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カンボジアでの国際協力。日本財団「伝統医療普及事業」

ASEAN各国にある、その土地に根ざした伝統医療リソースを活用し、
医療アクセスの悪い地域で最低限の医療を受けられない人々の
医療環境と健康増進を目的に活動しています。
職場でPDM [2012年01月25日(水)]
ただでさえ祝日の多いカンボジアだが、暦には平日である旧正月(中国正月)も盛大に祝われる(というか大胆にも休日を取る)。我々のオフィスも休み。土日を含めて5連休。スタッフの中には前後に有給をとり10連休を取っている者もいる。すっかりカンボジアペース。。。

連休と言えど、私の方は特に予定もなく来週の東京出張にむけ、静まり返ったオフィスをひたすら独占し、先週PCMセミナーの参加者3名で進めた自分たちの事業をPDMという表に当てはめる作業の続きにいそしんでいる。
アアデモナイコウデモナイ言いながら整然と樹形図を作成中


どの職場でもありがちな、「セミナーには参加するだけ。セミナーで習得した事は何も職場で活かされる事はない」という状況にはしたくなかった。PDMの活用については実践とは懸け離れた「机上の空論」と評する声もある。しかし事業で実際に起こっている出来事を整理し、“今出来る事と出来ない事”、“最優先課題”について理論的に説明するのに便利なツールである。

我々の事業の中で無茶振りのリクエストをしてくる役人の皆様に対し、身の丈にあった事業を選択していく事に納得していただくためのツールになる事と期待している。

実際に、オフィスで作業をしてみると、やはりこれは所詮“ツール”なのだという事を改めて感じる。デッサン力の無い人にコンピュータのデザインソフトを使わせても良い絵が描けないのと同じである。参加者の状況把握と問題抽出力が問われる。

作業としては、参加型ワークショップとして事業に関係する人たちが共同して作成する事に意義がある。今回ワークショップに参加したNGO職員である3人が、それぞれ実務で関係している団体の役割を担うよう設定した。NGO(3名とも)、日本のドナー(私)、保健省伝統医療局(事業マネージャー)、伝統治療師組合(オフィサー)、といった感じである。

事業を取り巻く環境の中で問題とされることをカードに書き込み、これをホワイトボード上で、原因と結果に基づく相関図として整理していく。次に構図はそのままに、問題点としてあげた各カードを問題解決するポジティブな文章に書き換えたカードとすり換える。こうするとホワイトボード上には問題が解決したときの状況が図式化される。これをPDM(事業デザイン原型)と呼ばれる評に配置し、それぞれの項目が達成できるための条件や、その進捗状況を計るための指標等を当てはめていき、PDMは完成する。
なんとか形になったかなー?!

ついでに、今回我々が参加したセミナーは、このPDMを基に事業を評価するというテーマを勉強してきた事もあり、事業2年目における評価を行い来年度の計画に活かしていくつもりだ。これぞセミナーのタイトルであったPCM (Project Cycle Management)である。

始めての試みであったが難しい部分も見つかった。問題を抽出していくためのスタート時に「根幹問題」をひとつ決定する。今回私は“伝統医療が信用されていない”というキーワードを「カンボジア伝統医療普及事業」の中の根幹問題とした。別の「根幹問題」を設定し、大きな事業を希望している保健省の人たちが参加して、この作業を行えば違った構図になるだろう。。。ああでもない、こうでもないと作っている作業は夢にまでPDMの表が出てきてしまった。。。(笑)

来週の東京出張中には再びPCMセミナーに参加する。今度は日本語での講義だ。また新たな気持ちで、この手法についての理解を深めていきたいと思う。
スタッフとPCMセミナーに参加。奮闘中! [2012年01月07日(土)]
今回CaTMOのスタッフ2名と一緒に、5日間のJICAカンボジアが主催する「NGOのためのPCMセミナー(モニタリング・評価)」に参加している。PCMとはプロジェクトサイクルマネージメント(Project Cycle Management)の略称。開発プロジェクトの計画、立案から、実施、モニタリング、評価といった、一連の業務マニュアルで、多くの開発援助機関で用いられている。

参加型アプローチと呼ばれる手法をイメージし、いざ挑戦!


