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インド最前線 Actual India 07〜08 [2007年06月16日(Sat)]

《 ウィークリースポット Weekly Spot 》その7
             2 0 0 7年6月 11日


G 8サミットの終了
 6月8日、ドイツのリゾート地ハイリゲンダムで開かれていたG 8、主要国首脳会議が終わった。日本の安倍首相も次回開催地は日本という責務を背負って参加していた。
 日本では、地球温暖化対策や核問題が話題になっていたようだが、インドでは、すこし違う相貌をみせていた。当然といえば当然で、その国の抱える直近の問題意識が注目される。日米関係を基軸に六者協議の行方などを外交課題にする日本と経済発展のより強力な推進と民生核開発を主題にエネルギー問題に挑むインドでは、様相が違って当然だ。
 現在、日印ともに親米路線を歩んでいるが、両国首脳がブッシュ大統領と会談した記事は、ただちに配信されていた。
 同時に7日の協議では、アメリカによるヨーロッパへのミサイル配備が、N A T O体制の強力化であり、ロシアにとって許容できない事態だというプーチン激怒の場面を現出した。
インドも日本も、ロシアは隣国であり、しかし過去半世紀の歴史の違いによって、その対応は異質であった。アメリカをはさんで日印が分かれるところだ。インド各紙は「冷戦の再来か?」と書いていた。
そして今回のサミットでは、もうひとつのポイント、中国の動きがインドにとって重要だった。

昨日の敵は今日の友 
9日の各紙一面は、インドのマンモーハン・シン首相と中国、胡錦濤主席のツーショットで飾られていた。前日8日、両首脳がベルリンで会談したのである。サミット終了直後のことだ。
 タイムス・オブ・インディアは「中国、最大の『敵』から最高の『隣人』へ」とリードしていた。日本語に意訳すれば、昨日の敵は今日の友、ということになる。
 会談は、胡主席がシン首相を「印中相互理解への的確な視座を持っている指導者」と称賛で迎えたところからはじまった。応えてシン首相の「中国はわれわれの最大の隣人」というフレーズがでた。これがタイムスのリードになったわけである。
 外務大臣立会いではじまった会談では06年11月、胡主席訪印以降、貿易は総量で5 6.8 %も拡大している。2 0 1 0年には倍増の年4 0 0億ドル規模に設定できる、と外相は報告した。
また、中国防衛担当大臣との別途会談では、シン首相から温暖化対策は、国連フォーラムなどを通して講じていくことが話し合われた。新興国と大国ではおなじ尺度の環境対策は難しい、という提言もなされた。これはG 8公式会議の直前に、新興国会議で討議されたものの繰り返しだ。
さらに、両者は印中国境問題について、インド東北端のアルナチャル・プラデッシュ州の接境地帯は、紛争が起こる脅威はまったくない、と一致した。
こうした薔薇色の合意が積み重なったこの会談に何の意味があったのか、不思議な首脳の出会いだった。

どこへ行くインドの軍事戦略
 インドの仮想敵の第一は、2 0 0 2年パキスタンとの停戦ラインの合意が成立して以降は、中国だった。紛争の可能性はまったくない、と楽観して両者は緊張を捨てることができるのだろうか。
 実は、同様の発言は5月半ば、インドの軍関係者からもでている。
 4月にインドは、懸案だった長距離核搭載可能のミサイル実験に成功している。諸国は平静に受け止めたが、中国だけが脅威を表明していた。
その後、ミサイルの定期実験を連続的におこなった。そして、5月中旬には、中国との国境策定、定期協議を開いている。すでに1 1回を数えている。
この直後、「紛争の可能性はない」という発言があったのだ。その後には、陸軍、海軍の高官が中国を訪問している。
5月下旬には、カシミール配属の兵站、工兵の削減をおこなった。パキスタンとは、双方が国境地帯の前線を後退させる交渉にはいっている。
すべてが和平化に向かっている情報だ。しかし、世界はそう簡単に亜大陸の平和を保障しないだろう。
最近、あるアナリストと議論した。陸海空、それぞればらばらで、どうも見えにくい、と一致した。
軍事戦略でいえることは、現在のインドはなにがなんでも民生核開発を成し遂げなければならない。軍略で無用な詮索を受けたくない、という意識は強くある。
そして、中国との共通課題でいえば、G D P比1 5%以上を費やして推進してきた装備近代化が、ようやく見通しがついてきた、ということもいえる。加えて、E Uに発言力を強化しようとしているロシアに対しては、印中が共同歩調をとることは可能なのである。
これが印中の奇妙なハーモナイズなのではなかろうか。

新サミットG 5
薔薇色の印中首脳会談には、やはり隠された課題があった。
 1 1日のザ・ヒンドゥをはじめ各紙は、ブラジルが新興5か国のサミットを提唱したというのである。
 加盟国はブラジル、中国、インド、南アフリカ、メキシコで、すでにB I C S A Mと略号まで命名された。新興B R I C S諸国からロシアが抜けた感覚だ。この5か国会議は、上海協力サミットやアセアンとは必ずしも重ならず、共通課題も未来志向的にあることは確かだ。
 ベルリンでの印中首脳会談で話題になった温暖化、経済外交拡大策など、提唱者のブラジルのルラ・ダ・シルヴァ大統領の提起に符合している。印中ベルリン会談は、新サミットの承認とお互いの取り組みを確認したものだったのである。
Posted by 森尻 純夫 at 20:50 | この記事のURL