練習艦「かしま」の日課 1[2007年09月25日(Tue)]
(9月11日秋山記)
早朝5時55分、「総員起し5分前」と艦内放送が鳴り響く。6時には「総員起し」で全員起床、6時15分には「配食用意」、そして6時半に朝食。あっという間に食事は終わる。この間、練習艦は蛇行訓練を行う。
私の居室は、上部甲板より1階上にある司令官室や艦長室に並び、トイレ・バスルーム、寝室、居室の3部屋で大変恵まれたものだが、
幹部クラスは甲板より1階下の2人部屋、実習幹部は2段ベッドの大部屋、さらに1階降りて、乗員は2段ベッドだが居室全体がさらに狭くなる。トイレ、風呂、シャワー、洗濯機は共同使用となる。
女性自衛官の部屋は幹部、実習幹部、乗員別に1箇所に固まり、それぞれトイレ・バス・洗濯機などを女性だけで共同使用する形になっている。
練習艦隊司令官以下幕僚幹部(私もここに入っている)は、甲板と同じ階にあるなかなか立派な食堂で朝食をとる。
この部屋は各国大統領ほか要人の艦艇訪問時に使用される。いずれにしても、練習艦隊は訪問国との親善がひとつの重要な活動になっているため、このような珍しい仕様になっている。入港時、司令官主催昼食会などは、この部屋で行われる。
食堂は、「かしま」の艦長以下の士官幹部用の食堂、実習幹部用の食堂、乗員用の食堂などがある。先任伍長と曹長の集まるCPO(Chief Petty Officer)室も彼らの食堂となる。
なお、練習艦は、実習幹部が大勢乗って研修を受けるため、艦橋、CIC(Combat Information Center)、機関室、舵機室、その他の部屋、通路など全般的に広く作られている。
午前中はだいたい8時から訓練に入る。
本日9月10日は、訓練ではなく、7時15分頃から作業に入って、呉港から出てきた補給艦「おうみ」より洋上給油を受ける(註1)。

海域は九州南西の東シナ海で、3艦が受給し終わるのに2時間強かかる。
通常は8時より、既に報告したような各種戦技訓練、CICでの机上演習などが行われる。例えば、9月8日にはCICにて机上防空演習が行われた(註2)。
11時30分、昼食となる。午後は、防火、防水、救急、作業安全など各種共同訓練などが行われるが、本日は、実習幹部が見る中、不審船立ち入り検査訓練が行われた(註3)。

もっとも最近は、実習幹部は試験勉強が中心で、ほとんど実技の訓練は行っていない。9月6日と9日に、丸1日かけて、運航と機関の海技試験が行われた。そして、試験が終わって9月10日午後4時に、実習幹部の職種が発表された。
全員講堂に集められ、練習艦「かしま」(註4)に乗艦している実習幹部は、艦長から一人一人名前が呼ばれ、職種が言い渡された。職種は、艦艇、潜水艦、航空、艦艇装備、航空装備、経理補給、施設、航空管制、薬剤である。
圧倒的に艦艇の数が多いが、各職種に対する実習幹部各人の希望が通るのは8割程度であり、発表ごとにどよめきないし大きな拍手が起こる。航空は狭き門、逆に艦艇は数が多く、どうしても艦艇を希望しない者も配属となるので、悲喜こもごもである。日本帰国前、今度は配属が発表になる。
この職種発表とは関係なく、遠洋練習航海中に、海上自衛隊勤務に自信が持てなくなる実習生が出てきて、結局毎年、航海訓練後に数名の実習幹部が辞めていくようである。
無理に引き止めることはしないようだが、この時期、幹部や艦長、司令官がこれらの者の相談にのらなければならない時期となる。(続く)
(註1)〜(註4)は続きを読むでご覧下さい。
早朝5時55分、「総員起し5分前」と艦内放送が鳴り響く。6時には「総員起し」で全員起床、6時15分には「配食用意」、そして6時半に朝食。あっという間に食事は終わる。この間、練習艦は蛇行訓練を行う。
私の居室は、上部甲板より1階上にある司令官室や艦長室に並び、トイレ・バスルーム、寝室、居室の3部屋で大変恵まれたものだが、

女性自衛官の部屋は幹部、実習幹部、乗員別に1箇所に固まり、それぞれトイレ・バス・洗濯機などを女性だけで共同使用する形になっている。
練習艦隊司令官以下幕僚幹部(私もここに入っている)は、甲板と同じ階にあるなかなか立派な食堂で朝食をとる。
この部屋は各国大統領ほか要人の艦艇訪問時に使用される。いずれにしても、練習艦隊は訪問国との親善がひとつの重要な活動になっているため、このような珍しい仕様になっている。入港時、司令官主催昼食会などは、この部屋で行われる。
