(8/11) ネパール便りVol.1 〜 遥か山の向こうの事業地へ 〜 [2011年08月11日(Thu)]
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現在、ADRA Japanはネパール中西部における保健医療事業を開始するため、準備を行なっています。
ネパールは東西に長い国で、西から極西部、中西部、西部、中部、東部の5つの開発地域に分かれています。このうち、事業を予定しているネパール中西部は2000年代に激化した国軍とマオイストとの対立により、特に大きな影響を受けた地域です。 2008年の国王退位に伴い政治的混乱は収束しましたが、それまではネパール全土で政治的・社会的混乱が続き、その間、国家が管理する各種サービスに支障が起きました。そして、医療サービスの質も低下してしまいました。 そこで、ADRAJapanはMDGs(ミレニアム開発目標)で改善されるべきと定められている項目のうち、「乳幼児死亡率の改善」と「妊産婦の健康の改善」を目指し、お産センターの建設や出産介助師への研修などを行う事業を実施する予定です。 先日、事業担当者の小川が事業地の視察に行ってきました。そのうちの一つ、ダイレクと呼ばれる郡(日本の区分でいう都道府県)に行った時のことをご紹介します。 ダイレクに向かうには、まずは首都カトマンズから約1時間のフライトでネパールガンジという地方都市に飛びます。そこからは車で、なんと7時間。でも、ネパールガンジからダイレクまでの距離は154キロです。 えっ?154キロなら時速50キロで走れば、ものの3時間ぐらいで着くはずじゃないの? そう、154キロならそんなに遠くないはずなのです。でも、ここはヒマラヤ山脈が連なる国、ネパール。らせん階段を上るようにグルグル山を登ったと思ったら、またグルグル降りてこないといけません。そして、降りたと思いきや、またまたグルグルと山を登る…。そんなことを何度も何度も繰り返さないと、山を越えることができません。 しかも、5月から9月にかけてネパールは雨季に入ります。主要な幹線道路以外は舗装されていないため、土と岩がむき出しの地方の道路は雨が降るとドロドロ。ドロドロだけならまだいいのですが、そのうえ土砂崩れなどが起きてしまうと、道が塞がってしまうこともたびたび起こります。そのため、車は崖から落ちないよう、またぬかるんだ道にはまって動けなくなったりしないよう、ゆっくりゆっくり進みます。時には、自転車の方が早いんじゃないかと思われるぐらいにまで徐行運転することもあります。 ![]() 土砂崩れで道路が遮断され、開通されるまで待つバスとその乗客 そんなこんなで着いたダイレク郡では、お産センターの建設予定地に着くまでの道路も雨が降った後の土砂崩れで遮断されていて、歩いて行くことになってしまいました。 ![]() この岩道を下り、向こう側に続く細い道をずっと行ったところが目的地 往復で10時間にも及ぶ山登り&山下りだったのですが、その途中、男性に担がれた痩せ細った女性とすれ違いました。 聞くと、男性7名で女性を順番におぶりながら、病院まで運ぶ途中だったそうです。彼らの話によると、家から病院までは、彼らの脚力ならば5時間。険しい山道であっても走るようなスピードで進む彼らは、ゴツゴツした岩道も急な坂もトントーンと駆け上っていきます。しかも足元はビーチサンダル。私たち日本人の常識からは、かけ離れた世界です。 女性はかなり衰弱している様子でした。男性たちは一刻も早く病院へ搬送しないといけないという思いに駆られながら、山を走り抜けるのです。 ![]() 女性を担ぎ病院へ運ぶ村人 ネパールの地方にはまだまだ病院がない、医療従事者がいない、病人を運ぶ車がない、そして車が通れるような道がないといった場所がたくさんあります。そのような場所に住む人々は、今回私が出会った彼らのように、何時間もかけて病人を自分たちの足で運ばなければならないのです。 結局、私たちは片道5時間かけて歩いた時点で出会った、周辺に住む村人から「あと2時間はかかるよ」と言われ、やむなく建設予定地への訪問は断念し、引き返すことにしました。そして、その帰り際、偶然また彼らとすれ違いました。 病院で治療を受けさせ、また5時間もの時間をかけて、彼女を抱えて帰るところでした。時刻はすでに16時。家に着く頃には日が落ちてしまいます。山道には当然ながら街灯などはなく、彼らは月明かりを頼りに真っ暗な山道を駆け抜けなければなりません。 「暗くなっちゃうから、早く帰らないといけないんだ。またね!」と言い残し、彼らは山を下って行きました。 病人を入院させるにもそれなりのお金がかかります。そうしたお金の持ち合わせのない彼らは、治療を受けてわずかながらに回復した女性を見て、たとえまた何時間もかけて彼女を背負い、足元の不安定な道を戻らなければならないとしても、その日のうちに帰るという判断を下したのです。 ネパールは、首都カトマンズだけを見ると、車やバイクが走り、ショッピングモールやスーパーといった商業施設も次から次へと新規オープンし、病院もたくさん揃っていて、なんら不便がないように思われます。しかし、地方に行くとお店もない、病院もない、道路すらないというところで、人々は暮らしているのです。 これから行うADRA Japanの事業によって、少しでも多くの人が病気になっても不安を感じず、山道で出会った彼らのように病人を背負って山道を走り抜けるようなこともなく、日々の生活を送れるお手伝いができればと願っています。 (文責:開発事業担当 小川真以) |







