CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る
« NPO農都会議2016年度総会の報告 | Main | 6月6日「電力自由化・構造変革の行方」勉強会のお知らせ »
4月18日「バイオマスエネルギーの未来」講演会の報告[2016年04月24日(Sun)]
 NPO農都会議は、4月18日(月)夕、「バイオマスエネルギーの未来 〜上伊那森林組合のペレット製造の現場から考える」記念講演会・討論会を開催しました。
 →イベント案内

4月18日記念講演会

 会場の港区神明いきいきプラザに50数名の参加者が集まり、講演と質疑応答、意見交換が行われました。
 第1部は、上伊那森林組合 参事 バイオマス・エネルギー室長、一般社団法人日本木質ペレット協会 前専務理事の寺澤茂通氏により、「上伊那森林組合における木質ペレットの製造について」のテーマで、講演と質疑が行われました。
 寺澤氏は、長野県上伊那地域の森林・林業の現状、上伊那森林組合木質バイオマス・エネルギー工場、木質ペレット産業(長野県のペレットストーブの設置状況、上伊那地域におけるペレットボイラーの設置状況、流通、品質管理)などの説明をされました。また、木質ペレット品質規格・認証制度、国内外製ペレットストーブ・ボイラー設置例、灯油・ペレットの燃料比較などについてもお話しされました。

4月18日記念講演会

 寺澤氏の講演の概要です。

(1) 我が国の森林(人工林)の現状は、少子高齢化の状況にあり、適切な間伐が必要。そのためには、木材利用の拡大が必要である。全森林資源量は、49億m3(平成24年)、毎年8,000m3増加、また、未利用間伐材は毎年2,000万m3出て来る。一方で、年間用材需要量は、7,000万m3(平成23年)、木材自給率は、26.6%(平成23年)。

(2) 長野県上伊那地域は、伊那市を中心とする8つの市町村からなる。
 森林を所有形態別にみると、国有林が37%、民有林が66%(県6%、市町村12%、集落11%、団体18%、個人42%など)。個人については、零細・分散しており、境界が不明のものが多い。
 民有林について、樹種別に見ると、面積では、アカマツ28%、カラマツ36%など、蓄積量では、アカマツ31%、カラマツ43%などとなっている。

(3) 上伊那森林組合は、7つの森林組合が広域合併して、1995年設立。理事24名、監事3名で、代表理事組合長は、伊那市長の白鳥孝氏である。
 一般職員31名、技能職員42名、組合員数は12,629名(個人の森林所有者)である。売上高は10億円余、内訳は販売部門2億円余、加工部門2億円、森林整備部門5.5億円となっている。

(4) 本組合の木質バイオマスエネルギー工場の概要
・伊那市高遠町にある。プラスチック工場の跡地を利用。敷地面積13,285m2、成形工場棟1,175m2、倉庫棟1,617m2。
・ペレット工場の概要は、
 −ペレット生産能力:1トン/h、1,750トン/年(1日8時間、年240日前後として)で、昨年は、交代勤務によるフル稼働で2,500トンを生産。
 −製品:ピュア1号で、10kg袋詰めとフレコンバック500kgで供給。平成14年度県産材供給体制整備事業の補助金188百万円(うち国90百万円、市町村24百万円)を受け、平成15年12月に竣工。木質燃料製造施設164百万円、ペレットストーブ68台を管内の小・中学校に設置する費用10百万円も含まれる。
・製造工程は、丸太で受け入れ、おが粉を製造→カラマツ7、アカマツ3の割合でおが粉を混合→CPM社の成形機で成形→製品ふるい分け→包装、という順序になっている。
・カラマツ、アカマツを原料とし、丸太で受け入れ数ヶ月間貯木場にて保管し、天日乾燥させる。カラマツ、アカマツを混合することで製品の均一化も図れる。
・ペレット販売の推移を見ると、平成16年度(3月〜2月)360トンから、年々増加し、26年度は2,019トンになった。27年度は2,001トン、暖冬の影響である。80%がペレットストーブ用、20%がボイラー用となっており、10月から2月に大半が販売される。
・ペレットの流通については、県内の17森林組合と販売代理店契約を結ぶとともに、県外の販売代理店にも出荷している。
・ペレットの品質管理については、生おが粉の含水率管理、乾燥おが粉の含水率管理、ペレットの含水率管理、造粒度試験、製品機械的耐久性試験など毎日行っている。

