日本は遅れている? [2012年08月29日(Wed)]
「日本の水中考古学は,欧米はもとよりアジアのなかでも遅れている」
ということをよく耳にします. たしかに,先日ものblogでも書いたように, 公立の水中文化遺産を調査・研究できる機関, あるいは水中文化遺産に関する専門の博物館はありません. 関連法およびその運用も十分とはいえません. この点からは,それらを持っている中国・韓国をはじめとした, 他のアジアの国々より,遅れているのかもしれません. このように,環境・制度面からみれば,「日本は遅れている」といえます. ただし,このことのみで「日本は遅れている」といえるのでしょうか? 私は,そうは思いません. 日本の考古学は, 遺跡(遺構・遺物)の調査・研究方法,成果, 遺跡の保存・活用,遺物の保存処理, 法制度や行政の取り組み, など,どれをとってもアジアはもとより,世界でもトップレベルです. 考古学の一分野である「水中考古学」も,同様です. これまでの調査内容や成果をみれば,それは明らかです. けっして,「遅れた」ものではありません. ただし,水中文化遺産の未周知から,実践する機会に恵まれない,ということはあります. このことが,環境の未整備をもたらしていますので, 「遅れている」ととらえられているのかもしれません. また,何回も触れていますが, 「水中考古学」が「考古学」とは違う学問であると, とらえられていることも,その原因といえるのかもしれません. 「水中考古学」を実践するためには, 特別な施設や機関, 特別な調査方法や研究方法, 特別な制度, など,「特別なこと」が必要, という先入観や偏見もあるのでしょう. 「先入観」と「偏見」,手ごわいです. この「先入観」や「偏見」をリセットして, 日本の「水中考古学」を今一度,見直してみてください. けっして「遅れている」とは言えないこと, は,お分かりになるものと思います. それとともに,今,日本の「水中考古学」に必要なことも. |