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犬山城 (01/22)
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東京新聞の記事 [2014年09月13日(Sat)]
9月10日の東京新聞・夕刊に,
「フランクリン隊の船,海底で」
という見出しとともに,170年前の1846年にカナダ北極圏を探検中に消息を絶ったイギリス海軍船二隻のうちの一隻が海底で発見されたという内容の記事が掲載されていました.
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2014091002000242.html

記事によれば,
170年前の英海軍の探検船の可能背がある船体が,カナダの領海内で,カナダの調査チームにより良好な遺存状態で発見された,
調査には「政府機関の遠隔操作の海中探査機」が使用されたとのことで,
しかも「浅い海底」とありますので,詳細調査は可能な事例でもあるようです.

ただし,調査の契機や組織,調査の方法や内容,発見船体にたいする今後の対応など,
肝心なことが書かれていません.


この調査は,カナダ政府が6年越しに支援してきた国家プロジェクトで,
カナダの官民さまざまな機関が関係したかなり大きなプロジェクトのようです.
しっかりとした組織が,学術的に地道に積み重ねた調査成果で,
遺跡保護・管理も見据えてに取り組んでいます.
プロジェクトおよび調査の詳細については,以下のサイトで確認できます.
http://www.cbc.ca/news/politics/lost-franklin-expedition-ship-found-in-the-arctic-1.2760311

新聞の記事では「発見」だけが,大きく取り上げられ,
プロジェクトや調査の詳細については,触れられていないのです.


このような新聞報道のあり方には,問題があります,
少なくとも国内の考古学研究者の多くは,スルーする内容です.
考古学的な手続き(調査)がなされて発見されたものととらえないからです.
そこにはこれまでの「沈没船」情報(報道)にたいする先入観の影響も多分にあるものと思います.

今年も沈没船発見のニュースを新聞記事やテレビニュースで何度か目にしました.
その多くは(国外は例外なく),
沈没船 → お宝 → 引揚げ → 時価評価
というような,一般受けするような「遺跡」の一側面にすぎない積荷のみにスポットをあてたものでした.
そして,明らかなトレジャーハンティング的なものでさえ,
発見の原因を「調査」によるものとして,肯定的にとらえる内容もありました.

陸上の考古学的な報道ではほとんどみない
「一般受け」するような偏った内容,そしてトレジャーハンティングを肯定する内容(無意識的なものもふくめて.これは,よりたちが悪いのですが)の報道が,
なぜか,「水中」になると主となる傾向があります.
(この傾向は,国内だけではないでしょう)

このような状況では,研究者は「沈没船」を考古学の研究対象とするのに躊躇するでしょうし,
先入観も植え付けられることでしょう.

そして,このことが,国内外で「沈没船」そして水中文化遺産が,研究対象として周知されない,されずらい理由のひとつとなっているとも言えます.

このブログでも何度も書いていますが,
報道する側も陸上と同じように,偏った内容ではなく,
調査の契機・内容・成果を正確に伝えてもらいたいものです.

先入観を払拭するためにも.
報道の影響は,大きいですから.