今回のセミナー、講義とテキストはすべて英語。今回1団体からカンボジア人スタッフと日本人スタッフがペアで参加し、共通理解を深めて事業の活性化を図ろうという狙い。日本人参加者がカンボジアの参加者をサポートしながらセミナーは進行していく訳だが、考えてみると私自身がこのような英語での講義を受ける事自体始めての経験。妙に気合いが入り勉強嫌いの私が机の前で予習などしてしまった。
それぞれの参加者のコメントがひとつの表に並べられていく。。。

CaTMOが今回のセミナーに参加した理由であるが、もともとは開発プロジェクトの業務経験が少ない私自信のスキルアップのために財団本部が参加を勧めてくれた事が始まりで、セミナーの開催が決まる以前からJICAカンボジアオフィスの知人にPCMセミナー開催をリクエストしていた。

NGOとしては、これまで2年半事業を進めてきたものの、現地の省庁から財団側への要求があまりにも多岐に及んでいるため、なかなか事業期間やフォーカスポイントの絞り込み、保健省との業務分担が難しいという状況に悩まされていた。今回参加したスタッフ2名は、研修コースのプログラムマネージャーと、伝統医療師協会事務局のスタッフ。お互いに、セミナー終了後、一緒に自分達の事業状況を、今回のセミナーで習得したスキルで、目に見える形に整理しよう、とお互いに話し合った。
理論的に集約されたグループワークの結果を他のグループとも共有

前半の2日間が終わったところだ。すでに参加者の中には混乱している人も見受けられる。私も含めスタッフ2名は、必死ではあるが、励まし合いながら、かろうじてセミナーを楽しんでいる。3連休を挟み来週、後半戦が始まる。
CaTHA 全国調査を開始! [2012年01月04日(水)]
日本の無償支援によって架けられた“キズナ橋”は全長1700M。コンポンチャム県を両断するメコン川の両岸を跨ぎ東西のカンボジア交通の要となっている。
コンポンチャム県にかかるキズナ橋。日本の無償援助で2001年完成


地方調査の第1回目は、カンボジア東部2県(コンポンチャム県、プレイベン県)のCaTHA会員を対象に行うためキズナ橋に近いコンポンチャムの町に集まってもらった。最東部のベトナムに近いラタナキリ県の会員は、どうせ中央に出てくるのなら首都プノンペンまで来たい(買い物もついでに、という事だろう)という希望があり次回開催のプノンペンでの調査に参加してもらう事にした。

前日の午後バイクで現地入りしCaTHAの2名と合流。2名は既に午前中に到着し、明日使用するレストランを選んでいた。簡素な夕食を囲んで、チェンライ大学でアドバイスをうけた項目を、すでに準備していたアンケート表と照らし合わせながらのミーティング。2人とも真剣。ビールをオーダーするのにもさすがに躊躇。。。

調査当日、会場は川の上に突き出した小さなローカルレストランで行われた。7名の卒業生である会員が出席、2名がドタキャンである。前回受験したが合格できなかった2名のクルクメールにも情報収集のために招待した。彼らには電話で既に幾つかの基礎情報に関するアンケートに回答してもらっていたので、来た順番に残りのアンケートの回答に取り組んでくれ、今回の趣旨説明については簡単にキーブーハン会長と私の方から話すだけですんだ。

今回は、彼らの所在地の状況(都市、遠隔地、ヘルスセンターからの距離など)、最も利用する生薬、最も治療を得意とする疾患、などの質問に回答してもらい、その証明として、実際に一番使う生薬のサンプルを遇えて前日に連絡して持参してもらった。いつも使うものならば手元にある筈である。
持参してもらった一番利用している生薬


また、彼らには各々がカンボジアで最も尊敬するクルクメールの名前を紹介してもらった。これは次の段階の調査のための質問で、レベルの高いクルクメールを選び出し、彼らに絞り込んでカンボジアのクルクメールに伝わる伝統医療についての調査を進めていこうと考えている。

アンケートにも一通り答えてもらったところで昼食を用意した。久々に集まった面々。募る話もたくさんある筈だ。

今回、スムーズには情報を収集することはできた。が、その一方で課題も残る。準備は殆どスタッフが準備した。アンケートなど良く準備したと感心した。しかし直前の直前まで何かと準備をしている始末。
集合時間も遠隔地の人を考慮し10時半としたのだが、実際にはこの会員7時半には集合地に到着していた。集合時間が遅かった分、皆不慣れなアンケートの回答に時間がかかり、より深いディスカッションをする時間を作る事ができなかった。食事の時間には皆うるさい。。。