食堂は、「かしま」の艦長以下の士官幹部用の食堂、実習幹部用の食堂、乗員用の食堂などがある。先任伍長と曹長の集まるCPO(Chief Petty Officer)室も彼らの食堂となる。
なお、練習艦は、実習幹部が大勢乗って研修を受けるため、艦橋、CIC(Combat Information Center)、機関室、舵機室、その他の部屋、通路など全般的に広く作られている。
午前中はだいたい8時から訓練に入る。
本日9月10日は、訓練ではなく、7時15分頃から作業に入って、呉港から出てきた補給艦「おうみ」より洋上給油を受ける(註1)。

海域は九州南西の東シナ海で、3艦が受給し終わるのに2時間強かかる。
通常は8時より、既に報告したような各種戦技訓練、CICでの机上演習などが行われる。例えば、9月8日にはCICにて机上防空演習が行われた(註2)。
11時30分、昼食となる。午後は、防火、防水、救急、作業安全など各種共同訓練などが行われるが、本日は、実習幹部が見る中、不審船立ち入り検査訓練が行われた(註3)。

もっとも最近は、実習幹部は試験勉強が中心で、ほとんど実技の訓練は行っていない。9月6日と9日に、丸1日かけて、運航と機関の海技試験が行われた。そして、試験が終わって9月10日午後4時に、実習幹部の職種が発表された。
全員講堂に集められ、練習艦「かしま」(註4)に乗艦している実習幹部は、艦長から一人一人名前が呼ばれ、職種が言い渡された。職種は、艦艇、潜水艦、航空、艦艇装備、航空装備、経理補給、施設、航空管制、薬剤である。
圧倒的に艦艇の数が多いが、各職種に対する実習幹部各人の希望が通るのは8割程度であり、発表ごとにどよめきないし大きな拍手が起こる。航空は狭き門、逆に艦艇は数が多く、どうしても艦艇を希望しない者も配属となるので、悲喜こもごもである。日本帰国前、今度は配属が発表になる。
この職種発表とは関係なく、遠洋練習航海中に、海上自衛隊勤務に自信が持てなくなる実習生が出てきて、結局毎年、航海訓練後に数名の実習幹部が辞めていくようである。
無理に引き止めることはしないようだが、この時期、幹部や艦長、司令官がこれらの者の相談にのらなければならない時期となる。(続く)
(註1)〜(註4)は続きを読むでご覧下さい。
(註1)洋上給油
南シナ海、東シナ海その2参照。
(註2)CIC机上防空訓練
不審な航空機をレーダーで捜索するところから始まる。3艦は円形の線上の3箇所に配置(通常はもっと多い艦船が配置される)され、それぞれレーダーで監視する。
各艦に近づく不審な航空機を発見し、その帰属が分からないと、敵機のおそれありということで、アシューム・ホスタイル(assume hostile)と指定。レーダーは数人で分担するが、かかる指定はレーダー盤で情報を共有している砲雷長が行う。
レーダーで敵機を見つつ、敵機に対応する艦船を指定する。敵機が複数となれば、艦船の指定も複雑な対応となる。また、敵機のレーダーの捜索方式が変化するが、これもキャッチする。
ある一定の距離の所で敵機が旋回すると、ミサイルを発射した可能性が高まるので、「ミサイルを発射した可能性あり」と叫んで、ミサイルの捕捉に全神経を集中する。
攻撃ミサイルを捕捉すると、射撃管制レーダーにより精度の高い追尾となり、あと何秒で到来と刻々と声が飛ぶ。艦長から「攻撃」と命令、そして砲雷長がぎりぎりのタイミングで「シースパロー攻撃始め」と叫び、射撃担当が「撃て」と叫んでシースパローが発射される。この何秒間は、CICは早口の報告と指令が飛び交い騒然となる。
演習は2回行われたが、2回とも敵のミサイルを破壊することに成功した。これを実習幹部にやらせるとなかなかうまくいかないらしい。まず、捕捉が遅い、攻撃艦艇の割り当てが不適切、シースパローの発射のタイミングが取れないなど、色々のようである。既に経験をつんだ幹部と乗員は、さすがの腕だということである。
(註3)立ち入り検査訓練
9月10日、船舶検査法による不審船の立ち入り検査訓練が行われた。「かしま」が不審船の役割。検査する側は「さわぎり」で、不審船の船長や乗組員も「さわぎり」から派遣された。これを、実習幹部が見ながら研修を受けるというもの。
「さわぎり」から、検査官など10数名がボートで接近。風が強く波が高かったので、ボートは木の葉のごとくやってくる。船舶検査法は、対象船舶の合意を前提に行われるので、当艦からははしごが下ろされ、検査官達は右舷からはしごを昇って乗船。