4月18日記念講演会

(5) 木質ペレットの生産等の状況
・世界のペレット生産の状況(2010年)は、アメリカ、カナダ、ドイツ、スウェーデンで大きい。消費は、スウェーデン、デンマーク、オランダ、アメリカ、イタリアで大きい。日本は、生産、消費とも、極めてわずかである。
・日本の生産量は、近年増大はしており、平成26年で、126,000トン。工場数は142工場まで増加したが、小規模の施設が多い。
・長野県におけるペレットストーブの設置状況は、平成22年3月で1,113台、現在は2,000台を超えていると思われる。ペレットストーブ、ボイラーの設置補助金もある。ボイラーは温泉の加温用、床暖房用、給湯用、ハウス暖房用等に設置されている。
・業界団体としては、2007年に任意団体「日本木質ペレット協会」が発足し、2009年に「一般社団法人日本木質ペレット協会」が設立された。平成23年3月には「木質ペレット品質規格」が制定され、また、平成24年4月には「燃料用優良木質ペレット認証制度」が実施された。そして、平成24年7月にピュア1号が全国第1号で認証され、認証ペレットの生産がスタートした。
・この品質規格にあわせた木質ペレットを製造することが大切で、品質管理を徹底することがペレットストーブでの燃焼トラブル等を減少させる手段と考える。
・木質ペレット燃焼機器としてのペレットストーブには、国外製(イタリア製等デザインが優れている)、国内製様々ある。

(6) 設置事例
・ペレットストーブについて、小中学校での設置事例からは、当初、「着火が悪い」との評価が多く聞かれた。最近では、「じんわりと温かい」、「石油のように臭くない」などの評価が得られている。
・我が家の例では、3.6トン/年使用し、こたつを使用しなくなったことから電気料金が安くなった、年に1回は煙突や排気筒の掃除が必要となる。(排気筒、煙突の設置にあたっては各市町村にある火災予防条例を遵守しなければならない)
・ペレットボイラーについて、新潟県柏崎市の農村リゾート観光施設「高柳じょんのび村」のケースは興味深い。温泉熱源設備としてペレットボイラーを設置(50万Kcal/h(580kW/h)、4,578万円、うち補助金2,060万円)。 平23年度で見ると、ペレット年間使用量281トン、ペレット単価40円、年間ペレット代金1,126万円、これに対し灯油の場合(推計)、灯油年間使用量24.6万L、灯油単価89円、年間灯油代金2,196万円で、差引1,070万円軽減の計算となっている。
・熱量のみでの換算では表せないものが木質ペレットにはある。それが、燃焼灰の蓄熱効果だと思う。伊那市においても本年度、高遠さくらの湯や介護施設みぶの里にペレットボイラーが導入されたので、燃焼灰の蓄熱効果等が実証されるとよいと考えている。

 →寺澤茂通氏のプレゼン資料(PDF)


4月18日記念講演会

 第2部は、「バイオマスエネルギーの未来産業」のテーマで、意見交換が活発に行われました。
 コメンテーターは、NPO法人バイオマス産業社会ネットワーク 副理事長、WGアドバイザーの竹林征雄氏、一般社団法人ソーシャルファイナンス支援センター 代表理事、帝京大学経済学部 教授、WGアドバイザーの澤山弘氏、 株式会社つくば林業 代表取締役、バイオマスWG 運営委員の松浦晃氏、バイオマスWGアドバイザー、バイオマス発電事業研究会 幹事の澤一誠氏の4名で、進行役は澤氏にお願いしました。