今回の調査を反省に次回はもっと効率よくやっていきたい。次回の調査地は海沿いのコンポット県である。
村と一緒にハーバルビジネス [2011年12月31日(土)]

タイ北部の“Doi Num Subプロジェクト”の名前を聞いたのは2年ほど前である。フェアトレードや麻薬からの転作を推進するなど、薬草のコスメティクビジネスによって村の開発を行っているという事を耳にしていた。
Doi Num Subプロジェクトのハーバル商品

タイ訪問4日目、チェンライからカンボジアへ帰国する便はPM3:45。視察をアレンジしてくているチェンライ大学のスタッフは、半日の観光を進めてくれた。この時期は8年前に始まったフラワーフェスティバルが開催されているという。

折角の申し出ではあったが、“Doi Num Subプロジェクト”の事を思い出し、伺ってみたところ、Dr. Yinyongはプロジェクトと面識があるという。紹介してもらう事にした。

社長のMs. Dusadeeさんは、バンコクに本社をかまえていて不在との事。代わりに現地で商品の製造を担当されている妹さんのPawaleeさんと、パートナーで布製品を担当している英語の堪能なDoirさんが、わざわざホテルまで迎えにきてくださった。

できれば契約農家のところまで足を運びたかったのだが、時間が限られているため、今回は、材料の調達から製造までの一連の仕組みを紹介していただく事にした。始めに伺ったのは、昨日も訪れたMaechan市にあるDoi Tung地区。プロジェクトの名前の由来はここから来ている。

村からDoi Tung村に集められた原料となるハーブ

そもそも、チェンライが観光地として注目され始めたのは1990年以降。それ以前は麻薬の原料となるケシの栽培以外これといった産業もなく、中央の有力者が欲しいままに土地を活用していた。そんな時、今は亡きタイの皇太后(現国王の母君)が、長くお住まいになられていたスイスに似た情景であるという理由から、この地に居を構えられ、教育や公園整備などを奨励された。皇太后がなくなられた後は、彼女の財団が設立され、引き続き皇太后が愛した、この土地の天然資源の活用が国王自らの事業として継続。換金作物や薬草への転作が進められてきた。

製品がつくられる工房

“Doi Num Subプロジェクト”が契約している農家は30件。ここよりさらに北側の山岳地帯Huy Bai地区にある。バンコク本社からのオーダーの量に応じて、各農家からDoi Tungに原料が送られてくる。各薬草は、ここで洗浄、乾燥、細かくカットされ、国道に近いMai KhamにあるPawaleeさんの自宅の工房で布製の袋詰めと真空パック加工が施され、バンコクの販売所に送られていく。

この日は特別多い5000個のハーバルボールの注文が入っていた。日本からの注文も多いそうだ。他のメーカーは、あらかじめ全ての材料をミックスしてから袋に包み込んでいくそうであるが、この工場では手間はかかるが、内容が均一であるように、ひとつずつ材料の分量を計りながら袋詰めをしている。

手際よくハーバルボールを作っていく

工場長のPuyさんが慣れた手つきで次々にボールを作っていく。4人の常勤スタッフが平均して1人1日100個ものボールを作るのだとか。注文が大量に入った時には、近所の村人に加勢を依頼する。ご好意で実際にはハーバルボールを使ったマッサージのデモンストレーションをしてもらった。蒸し器で熱したハーバルボールを慣れた手つきで全身にパッティングしていく。

ハーバルボールはタイ伝統医療師だった父母からの伝承で製品を開発した。なかなか認知度が上がらず販売が軌道になるまでは、ずいぶん時間がかかったという。努力の甲斐あって、品質、アイデア、村おこしプロジェク、が国の内外で表彰されるようになった。17年間立った今の課題は、次々に著作権を無視した粗悪なコピー商品が出回るなか、高い品質をアピールしブランドを定着させていく事だという。また、20カ所の薬草栽培場所を整備して観光客向けのリトリートを作っていく事も来年から始めようとしている。


この小さな工房では、ハーバルホールと共に、薬草を作った蒸気浴の商品も作っている。カンボジアで同じ療法はチュポンと呼ばれ、婦人疾患や初期の風邪の治療に広く用いられている。タイとカンボジアの伝統医療の系統は近いので、アンコールワットを訪れる観光客をターゲットにサービスを展開していくというビジネスチャンスはあるだろう。そのためにも、カンボジアの伝統医療がどのような実態であるのかを調査し、観光行政にアピールしていく必要がある。