乗組員の検査、貨物の検査が行われ、所持物品ナイフの発見、貨物の中に機雷を発見。船長に対する検査も、艦橋にて同意の上実施。抵抗したり不穏な動きをするも、数名の検査官の前で、検査に応じる。その様が、実演される。
身体検査、ナイフ所持発見、本人確認、船舶関係の質問、予め集められた短銃の弾取り除きなどをした後、なぜ日本領海に深く入ったのか、なぜ不審な貨物を海中投下したのか、詰問が続く。
最終的に、一等航海士との説明食い違いなどから、船長がボスの指示で、機雷を3個積み込み、うち2個を日本領海内に投棄したことを認めて、立ち入り検査訓練を終わる。
初歩的な訓練で、同意を前提にしたものであるからこういったストーリーになるのだが、現実には大変なことだろう。同意されない場合を考慮すれば、今の船舶検査法は欠陥法だといえよう。
しかし、考えてみれば、同意を前提にしない船舶検査はさらに相当の危険性があり、これまた容易なことではない。かえって、同意を前提にした検査をいかに確保するかが当面の重要な事柄と認識した次第である。
(註4)練習艦「かしま」
「かしま」は、1995年に就役した4,050トンの練習艦で、全長は143メートルある。主機関はガスタービン2基・ディーゼル2基で、27,000馬力、速力25ノット、定員は360名。訓練専用の艦艇なので、主要兵装は76ミリ速射砲と短魚雷のみである。
参考のため、兵装に関して言えば、護衛艦隊から参加した「さわぎり」は、以下の主要兵装を備えている。76ミリ速射砲、20ミリ機関砲(CIWS)、対艦ミサイルSSM、対空ミサイルSAM、対潜ロケット・アスロック、短魚雷、機関銃、小銃である。機関銃は北朝鮮スパイ船領海侵入事件以来装備している。「さわぎり」は、このほか対潜哨戒ヘリSH60-Jを搭載。
さて、艦艇の総指揮を取る場所は艦橋(ブリッジ)であり、司令官や艦長がいる。艦隊を指揮するのは練習艦隊司令官、「かしま」を指揮するのは艦長である。
甲板より2階下の階には、操縦室があり、機関長以下が艦内の電気、エンジン、通風、保全などを統括している。この階には、さらにCIC(Combat Information Center)、などがあり、厨房や食堂その他生活の場所、CPO(Chief Petty Officer)室がある。1階上には、幹部の居室、実習幹部の居室、1階下には、乗員の居室がある。
厨房では、10人前後が、毎日3食、約340人の食事を準備する。なお、CPO室というのは曹長室のことで、13人程いる。艦艇のオペレーションの実働部署の長達である。
このほか、錨鎖庫(艦首に近い、甲板の下の部屋。錨の収納庫。錨を揚げるとき、ここに作業員が入り、錨をうまく収める作業をするというが、これは厳しい。)、エンジンルーム(ガスタービンエンジン。振動や音が出ないようクッション付き。航空機用エンジンを使用。減速装置、ボイラー、造水施設、発電機などを、作業員2人で対応。)、舵機室(左右の舵の真上。伝達電気経路が故障した場合、ここで直接舵を取る。舵を動かす油圧系統に故障が起きた場合、手動で圧力ポンプを使って舵を取る。実習幹部も全員ここで汗をかく。)などがある。
南シナ海、東シナ海その2参照。
(註2)CIC机上防空訓練
不審な航空機をレーダーで捜索するところから始まる。3艦は円形の線上の3箇所に配置(通常はもっと多い艦船が配置される)され、それぞれレーダーで監視する。
各艦に近づく不審な航空機を発見し、その帰属が分からないと、敵機のおそれありということで、アシューム・ホスタイル(assume hostile)と指定。レーダーは数人で分担するが、かかる指定はレーダー盤で情報を共有している砲雷長が行う。
レーダーで敵機を見つつ、敵機に対応する艦船を指定する。敵機が複数となれば、艦船の指定も複雑な対応となる。また、敵機のレーダーの捜索方式が変化するが、これもキャッチする。
ある一定の距離の所で敵機が旋回すると、ミサイルを発射した可能性が高まるので、「ミサイルを発射した可能性あり」と叫んで、ミサイルの捕捉に全神経を集中する。
攻撃ミサイルを捕捉すると、射撃管制レーダーにより精度の高い追尾となり、あと何秒で到来と刻々と声が飛ぶ。艦長から「攻撃」と命令、そして砲雷長がぎりぎりのタイミングで「シースパロー攻撃始め」と叫び、射撃担当が「撃て」と叫んでシースパローが発射される。この何秒間は、CICは早口の報告と指令が飛び交い騒然となる。
