このblogでも紹介しているように
今年の3月に鷹島海底遺跡が国内の水中遺跡としては初の国史跡に指定されました.
ただし,
水中遺跡を「常時水面下にある遺跡」ととらえ,
「その一部又は全部が定期的又は継続的に少なくとも百年間水中にあった」(UNESCO水中文化遺産保護条約の定義)
という
水中文化遺産のひとつととらえたばあい,
国内初ではありません.
水中文化遺産としては、
1968(昭和43)年に国史跡に指定された
国内現存最古の築港跡である
和賀江島(神奈川県鎌倉市)
が,あります.
通常は,一部のみが水面上にあらわれており,
潮が大きく引くときには,その多くが姿をあらわします.
とくに,春・秋の大潮時には,陸続きとなり,上陸も容易に可能となります.
大潮時.陸続きの「島」となる.鷹島海底遺跡より
44年も前のこととなります.
しかし,この
和賀江島,国史跡でありながら,
遺跡として十分な評価・保全がなされているとはいえません.現状は,経年の自然営力や災害等により,
構築礫が散在して島状になってしまい,
築港としての面影はない状況ではありますが,
陸続きとなる大潮時には,
多くのひとが上陸して,構成礫を動かして「磯もの」を取っていますし,
通常時でもウインドサーファーは何の躊躇もなく上陸しています.
船の座礁もあります.
数年前には,大型台船が座礁したこともありました.
通常時.島状に一部のみが水面上に見える.ウインドサーファーも多い.このような状況に,
国史跡としての十分なケアがなされているかというと,
「?」です.
やはり,
水中(常時水面下ではありませんが)にあることからでしょうか?
陸上にある史跡とくらべると,その扱いの違いを感じます.
何か,水中文化遺産を取り巻く環境を象徴しているように感じてなりません.なお,初めてこの和賀江島を歴史的・考古学的に評価した赤星直忠先生は,
「今や湮滅に向かいひつゝある交通史上の珍貴なる遺蹟をせめてこの儘にでも保存したいものである」(「和賀江島築港阯」『神奈川県史蹟名勝天然記念物調査報告書』第2輯 神奈川県教育委員会 1933)
と書き残している.
今から79年前のことですが,
今も状況はかわらないようです.