カンボジア版“Doi Num Subプロジェクト”が周囲の村のコミュニティーと共に活躍する日がくるに違いない。
伝統医療学校インターン先は? [2011年12月31日(土)]
チェンライの温泉の町で知られるChan市のBarthanに開設された伝統医療クリニック

タイ伝統医療大学の4年目には実施訓練のカリキュラムが組まれているが、悩みの種は、学生がインターンを行える場所である。チェンライ大学の伝統医療学部はユニークな方法で、4年生が実践としてインターンを行える場所を確保している。
伝統医療クリニック正面

この日、科学大臣の立ち会いのもと温泉の町として知られるMae Chan市のBarthanで、チェンライ・ラジャハット大学と4つの町との調印式が行われた。

調印の内容は、各町が自前で伝統医療センターを設置し、そこに大学の卒業生である伝統医師と大学4年のインターン生が外来診療にあたるというものだ。


大臣の立ち会いのもと、大学と4つの町長が伝統医療クリニックの共同経営に調印

学生達は実践の中、13の疾患に対し伝統薬の処方、医療マッサージ、ハーバルバスなどの処置を行う。大学側は一切費用をかけずにインターン場所を確保し、患者は保健証の提出によって無料で受診することができ、治療で国から支払われる保険料(国民一人当たりの支払われている年間平均保険料は47バーツ)は各町の収益となる。Dr. Yinyongの試算によれば、西洋医学の治療と比較するとタイ伝統医療の費用対効果は10分の1であるという。また、この日は、同じ敷地内の温泉スパの開業式も行われた。観光事業と結びつけば町には外国人観光客からの収入も見込む事が出来る。

治療には4年生のインターンがあたり、卒業生の伝統医療師が監督する

すでに、この方法で大学は各町と契約を交わし、現在10カ所の地域の伝統治療院を設置しインターンシップを実施している。大学の試みとしては刑務所への訪問治療も実施した。代わりに各刑務所内での薬草栽培を依頼することで原料の確保、入所者の職業指導になるという。Dr. Yinyong学部長の企画力には脱帽だ。

保健省は、全国10,000カ所の公立ヘルスケアセンターに伝統医療ユニットを設置していく事を決定した。しかし現在その数は200件にも満たない。今回の試みは、少なくとも25ある伝統医療大学の受け皿となる付属クリニック設置のモデルケースとなっていくに違いない。
伝統医療人類学:チェンライ・タイ伝統医療大学 [2011年12月29日(木)]
チェンライ空港でプラカードを持って出迎えてくれたのは、チェンライ・ラナバッタ大学伝統代替医療学校のDr. kanyanoot副学部長。これまでメールでのやりとりを行ってきたが、不覚ながら相手は若い女性だった。さらにはDr. Yingyong学部長の娘さんだと言う。タイ伝統医師教育では、数年前に大学ができた、と聞いていたが、Dr. kanyanootは、タイで唯一の伝統医療調査分野の博士(Ph.D.)であるという。

この大学の興味深いところは、伝統医療を人類学の視点から研究し、実際の地域医療にその研究結果を還元し、コミュニティーの活性活動をしているという点である。



アメリカの基礎医学研究を追随する日本を含め、一般的に現代医学の尺度において伝統医療は非科学的であり、医療サービスに加える条件を満たさないと見られている。いわゆる「エビデンス・ベースド・メディスン」の厚い壁である。多くの伝統薬は個人の体質によって、症状の改善がゆるやかで、また、その効果には個人の体質や状態によって大きなバラツキがある事から、なかなか科学的な証明をする事がむずかしい。


しかし、現代薬における副作用の問題、新薬開発費や医薬品の値段の高騰といった問題から、特に途上国においては、行き過ぎた安全基準を見直す傾向が見られるようになった。限られた予算の中で、増え続ける国民の健康を守るためには、あまりストイックな事を言っていられなくなったからである。そこで注目されたのが地域で数百年前から親しまれている伝統薬の活用。もし科学者が言うように思い込みや、暗示的なもの、危険性のあるものであれば、これら伝統医療は、すでに淘汰されてきている筈である。実際に数百年使われてきた薬や療法が、コミュニティーの中でどのように活用され、どれくらいの人々に指示されてきているか、という研究は、化学的には満たない証明を保管する事ができるだろう。それがフィールド調査を中心にした民族学であり、長年私自身、そのような研究をしたいと考えていた。

