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(5/16) ネパール便りVol.8 〜翻弄されるネパール〜 [2012年05月16日(Wed)]
ネパールでの母子保健事業が始動してから、はや3ヵ月が経とうとしています。お産センターの建設準備は徐々に進んでおり、雨季に入る6月を目前に急ピッチで作業を行なっています。

さて今回は、「雨季が来る前に何とか建設作業を進めなければ…」という気持ちとは裏腹に、なかなか思うように仕事を進められない、悩ましいネパールの事情を少しお話ししたいと思います。
この事情を理解するためには、ネパールの近代史を少しだけ知っておかなければなりません。以下、簡単に過去20年ほどのネパールの混乱ぶりについてご紹介します。


ネパールは1990年代に活発化した民主化運動により、国王親政制から立憲君主制へと移行しました。同時期、カトマンズ近郊のエリート層に抗議をするマオイスト(ネパール共産党毛沢東主義派)が徐々に武力闘争を開始し、村落部に住む貧困層を次々に勢力下へおさめていきました。

そんな中、2001年には王宮内にて銃の乱射事件が起き、多くの国民から慕われていたビレンドラ国王や王妃、王の親族などが殺害されるという痛ましい事件が起きました。事件の真相はいまだに明らかになっていませんが、これを契機に即位したギャネンドラ国王の治世以降、ネパールの一般大衆の心が王族から離れ、王制を廃する動きが加速していったと考えられています。
こうした激動のさなかであっても、マオイストと政府との衝突は続いていました。

しかし、2005年に当時のギャネンドラ国王が首相を解任し、自ら政権を掌握するとともに緊急事態令を発令するに至り、風向きが大きく変わりました。それまで対立していた政府とマオイストは、国王の専制政治を打倒するための連携を模索し始めたのです。
抗議の一環として、道路を閉鎖してバスやタクシーなどの公共交通機関が動けないようにし、商店なども強制的に休業させてしまうストライキやバンダと呼ばれる活動を相次いで行ないました。交通が麻痺し、商売ができないにも関わらず、こうした抗議活動を通じて、反国王支持層は徐々に拡大していきました。

(バンダとはネパール語で「閉じる」という意味で、ストライキと同じ様な意味合いで使われています。実施主体は政党だったり、学生団体だったり、石油の値上がりに反発するバスやタクシーの運転手組合だったりと様々です)


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バンダの日。車両の移動が禁止され、商店も閉まる


そして2006年4月、国王は自らが掌握していた政権の返却と議会の復活を宣言しましたが、議会では更に王制廃止へ向けての議論が進んでいきました。同年11月には、王制廃止のために協働していたマオイストと政府とが無期限停戦を誓う「包括和平協定」に調印。これにより、マオイストが1996年に武装蜂起して以来、約11年にわたって続いていた「ネパール内戦」が終結したのです。

そして2008年、ネパールの政治は新たな局面を迎えます。
4月の制憲議会選挙では、かつては武力闘争をしていたマオイストが政府第一党に躍進しました。5月には国王が正式に退位し、ネパールの王制は廃止されて連邦民主共和制へと移行しました。
なお国王が議会復活を宣言した2006年から国王退位の2008年の間には暫定憲法が制定されており、その中で2010年5月28日までに新しい憲法を作ることも決まっていました。

こうした紆余曲折を経て、新憲法の制定期限である2010年5月28日を迎えましたが、その日、私はネパールにいました。政党同士の意見が激しくぶつかり合い、ストライキやバンダが行なわれる日が1週間ほど続きました。ガスや水が出なくなり、野菜や牛乳などのごく基本的な食料品が手に入らないような日が続き、職場も閉鎖され、ネパールの国全体が呼吸を止めたようでした。


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5月28日に行われていた抗議デモの様子


結局、2010年5月には新憲法は制定されず、1年後の2011年5月28日が新たな制定期限となりました。しかし、その後も議論はなかなか進展せず、現在は今年の5月27日が新たな期限となっています。つまり、「暫定の」憲法のまま、4年近くも政治的な進展が見られずにいる、ということです。

今年も例年通り、合意に達しない政党同士がネパール各地でストライキやバンダを行なっています。すでに風物詩のような光景です。


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タイヤを道路の真ん中で燃やし、抗議活動を行なう

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主要な道路の真ん中で行なわれる政党集会


毎日のようにストライキの情報が入り、バンダがどの地域で行なわれている、あの道は閉鎖されている、などといった話が伝わってきます。政党の権力の程度によって、ストライキやバンダの規模や効力が変わります。
デモ隊や集会場所に近づかなければ危害は加えられませんが、電車がないカトマンズでは、車での移動ができないというのは致命的です。色々な情報に翻弄され、5月は国内移動そのものが難しいというほど酷い状態になっています。


それでも、事業地には今回の事業で建設されるお産センターを待っている人がいます。そして、事業の中で実施されるトレーニングを受け、今よりもっと安全な出産サービスを提供したいと思っている医療従事者がいます。
ADRAはこうした支援を必要としている人のもとへ手を差し伸べます。皆様ひとりひとりのネパールへの関心が、ネパールで厳しい環境に置かれている人々を救うことにつながります。

5月はバンダやストライキのために事業の動きが鈍くなってしまうかもしれませんが、6月以降の雨季が始まる前に、建設資材を建設予定地に運搬できるよう、調整を進めています。
これからも応援をよろしくお願いいたします。

(文責:ネパール事業担当 小川真以

※この事業は、外務省NGO連携無償資金協力の助成も受けて実施しています。

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Posted by ADRA Japan at 10:00 | ネパール便り | この記事のURL
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