ネパール西部のダイレク郡で実施している母子保健事業では、出産の際に使用されるお産センターの建設のほかにも、お産センターで働く人たちの医療スキルの向上や、医療施設で出産することの大切さを啓発する取り組みなど、様々な活動が行われています。
前回のブログでは、お産センターを建設している村を訪問した様子をお伝えしましたが、今回はカイラリ郡ダンガリという町の国立医療センターで行われている、SBA(Skilled Birth Attendant:出産介助者)研修の様子をご紹介したいと思います。
ダンガリへは8月19日の日曜日に、車で向かいました。出発地点は、ネパール西部の都市ネパールガンジ。ダイレク郡とカイラリ郡の中間ぐらいに位置する、インドとの国境に程近い町です。
ネパールというとヒマラヤ山脈を思い浮かべる方も多いと思いますが、ネパールガンジの標高はたったの250メートルほど。緯度は日本の奄美大島とほぼ同じで、年間を通じて暑く、雨も多い地域です。私たちが訪れた時期は、日中の気温は35℃ぐらいで朝晩もそれほど下がらず、蒸し暑い日々が続いていました。
起伏がほとんどないこの町では、学校に通う学生の多くは自転車を使います。また、庶民の足であるタクシーも、自転車の後ろに客が乗るカゴがついた「サイクルリキシャ」が普及しています(ミニバンのような車もタクシーとして使われています)。また、広大な畑を耕すために水牛を使った牛車も活用されており、いずれも丘陵地域にある首都のカトマンズではほとんど見られないものばかりです。
庶民の足であるサイクルリキシャ
畑に向かう、水牛が引く牛車
こんなサイクルリキシャや牛車が通る道を車で走り、4時間ほどかけてダンガリに着きました。ちなみに、研修生の地元であるダイレク郡からネパールガンジまでは車で6時間ほどかかるため、研修生は10時間かけてこの町に来たことになります。
ダンガリの町はネパールガンジと同じくインドと国境を接しているため、交通や貿易の要として賑わっています。標高差もほとんどないため暑さも相変わらずで、立っているだけでジットリと汗ばむほどでした。町中にサイクルリキシャが走っているのも、ネパールガンジと似ているところです。
サイクルリキシャが行き交うダンガリの町
「なぜわざわざ、研修生が住んでいる場所から車で何時間もかかる遠い町で研修を受けるの?もっと近くに研修をしてもらえる施設があるんじゃない?」と思う方もいるかもしれません。
それはごもっとも。実際、ダイレクから車で3時間ほどのところにあるスルケットという郡と、私たちが出発地点としたネパールガンジにも、研修生を受け入れる国立医療センターがあります。
しかし、すべての国立医療センターが、同じぐらい質の高い研修を提供している訳ではありません。また、このSBA研修はネパール政府が特に力を入れている分野のひとつでもあるため、時期によっては研修施設がいっぱいになってしまい、新たな研修生を受け入れられないという事態も起きています。
今回はこうした点を考慮し、近場の国立医療センターの中では最も効果的で質の高い研修を受けることができ、しかもダイレクからあまり遠くないところということで、ダンガリが選ばれました。
この事業でSBA研修を受けているのは12名。そのうち6名は、お産センターを建設している村の簡易保健所のスタッフです。残りの6名は、ダイレク郡の郡庁所在地にある郡保健事務所(District Health Office)の職員と、お産センターを建設する村の近隣の村で簡易保健所に勤めているスタッフです。
2ヶ月に及ぶこの研修は7月下旬から始まっているため、既に座学については一通り終えており、今はダンガリの病院で他の医療スタッフと一緒に勤務しながら、実技指導を受けているとのことでした。
研修生が泊まっている宿泊施設でインタビュー
研修生たちは、生まれ育ったダイレクとは大きく異なる生活環境に少し疲れ気味のようでしたが、積極的に知識や技術を学んでいると話してくれました。彼女たちの地元は標高1,500メートル前後で一般に丘陵地帯と呼ばれる地域に属しますが、最初に触れたようにダンガリの町は標高の低い地域にあり、気候だけ見ると別の国に来ているようです。そんな厳しい状況にもかかわらず、必死に技術を身につけようとしている研修生たちに頭が下がる思いでした。
彼女たちが実技指導を受けている病院を訪問した時は、出産直前の妊婦さんたちがいる部屋の脇にあるナースステーションで、記録用紙のつけ方や妊婦さんのケアの方法などについて、研修生自ら細かく説明をしてくれました。
指導役の病院のスタッフに頼ることなく、積極的に日本人スタッフに資料の説明をしてくれる姿から、ただ受け身で学ぶのではなく、進んで知識と技術を身につけようとする研修生の高い意識を感じることができ、とても頼もしく思えました。
ナースステーションで資料についての説明を受ける駐在スタッフの小川
今回はほんの数時間の滞在でしたが、SBA研修を受けている研修生の意欲を目の当たりにすることができました。研修を終え、自分たちの村に戻って出産の介助や出産前後の健診などを行なう際には、ここで習得した技術は必ず村人たちの役に立つことと思います。研修が終わるのは9月中旬。それまで、研修生たちの忙しい毎日は続きます。
〜おまけ ネパールの幹線道路で出会った風景〜
今回のブログでご紹介したダンガリは、ネパールガンジから180キロほど離れています。往復にはジープを使いましたが、道路は比較的整備されているほうで、全体を通じて坂もほとんどなく、舗装された道がずっと続いています。地元の人は「Highway(幹線道路)」と呼んでいます。
しかし、だからと言ってボンヤリとスピードを出して走れないのがネパールの道。最後のおまけに、時速80キロぐらいで走る車の中から見た風景をちょっとだけご紹介します。これもネパールの日常です。
道の真ん中に車を停め、乗り合いバスの上に自転車を積む人たち
中が満席で入れない人は後ろのステップに足を引っかけて乗ります

家畜も、飼い主と一緒にこの道路を通ります

座り込んで道の半分をふさいでしまう山羊
(文責:ネパール事業担当
須原敦)
※ネパール母子保健事業は、外務省NGO連携無償資金協力の助成も受けて実施しています。
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