Dr. YingYongのチームは、その地域の伝統医療従事者を訪ね、特に熟練の伝統医療師を対象に調査を進めてきた。チームは、そのデータを無形伝統遺産として扱い、成果を出版物として形にした。その結果は、大学教育のテキストとし次世代の後継者の育成、地域ヘルスセンターでのービス、観光産業の新しいオプション、などに還元され、タイ北部のコミュニティーの活性と文化復興に役立てられている。


学校は、39年の歴史をもち20,000人の学生が通う巨大なチェンライ・ラジャハット大学の中、湖のほとりにある。タイ伝統医療医師コースは今年で10年目。約1200名の伝統医療医師を輩出してきた。タイでは一般に2学期制のところを3学期制にすることで、6年分に相当するカリキュラムを国で規定されている4年間に凝縮している。1学年は3クラス(各学生40人)。さらに修士コース、博士コースも用意されている。大学4年生になると契約している10のクリニックで実習を行う。

カンボジアからの来訪者に対して、学部長、副学部長、4人の講師がテーブルを用意してくれた。そこからは、お互いのバックグラウンドや調査経験について延々と終わりのない会話が続いた。元々個人的に興味のあった領域だけに、話は、今回の調査の手段として、私自身が博士課程の学生となり共同でリサーチを進めていこうという話にまで脱線していった(!?)いつかは、カンボジアからもぜひ学生を送り込みたい。


結論としては、今後もカンボジアの調査にたいしスーパーバイズしてくださる事を快諾してくれた。共同調査は大学側にもメリットがある。

今回、調査に関し漠然と遠いゴールに向かって、始めようとしていたが、CaTHAのメンバーの中から、アンケートと聞き込みをとおして熟練のクルクメールを選抜し、調査対象を絞り込むという次の調査段階に向けた当面の目標ができた。

タイ伝統医療視察1日目 [2011年12月28日(水)]
4月に正月を祝うカンボジアでは、年の瀬も押し迫った感は、全く感じる事が出来ない。伝統医療師で結成したCaTHA(カンボジア伝統医療師協会)のメンバーは、会員を対象に伝統医療師に関する基礎データを収集するべく調査の準備を進めている。

今月は、在学生50名を対象にアンケートを実施しながら、1月からの本格的な地方でのサーベイのための質問項目に改良を加えている。その一環として、タイのチェンライ・ラジャバァット大学/伝統代替医療学校(The School of Traditional and Alternative Medicine, Chiangrai Rajabhat University)を訪ねる事にした。

この大学のDr. Yingyong教授率いるグループは、カンボジア同様に残存する医学文献が少ない中、タイ北部のラナ地方の少数民族の中に根付く伝統医学大系を、インタビューを中心に調査し、体系化するという事業を実施している。
この手法が、これから実施していくカンボジアのクルクメールへの調査に活かせると考えた。

早朝のバンコク発チェンライ行き飛行機に乗るため、バンコクで1泊とることにした。保健省敷地内にあるDevelopment of Thai Traditional and Alternative Medicine (DTAM) は、つい先日、鍼灸研修の視察のために立ち寄ったばかりであったが、なんと携帯電話を公用車の中に忘れてくるという不始末をしでかしてしまい、可哀想な携帯電話の回収がてら頭を掻きながらの再訪問である。
マヒドン大学付属 50周年記念医学センター内の伝統代替医療ユニット

折角バンコク郊外にまで足を運ぶのであるから、伝統医療関連施設を半日視察できないかと、前回北京出張中でお会いできなかったアンチェリー副局長にアレンジをお願いしたところ、DTAMが計画していた、タイで最も歴史のある大学のひとつである、急遽マヒドン大学付属の [50周年記念医学センター(Golden Jubilee Medical Center)] への訪問に同行させていただく事となった。

タイで始めての医学部を立ち上げた公立大学として知られるマヒドン大学は、現在21校ある伝統医療大学コースに先駆け、4年生のカリキュラムを実施した始めての大学である。実のところ、日本財団に提出したはじめての企画書(提案書)がマヒドン大学と提携して進める鍼灸研修だったこともあり、始めての訪問にも関わらず、かなり一方的ではあるが親しみを持っていたりする。