演習は2回行われたが、2回とも敵のミサイルを破壊することに成功した。これを実習幹部にやらせるとなかなかうまくいかないらしい。まず、捕捉が遅い、攻撃艦艇の割り当てが不適切、シースパローの発射のタイミングが取れないなど、色々のようである。既に経験をつんだ幹部と乗員は、さすがの腕だということである。
(註3)立ち入り検査訓練
9月10日、船舶検査法による不審船の立ち入り検査訓練が行われた。「かしま」が不審船の役割。検査する側は「さわぎり」で、不審船の船長や乗組員も「さわぎり」から派遣された。これを、実習幹部が見ながら研修を受けるというもの。
「さわぎり」から、検査官など10数名がボートで接近。風が強く波が高かったので、ボートは木の葉のごとくやってくる。船舶検査法は、対象船舶の合意を前提に行われるので、当艦からははしごが下ろされ、検査官達は右舷からはしごを昇って乗船。
乗組員の検査、貨物の検査が行われ、所持物品ナイフの発見、貨物の中に機雷を発見。船長に対する検査も、艦橋にて同意の上実施。抵抗したり不穏な動きをするも、数名の検査官の前で、検査に応じる。その様が、実演される。
身体検査、ナイフ所持発見、本人確認、船舶関係の質問、予め集められた短銃の弾取り除きなどをした後、なぜ日本領海に深く入ったのか、なぜ不審な貨物を海中投下したのか、詰問が続く。
最終的に、一等航海士との説明食い違いなどから、船長がボスの指示で、機雷を3個積み込み、うち2個を日本領海内に投棄したことを認めて、立ち入り検査訓練を終わる。
初歩的な訓練で、同意を前提にしたものであるからこういったストーリーになるのだが、現実には大変なことだろう。同意されない場合を考慮すれば、今の船舶検査法は欠陥法だといえよう。
しかし、考えてみれば、同意を前提にしない船舶検査はさらに相当の危険性があり、これまた容易なことではない。かえって、同意を前提にした検査をいかに確保するかが当面の重要な事柄と認識した次第である。
(註4)練習艦「かしま」
「かしま」は、1995年に就役した4,050トンの練習艦で、全長は143メートルある。主機関はガスタービン2基・ディーゼル2基で、27,000馬力、速力25ノット、定員は360名。訓練専用の艦艇なので、主要兵装は76ミリ速射砲と短魚雷のみである。
参考のため、兵装に関して言えば、護衛艦隊から参加した「さわぎり」は、以下の主要兵装を備えている。76ミリ速射砲、20ミリ機関砲(CIWS)、対艦ミサイルSSM、対空ミサイルSAM、対潜ロケット・アスロック、短魚雷、機関銃、小銃である。機関銃は北朝鮮スパイ船領海侵入事件以来装備している。「さわぎり」は、このほか対潜哨戒ヘリSH60-Jを搭載。
さて、艦艇の総指揮を取る場所は艦橋(ブリッジ)であり、司令官や艦長がいる。艦隊を指揮するのは練習艦隊司令官、「かしま」を指揮するのは艦長である。
甲板より2階下の階には、操縦室があり、機関長以下が艦内の電気、エンジン、通風、保全などを統括している。この階には、さらにCIC(Combat Information Center)、などがあり、厨房や食堂その他生活の場所、CPO(Chief Petty Officer)室がある。1階上には、幹部の居室、実習幹部の居室、1階下には、乗員の居室がある。
厨房では、10人前後が、毎日3食、約340人の食事を準備する。なお、CPO室というのは曹長室のことで、13人程いる。艦艇のオペレーションの実働部署の長達である。
このほか、錨鎖庫(艦首に近い、甲板の下の部屋。錨の収納庫。錨を揚げるとき、ここに作業員が入り、錨をうまく収める作業をするというが、これは厳しい。)、エンジンルーム(ガスタービンエンジン。振動や音が出ないようクッション付き。航空機用エンジンを使用。減速装置、ボイラー、造水施設、発電機などを、作業員2人で対応。)、舵機室(左右の舵の真上。伝達電気経路が故障した場合、ここで直接舵を取る。舵を動かす油圧系統に故障が起きた場合、手動で圧力ポンプを使って舵を取る。実習幹部も全員ここで汗をかく。)などがある。
Posted by 秋山昌廣 at 19:08 | この記事のURL | コメント(1) | トラックバック(0)





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コ・ウ・エ・イ(*^_^*)Chu!