4月18日記念講演会

 はじめに、バイオマスエネルギー産業の設備や現場に詳しい竹林氏から、次の提起がありました。
 「いま、パラダイム転換の時期にある。世界のエネルギー消費量は急増している。バイオマスは持続的なもので、化石燃料は枯渇するものだ。有機物は、すべてカーボンニュートラルで、バイオマスは、循環型の持続的な社会構築に寄与する。
 バイオマス資源は木質ばかりではない。世界の20億人以上はまだ薪利用だ。目線を遠くに持てば、バイオマスは石油に変わるものになる。木をもっと使おう、裾野を広げ産業を広げつつ電気発電もしよう。カナダ、アメリカの家は大半が木造だ。地域保全と循環のためにも木を使い尽くす必要がある。バイオマスを基盤とした機能提供(エネルギー供給、物質フロー)への転換と持続性が重要だ。
 バイオマス産業の将来の可能性を考える場合に、文明を転換し、我々の考え方も変える必要がある。現在はバイオマス産業を構築する体制が整ってなく、横串を射した一貫した政策と体制が必要だ。日本はどうあるべきかを考える時期に来ており、バイオマス産業コンプレックスが一つの鍵となる。
 いまの文明は限界に来ている。これからは、文明そのものを見直す必要がある。西洋的価値観は負の遺産となってしまった。新文明を中心基軸にした社会システムと人間システムが必要だ。」

 →竹林征雄氏のプレゼン資料(PDF)

4月18日記念講演会

 地域エネルギーをファイナンス面から支援する活動を進めている澤山氏からは、地域でのバイオマスエネルギー事業化について、次のお話がありました。
 「市民出資ファンドといっても数千万円くらいのもの。当NPOの目的は、知識を得ることだけではないはず。じょんのび温泉の例にあるように、小規模でもバイオマス活用は成立可能。ペレット工場だけの先行着工はリスクがあるが、ペレットを燃料にしたガス化発電施設も併設すれば、チップの乾燥用に熱利用も図れるので採算が良くなる。
 国交省などは、地方創生策として『ふるさと投資ファンド』を活用したまちづくりを支援しており、再エネ事業にも助成金が出るので、ぜひ活用してほしい。」

4月18日記念講演会

 続いて、林業家の松浦氏から、茨城、千葉、神奈川での伐採・搬出等の事例を元に、バイオマス産業を支える林業の課題についてお話がありました。
 「パイロットをしていたが、森林保全とCO2削減に関心を強く持ち、異業種から参入した。茨城の石岡市を中心に、近県で施業している。確かに、補助金の有無によって、伐採の採算性は異なる。圃場として、森林・育林ができるには2〜3万円/m3が必要。百年の森林構想というのがあるが、林業は100年間の単位で事業計画を立てていく業種だ」などの説明のほか、輸入燃料の調達についての紹介もありました。

4月18日記念講演会

 バイオマス燃料のサプライチェーンに詳しい澤氏からは、次のお話がありました。
 「エネルギーミックスに基づく木質バイオマス発電の導入目標(335〜461万kW)に対し、森林林業基本計画改正案で提示されている800万m3 (現行600万m3)で発電できるのは僅か32万kW(現行24万kW) 相当である。このギャップを埋める為には国内材供給可能量を増やす為の方策を講じるべきだが、これから整備する為のリードタイムを考慮するとタイムラグが生じるので、現実的な選択肢としては、不足分は当面輸入材に頼らざるを得ないのが実情である。
 今後、国内材を最大限利用する為にも、輸入材を組合わせた現実的な燃料調達計画を立てて、全体のグランドデザイン・シナリオを描いた上で、今後の展開についてのロードマップを作ってバイオマスエネルギーの産業化に向けた体制整備を行う必要がある。」

4月18日記念講演会

 四氏のコメントを交えて、意見交換が活発に行われましたが、一例を記します。(○印:質問・意見、・印:回答)
○海外資源利用は? 国内生産を増やすべきでは。
○上野村の例があるが、どの程度の規模で事業として成立するのか?
・森林組合に展望がない。アピールの必要がある。
・地域に根ざしたものが必要で、主体を作るべきだ。
○地域創生になるのか? 収入は?
・250万円平均。オーストリアは、最低400万円で、親方600〜800万円、フォレスター800万円。ドイツ工場では、500〜600万円。
・補助金も含めた形やシステムを変えるべき。みんなで考えていく場が必要。
・産業のあり方を変えるべき。政府へも提言していく。
○FITの問題点は?
・太陽光重視が問題。変動電源が増えてしまった。グランドデザインができていない。