50周年記念医学センターでは、現代医療のサービスと共に、伝統医療サービスが実施されており、3階には中国医学(鍼灸)、2階にはタイ伝統医学、1階には足底反射療法(リフレクソロジー)のブースがある。

まずは3階の中国医学ブースへ。一般に中華系の人々が多く住んでいる殆どの東南アジア各国および先進国においては、鍼灸は政府でTCM(中国伝統医学/中国系の伝統医学)として認知されている。「鍼灸は国際的なもの。日本では5世紀からの長い歴史を持ち。。。云々」と主張したところで、日本の伝統医療がKANPOであると知る情報通の政府高官はいても、鍼灸が“それ”に含まれていると知る人はまずいないだろう。
鍼灸の研修をうけた医師と伝統医療医師が治療に当たる

6部屋38床。常勤4名、パートタイム4名の施術者が鍼灸治療に当たっている。治療に当たっているのは伝統医療医師と医師である。案内してくれたAmpornさんも医師であり、政府保健省が主催する3ヶ月間の鍼灸研修をうけたという。一日に60〜70人の外来患者が訪れる。費用は350バーツ(約870円)内100バーツを政府が負担する。パルス(電気鍼)はオプションで80バーツの追加が必要。このブースでは鍼灸の他、推摩(ついな)、ホメオパシーが受診できる。治療時間は約30分。運動器系の患者が殆どで、治療は置鍼が中心である。

2階のタイ伝統医学ブースでは、伝統薬の処方およびタイマッサージと暖めたハーブの入った袋を使ったパッティングが受信できる。マッサージ治療は300バーツで、政府が250バーツを負担する。残念ながら外国人の場合全額実費での治療となる。パッティングはオプションで80バーツ。政府は医療の現場で代替医療としてタイマッサージを推奨しているが、慰安目的の受診者が多く(多いに予想できる)医療費削減策になっているか疑問視されていると言う。
タイ日本足ツボ技術交流!?

1階のリフレクソロジーのブースは今年10月に設置されたばかりだと言う。伝統医療大学のカリキュラムには、まだリフレクソロジーの授業は含まれていない。観光者向けに人気のあったサービスが今やタイ人の間にも普及したという事だろう。日本でのリフレクソロジーが普及した過程を考えると納得だ。本日の視察は、これが最後。時間もあり受診の勧めもあったので、お言葉に甘えて。。以前、日本でリフレクソロジーの指導を行っていた事を話すと、今度は逆に施術を頼まれ、日本―タイ足ツボ技術交換会となり、たいへん喜んでいただいた。「昔取った杵柄」である。

DTAM(タイ伝統代替医療開発局)のアンチェリー副局長は、アメリカで薬学の博士号をとったチャーミングなオバさま。国際会議の中ではいつも、シンプルで明瞭なプレゼンをしていて、一度お話を伺いたいと思っていが、面識はあったものの、ゆっくりと話をする機会に恵まれなかった。視察が終わり、郊外の保健省から彼女の自宅近くの市街地まで車で送っていただくことになった。

ちょうど先日、日本財団伝統医療担当中嶋さんがタイを訪れ、すでに話を進めてくれていた様で、カンボジアの事情も良く把握されていた。カンボジア保健省はタイ保健省に対し、高校新卒者の伝統医学大学の受け入れを打診しているのだが、カンボジア側の制度が進まない状況を考慮すると、卒業後の進路に保証がない。そう考えると、伝統医療体系の近い隣国同士での共同研究は、双方の国の状況が違っても、お互いににメリットが見込める、という話で盛り上がった。

タイ伝統医学の問題点についても話題に。教育制度については、元々寺院などの寺小屋で教えられていた講義が4年制にまでなったが、25校いずれの大学も、それぞれの校風があり、なかなか統一したカリキュラムを作るのが困難であるという。また幾つかの新しい大学では、ビジネスになるという理由で開校されているものの、専門の講師陣をもっていないそうだ。

タイは伝統医療における、東南アジアの優等生という印象があるが、急速な成長の中でエリートなりの問題も抱えているようである。



ミレニアム開発目標 [2011年12月15日(木)]
途上国の開発業界でよく耳にする「ミレニアム開発目標」というのがある。貧困問題をとりまく教育、医療、人権、環境、制度などの諸問題に一定の目標を設定し2015年までに世界中から貧困を撲滅しようと言う目標で、2000年に採択された国連ミレニアム宣言と、1990年代の主要な国際会議やサミットで採択された国際開発目標を統合してまとめられたものである。


