07〜08 インド最前線 The Actual India 107回 東京財団ユーラシア情報ネットワーク [2007年05月20日(日)]
|
《 ウィークリースポット Weekly Spot 》その5
2 0 0 7年5月 2 0日 ハイデラバード最大のモスク、爆破テロ 1 8日午後7時、テレビニュースは突然、速報に変わった。 アンドラ・ブラデッシュ州ハイデラバード最大のイスラム寺院モスクで爆弾テロが発生したというのだ。第一報では死者、ひとりが確認されているという。 モスクは「メッカ・マス・ジット」、えっ、あすこが。おもわず絶句した。 金曜日の礼拝の最中が狙われ、数千人規模の参拝者がいたと続報された。だとすると、ひとりやふたりの犠牲で済むはずがない。 ニュース専門局のCNNインド、プロフィット、N D T Vなどは8時には現地に特派レポーターを送り込み、つぎつぎと新情報を流した。 1 0時の段階では、死者6人、深夜には1 0人、けが人は百人単位と伝えた。 1 9日朝刊各紙は、死者の数は1 6人以上、病院に収容されたけが人のうち、重篤者の生命は危険にさらされている、と書いている。 また、事件後の現場に集結した群集に警察、警備軍が発砲し、ひとりの犠牲がでたと報じている。1 9日午後のタイムス・オブ・インディアの電子版は、警備軍の発砲で5人が死んだ、と伝えている。メッカ・マス・ジットへの警察の立ち入り調査と周辺の警備に信徒たちが激高したのだ。 街は騒乱状態で、収拾がつかない事態に陥っている。 現地を訪れた州政府内相は「警備軍による犠牲は誠に痛ましい。お詫びするとともに、現場を離れてほしい」と談話している。 イスラム教徒ムスリムの古都 南インドの最北州アンドラ・ブラデッシュの州都ハイデラバードは、近年、バンガロールに次ぐI T都市として知られてきた。が、本来は古い都市で、イスラム王権だった時代もあって、インド・イスラムの集約地のひとつだ。 メッカ・マス・ジットは、インドでは非常によく知られた大規模で美しい景観を誇るイスラム・モスクで、ハイデラバード最大の繁華街にある。近くには、イスラム王権時代の城郭があり、街はこのモスクと城砦を中心に発展してきた。観光客がまず訪れる場所だ。 ハイデラバードは、インド・イスラムとガルフ、アラビア諸国のイスラムを結ぶ交差点でもあって、ドバイなどU A Eとの直行便も発着している。そのため、タリバンやアル カイダとインド国内のテロ組織を連結する要所という警戒感をぬぐえない地域性だ。ハイデラバードから数十キロの郡部には、テロ組織の拠点もある。 だからといって、タリバンやアル カイダがモスクを攻撃するとは考えられない。 カシミール分離主義者、犯人説 19日夕刻、警察は爆破の起爆に使ったとおもわれる携帯電話のシム・カードを現場から押収したと発表した。 にわかに、昨年9月、マハラシュトラ州の小都市で繊維織物の町マレガオンで起きたモスク・テロとの共通点が浮上し、犯人特定への推理と検索情報が飛び交った。 2 0日の朝刊各紙は、市中の収まらない混乱とともに、こうした関連情報を網羅している。特にザ・ヒンドゥは詳細に情報を提供している。 警察によれば、犯人グループは4人、あるいは数人で、きわめて的確、迅速に行動した。携帯電話を手から手に渡し、特定化されるのを防ぐとともに、爆薬(R D X)をモスク内に持ち込み、携帯から信号を送って爆破する手順だったと警察は推測している。 その犯人グループをデリーの中央情報局は、ジャイシュ・エ・モハムマド(J e M)やウル・ジャヒド イスラム(H u J I)などの組織が想定できると表明している。J e m はパキスタン領カシミールを基盤にし、H u J Iはバングラデッシュを拠点にしている。 どちらの組織も、反インド、カシミール分離独立を唱えている。 彼らが犯人だとすると、なぜ、いまなのか。 考えられるのは、先のパキスタン、カラチでの反ムシャラフ暴動を遠因として、最近、活動が停滞していた分離派が息を吹き返したということがある。 直接には、カシミール地方選挙が迫っており、親インド州政府の継続に警告する意味をテロに託した。 そしてもうひとつは、ムシャラフは自身の大統領選挙にむけて対インド、カシミール問題の強行路線を選挙キャンペーンにする可能性がある。このような印パ両国のカシミール支配固定化に強い警戒感を抱いた、という見方ができる。 さらに先週以来、パンジャブ州をはじめとする隣接州では、シクゥ教徒たちが、彼らの聖人祭を侮蔑し汚したとして大規模な騒乱を起こしている。アッサム州のグウァハティではアッサム自由戦線(U L F A)が、過去2週間、小規模な爆弾闘争を繰り返している。 国内と隣国の不安定材料の間隙につけ込んで、両政府へ揺さぶりをかけているということであろう。 いずれにしても、テロが生産性の低い卑劣な戦略であることに変わりはない。 |