4月18日記念講演会

 アンケートへ多数の参加者から回答をいただきました。

 第1部の講演・質疑については、「成功事例としてとても良かった」、「大変参考になった。私たちの山はスギ・ヒノキが9割近く。どうしたらよいか?一度、伊那へ行ってみたい」、「松や広葉樹が多い地域ならではのペレット事業と感じた」、「成功例を聞くことができ大変良かった。ペレットの品質がガス化炉に大きく影響する実例に驚いた」、「品質の重要性がよくわかった」、「市長が組合長ということで、行政の導入サポートが重要と感じた」、「品質管理に配慮したペレット生産で、今後の参考にすべき。個人利用者への配送システム等はどのようになっているか説明が欲しかった」、「原木調達の仕組み、杉・桧のペレット品質・性能の差について詳しく知りたい。ペレットを30円以下にするための具体的方策について聞きたかった」、「工場設置の採算性について説明して欲しかった」などの感想、意見がありました。

 第2部の意見交換については、「(自分の関心事の)人口減少、農耕地消失の方向と木材利用の関係を考えたい。農・林はアクセスエリア・スキルが共通。農・林合わせると利益モデルの可能性が拡がる」、「竹林さんが提起されたバイオエネ未来産業構想は極めて総合的で説得力があった」、「竹林さんの考えに賛同。効率だけを求めるのはもう止めるべき時代と思う。松浦さんの100年の事業計画はいい話だと思う」、「竹林氏の文明の転換点という発想は素晴らしい、総論から個別の政策へ結び付けていく努力が必要」、「討論会の多くの時間を文明論に使うことは時間が惜しい気がした」、「孫子のために多方面から真剣に考えていかなければいけない問題と感じた」、「このような討論会は好ましい」、「講演者同士の討論も聞いてみたかった」などの感想、意見がありました。

 「バイオマスエネルギーの未来産業」についての意見・提案は?に、「FIT導入によりバイオマス産業は一時的に活性化されているが、20年後に発電所が持続可能な姿を作っていかなければなりません。どのように達成するのか考える必要がある。それぞれの提起はもっともだが、今一歩見えない感じがする」、「他の産業もそうだが、現場で働いている人々の所得が低い状況だ。資本家が取り過ぎている構造。それを変えていく必要がある」、「日本の特性として、政・官・業・個人一体となって取り組めば良い方向に行くと思う」、「川上・川下双方での実需創出活動の一体化」などの意見、提案がありました。

 今後やってほしい勉強会の希望等については、「若者・子どもの林業経験、森林生態と地震・地学の関係」、「森の貯金箱=FSB工法(B材中心に45m3の木材利用)の家について、その普及について(間伐がお金になれば森林業の再生可能)、ペレットストーブ、太陽熱温水器&床暖房」、「発電のメカニズム」、「続けてください」などの提案、要望がありました。

4月18日記念講演会

 組織変更を記念して開催された今回の講演会・討論会ですが、おかげさまで盛会でした。中山間地の自給可能エネルギーとして期待されている木質ペレットは、発電用途だけでなく、多方面に使い勝手の良い燃料です。森林率67%(林野庁、2012年3月)でありながら、木質バイオマス利用の後進国といわれる日本でも、欧米並みのコスト競争力をペレット産業が持てば一気に用途は拡大します。
 NPO農都会議は、バイオマスエネルギー活用を進めるため、引き続きバイオマス燃料調達の問題に取り組んでまいります。
 講師並びにコメンテーターの皆様、ご参加の皆様、誠にありがとうございました。
Posted by NPO農都会議 at 22:52 | 勉強会 | この記事のURL | コメント(0)
この記事のURL
http://blog.canpan.info/bioenergy/archive/123
コメントする
コメント
検索
検索語句
 NPO農都会議ボタン農都会議ホームページ
  FacebookボタンNPO農都会議
  Facebookボタン農都サロン
トピックス
カテゴリ
最新記事
最新コメント
<< 2019年06月 >>
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            
月別アーカイブ
リンク集
プロフィール

農都会議 バイオマスWG(ワーキンググループ)さんの画像
QRコード

http://blog.canpan.info/bioenergy/index1_0.rdf
http://blog.canpan.info/bioenergy/index2_0.xml