医療分野においては、
@幼児・妊産婦死亡率の減少、
Aエイズ蔓延の阻止、
Bマラリア等の感染症発生率を下げる
事の3点が挙げられている。Aについてはコンドームの普及や血液検査のキャンペーン、Bについては環境整備や地方教育等の活動が功を奏し短期間に効果を上げているようだ。しかし@については、医療者の数の不足や人材育成に時間を掛ける必要もあってか、開発目標の中でも難航している様子である。カンボジアにおいては、かろうじて目標は達成したものの周辺地域に比べると、まだまだ死亡率が高いため保健省の最優先事業となっている。

おそらく2015年までは、この「ミレニアム開発目標」が「貧困脱出」の一番の目安となり、今後益々ラストスパートに向けて、この数字を少しでも高める事が途上国とドナーとの間での共通目標になるだろう。この目標が世界中の開発におけるスローガンとなり、各国の開発の指針となってきた事は間違いないだろう。しかし細部を見た時に数字のみがフォーカスされている事は否めない。ある国では、乳幼児死亡率を下げるために多少のリスクがある妊産婦には、積極的に帝王切開による出産を推奨し、貧困のリスクを下げるために出産を終えた女性に避妊手術を勧めていた。賛否両論ではあろうが、長期におけるQOL(生活の質)を犠牲にしているようにも思える。

途上国で伝統薬が見直されている背景には、現代薬の副作用という問題がある。安価な現代薬が普及する中で、村人に正しい使用方法が伝わらないために起きている。また乳幼児死亡率を下げる取り組みの中で、現代医療が推奨され、もともと各地で活躍してきた伝統産婆の手による出産を全否定する傾向も見られる。現実的に出産にかかる費用の高騰が起こっている。

2015年を機会に、開発目標の数字の陰に隠されたQOLへの問題に関して、多いに議論をもつ機会が増える事を期待している。
タイの鍼灸事情 [2011年12月07日(水)]
バンコク郊外にあるタイ保健衛生省を訪ねた。2度目の訪問である。
保健省の省庁自体が一つの街?同じ建物が並び今回も迷子に。。。

先日開催されたASEAN伝統医療会議からの帰り、バンコク行き航空便の待ち時間を共にしたタイ保健省代表団のアンチェリーさんから、タイ伝統代替医療開発局の中には、タイ-中国医学東南アジア研究所(Southeast Asian Institute of Thai-Chinese Medicine)があり、そこでは主にタイ国内の鍼灸を管轄し研究が行われているという情報を得た。今回タイに立ち寄った際、早速、研究所のYanchit所長を訪ねた。

タイ国内の中国伝統医学を国民医療に活用する目的で1995年に研究所としてスタートし、これまでに上海、天津、成都の大学と提携。鍼灸の研修は、西洋医学の医療従事者(医師、理学療法士)を対象に、3ヶ月(13週間)のコースを、過去13年間で26クラス、1300人に対し実施してきた。修了者が全国で活躍しているという。3年前に始まった5年間の伝統医師コースの卒業者の数は僅か388人。 研修をコーディネートする 医師は、鍼灸コースを受講した医師を中心とした1300人が伝統医療のネットワークと伝統医療の臨床への応用への自信が現在のタイ伝統医療普及活動に大きく影響しているという。
タイ-中国医学東南アジア研究所の門構え。来年は新庁舎に引っ越しとの事。

定着する鍼療法にも問題はある。タイでは医療費無料の政策のもと病院では材料費も含め1回の鍼治療を100バーツ(約250円)で実施しているという。中国製の鍼の価格相場は1箱100本入りで120バーツ(302円) 韓国製の鍼が160バーツ(403円)で手に入る。一度の治療で鍼を使い捨てすると、約20本の鍼の使用で24〜32バーツ(60.5〜80.6円)かかる。差し引くと診療報酬は、薬代に比べると僅かである。病院経営の視点から言うと、どうしても治療の効果があると解っていても利益のある薬を出す医師が多くなる事は万国共通である。

