原則40年稼働を、60年に延長することを前提にしている。これは「原発依存度を可能な限り低減させる」とするエネルギー基本計画と矛盾する。
−2030年の化石燃料供給量は、全体の76.4%と高く、再エネ・水力による国内自給率は13.1%にとどまる。特に、石炭火力発電所の増設や海外輸出は、パリ協定の長期目標に反している。
−経済影響評価は、「原発安価、再エネ高価」を前提とし、省エネや再エネによる経済効果などのプラス評価が考慮されていない。佐和(隆光)教授も「マイナス面だけの経済評価は、経済分析ではない」とされている。
・CASAは、以前から日本における排出削減可能性のシミュレーションモデルの開発に取り組んできた。そして、ボトムアップモデルと経済モデルを統合した「CASA2030モデル」を独自に開発した。
・一次エネルギー供給量については、2030年、BaU515,169百億kcal、CASA対策(原発即ゼロ)366,728百億kcal(再エネ100%は無理。石炭も一定割合見込む)、政府対策451,400百億kcalとなっている。
・CASAの試算によると、「脱原発・脱化石燃料」を進めながらも、省エネとエネルギーシフトで、2030年のエネルギー源CO2排出量「40%削減」は、十分に実現可能である。
・また、温暖化対策によるマクロ経済への悪影響は軽微であり、むしろ温暖化対策による経済波及効果が見込める。
・再エネ普及や省エネ推進は、国民運動のような意識啓発では効果が乏しく、設備投資を伴う事業を促進すべきである。また、再エネ事業と省エネ事業を組み合わせた事業展開が必要である。
・石炭火力発電所の新増設や輸出は、温暖化対策と逆行するものであり、即座に中止すべきである。
・温暖化防止社会は、安全で豊かな暮らしを実現し、環境リスクを軽減するだけでなく、新たな経済発展にもつながるものである。断熱材の普及など重要である。
第2部は、大幅なCO2排出削減はどうすれば可能か? 石炭火力のバイオマス混焼によるCO2削減の現実性は? などについて、活発に意見交換が行われました。モデレーターは、NPO法人農都会議理事 バイオマスWG座長の澤一誠氏でした。
アンケートへも多数の回答をいただきました。
上園氏の講演と質疑・意見交換の概要や資料等の詳細をお知りになりたい方は、事務局へメールでお尋ねください。会員様には詳細レポートをお送りします。
今回の石炭混焼SGでは、脱原発・脱化石燃料を進めながらもCO2の40%削減は可能なこと、再生可能エネルギーへの転換で経済成長できることのお話があり、小人数ではもったいない内容でした。次回は大きな会場で上園先生にお話ししていただけたらと思います。
講師並びにご参加の皆さま、誠にありがとうございました。
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