(9/30)南スーダン便りvol.70 〜急増している難民。緊急支援の現状と課題 [2016年09月30日(Fri)]
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の発表によると、9月3日から9月21日にかけて、約1万8000人の南スーダン難民がエチオピアのガンベラ州のパガックに流入しました。この事態を受け、ADRA Japanはパガック難民流入地点で緊急支援を行なっています。
(パガック難民流入地点の様子) 今増えている難民の大多数は、南スーダンの東北部に位置するアッパーナイル州の戦闘の激しい地域から避難してきています。難民の多くは女性と子どもですが、戦火や食糧難を逃れるために住み慣れた土地を離れ、雨の降る中、半月以上かけて170キロ以上の距離を歩き、国境のパガックまで逃れてきました。パガックで緊急の医療支援を行なっている国境なき医師団(MSF)によると、新たに流入している難民の間で、マラリア、下痢、上気道および下気道の感染症、腸内寄生虫、目と皮膚の感染症が確認されています。 また、エチオピアの首都アジスアベバを含め、パガック難民流入地点や難民キャンプがあるガンベラ州の周囲(南スーダン側も含めて)ではコレラの蔓延が確認されています。ガンベラ州に避難している難民への感染を水際で食い止めることが、喫緊の課題となっています。 周囲にコレラが蔓延する中、感染がガンベラ州内にまだおよんでいないのは、2014年8月から9月にかけてこの地で大規模にコレラの予防接種が実施されたからです。 コレラのような伝染病は人から人へとうつることでその範囲を拡大していきます。逆に言えば、たとえ感染者が出たとしても、その周囲の人間が耐性を持っていれば病原菌は封じ込められた状態になり、蔓延することはありません。つまり今のガンベラ州は、コレラ菌の拡散を防ぐ壁に囲まれた状態にあります。しかしながら、予防接種の効果は2年。すなわち、今月あるいは来月がこの「壁」効果を維持できる期限だと考えられています。 (パガックから難民を移送するバス。テレキディ難民キャンプ付近) 現在ADRAは、(特活)ジャパン・プラットフォームの助成金を得て、パガック難民流入地点、および新規流入難民が大勢移送されているテレキディ難民キャンプにて給水および衛生環境改善のための活動を行なっています。 特にパガックにおいてADRAは最も早い段階で活動を開始したNGOの1つで、UNHCRや世界各国のNGOが参加する会議においても、国連の水衛生担当官からその活動について言及されることがしばしばです。具体的には地下水汲み上げによる難民への飲料水の給水、トイレの建設、水浴び場の設置、衛生啓発活動、また清掃活動を行なっています。いずれも、難民キャンプでコレラやその他の病気の蔓延を防ぐために非常に重要なものです。特に給水は難民の命綱と言っても過言ではありません。 しかしながら、ADRAがこの緊急対応に投入できる資金にも限りがあります。ADRAだけでなく、ガンベラで活動している各国のNGOでも資金不足は深刻で、急増した難民に対応する活動をする上での最大の足枷となっています。国連機関であるUNHCRも例外ではなく、支援のために必要とされている額の僅か10%しか準備ができていません。 こうした状況の中でまずできることとして、ADRAは国連をはじめ各国のNGO、現地政府との連携強化に今まで以上に取り組んでいます。 9月24日には、ADRAはUNHCRから5,000個の固形石鹸を受け取り、9月25日からパガックでの衛生環境改善活動に活用しています。また、25日午後にはUNHCRから800ℓのベンジンが届きました。これで、地下水を汲み上げるのに使っているジェネレーターの燃料を1か月分確保することができました。加えて、Oxfam(イギリスのNGO)の協力で、飲料水を浄化するための塩素を9月24日までに調達することができました。9月25日からタンクに投入しています。また、現地水道局と連携し、もともとパガックにあった井戸1基を修理することができました。これにより、パガックでの水供給量を増やすことができました。 (給水に使用しているジェネレーター) (国連児童基金(UNICEF)による給水タンク (給水タンクとつながっている給水所) また、地下水を貯めておくタンクの容量が限られていることから、追加のタンクを確保する方法を他のNGOと模索しています。まだ修理ができていない井戸については、部品の調達ができ次第、修理に着手する予定です。 (現地水道局と連携しての手井戸の修理) (修理された手井戸で手を洗う子どもたち) 国連、NGO、政府機関と、緊急時にあってこうした心強いパートナーに恵まれていることは大変ありがたいことだと思っています。 南スーダン難民の流入がいつまで続くのかは予測するのが難しいところですが、UNHCRやNGOの中では今後3ヵ月は継続的に流入するという意見が多数を占めています。 今はまだトイレの数が足りていませんので、ADRAとしては、パガックでのトイレの数を、できればあと45基増やしたいと考えています。 (パガックで設置しているトイレ) また、日々新たに難民が流入し、先に来た難民は順次近くの難民キャンプにバスで移送されている状況ですから、衛生啓発活動を行なっても、教育を受けた難民は徐々にパガックを後にすることになります。したがって、衛生啓発活動はこれからも継続して行なう必要があります。また、現在は衛生啓発員6人、清掃員21人を配置し、衛生啓発および清掃を行なっていますが、野外排泄物の処理が間に合っていなかったり、水浴び場とトイレの形状が似ているため間違えて水浴び場で用を足してしまう難民もいたりします。そのため、さらに清掃啓発員の人数を増やし、情報の拡散を強化する必要があると考えています。 (衛生啓発活動の様子) (清掃活動の様子:排泄物に石灰をかけている様子) ADRAの活動を維持、強化するために皆様からのご支援が必要です。額の多少にかかわらず、有効に活用させていただきます。ご寄附は税金控除の対象にもなります。何卒、ご支援をご検討いただきたく、よろしくお願い申し上げます。 (燃料のベンジンを届けてくれたUNHCRスタッフとADRA Japan現地駐在員の河野) クレジットカードによるご寄付はこちらからお願いいたします。(【緊急】緊急支援 もしくは【南スーダン】難民支援 をお選びください) http://www.adrajpn.org/C_Kifu.html その他のご寄付の方法についてはこちらのページをご覧ください。 http://www.adrajpn.org/C_Kifu.html (執筆:南スーダン難民支援事業担当 河野雄太) ADRA Japanのホームページはこちらです |
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