鍼治療にもそれなりの営業努力を必要とするのもまた、万国共通に違いない。安全性を高める話をする中で、手元にあった私が普段使用している日本鍼のサンプルをお見せした。実際に手に取ってみるのは始めてという事で、その細さと緻密さに席上の3人とも驚いた模様で「このような細い鍼をどのようにして刺入するのか?習得は困難に違いない」という質問があった。

タイは、今や途上国のレッテルから脱却し中途国として、国内外から、よりクオリティーが求められる社会へと移行しつつある。医療に関しては観光産業とのコラボレーションもあり先進国からの患者を取り扱う高度医療が発達し、今や内視鏡や抗がん医療分野を除いては日本の医療水準を上回っているという。もちろん国内では所得格差の問題から、すべての国民が高額医療を受けられるわけではない。それを支えるのは伝統医療の使命である。

鍼の話に戻るが、国が豊かになると施術に関しても、より繊細な刺激の治療ニーズが高まる傾向がある。一般に太いとされる中国鍼を扱う中国の企業も、日本をターゲットとして日本でも通用する精密な細い鍼を製造するようになってきている。
タイ語に訳された鍼の国際標準を示したガイドライン

世界情勢の話題がつきないASEAN各国の経済発展は目を見張るものがあり、伝統薬の製品パッケージだけを見ていても、その変化は明らかに国際水準が意識されており、ついつい手にとって見たくなるほどである。私の専門が鍼灸であるだけに、現在中国鍼の使用が主流のASEAN各国の鍼に関するニーズの変化に注目している。
カンボジア伝統医療のテキスト作り [2011年12月06日(火)]
国内の伝統医療に関する資料も未だ未整理のまま

伝統医療研修校の卒業生であるクルクメールで設立したCaTHA(カンボジア伝統医療師組合)は、カンボジア伝統医療師の実態調査の準備に取りかかっている。

国のどのような場所に、どのような年齢層の、どのような伝統医療従事者(クルクメール、生薬販売、ほねつぎ、伝統産婆、中医、 祈祷師)がいるのか、どのような生薬を利用しているのか、どのような病状を取り扱っているのか、専業なのか副業なのか、など、政府が1979年に伝統医療局を設立してから、とっくに調べていそうなものであるが、このようなデータが殆どない。2008年に国税調査の職業調査の中で調べられたデータはあるが他のデータ同様信頼性に欠くものである。

保健省は、伝統医療の育成コースを設置する手続きに躍起になっているが、未だカンボジアの伝統医療自体が何者かも解らないまま学校を始めて、果たして何を教えようとしているのだろうか。教育者育成のためにタイやベトナムの伝統医療大学に高卒者を留学させたいと申し出ているが、4年後、大学卒業仕立ての若者に、タイ伝統医療やベトナム伝統医療の講義を行えというつもりなのだろうか?

保健省伝統医療局スタッフと伝統医療に関するテキストの作成のための調査を促すも、調査には調査機関に依頼し、最低大学修士以上の専門チームでなければ不可能。そのためには20,000ドルの調査費が必要だという。。。

CaTHAには、もちろん調査の専門教育をうけたものはいない。全国の5カ所に足を運び、250人のCaTHA会員から、自分たちの地域の状況をアンケートとインタビューで地道に伺っていくという方法である。費やす予算は3,700ドル。
先日、私が担当した、日本財団の伝統配置薬事業を紹介する事業の中で、在校生のクルクメール達に、この調査の取り組みを紹介したところ、学生の一人が「自分たちクルクメールの手で、カンボジアの伝統医療に関する資料を作りたい!」という発言をした。
地方にある薬草園も未整備ながら薬草の数は増えた。次はどう整理するか。これも生きたカンボジア伝統医療の資料だ。

保健省伝統医療局では、カンボジア全体の問題でもある人材不足が悩みの種であり、スタッフに伝統医療の専門家が一人もいない。その人たちに果たして伝統医療を国民のために復興させたい!という情熱をもって働いている職員が何人いるのだろうか。

この国においても、おそらくは遅かれ早かれ伝統医療事業が国民医療として根付く日が来る事だろう。その時のためにもカンボジア国内の伝統医療に関する資料の整理、テキストの作成、サンプルとなる薬草園の整備は、今始めておかなくてはならない最優先課題だ。簡単な事ではない。しかし伝統医療に命と人生をかけているクルクメール達の情熱があれば、この難事業も近い将来、達成できる事であると信じている。
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