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雑誌『エネルギーフォーラム』他に拙論掲載 [2008年10月01日(Wed)]

雑誌『エネルギーフォーラム』10月号(10月1日発売)に、「ロシアとの原子力協定「凍結」に踏み切ったブッシュ政権の本音」と題した拙論が掲載されています。

また、ロシアの外交安全保障問題専門シンクタンクPIR CENTERが発行する雑誌"Security Index"(International Edition)2008年秋号に"THE TOKYO-MOSCOW-ASTANA TRIANGLE : STRATEGIC PARTNERSHIP IN NUCLEAR ENERGY IS INEVITABLE"と題した拙論が掲載されています。
ロシアも求めていた米露原子力協定の凍結措置 [2008年09月08日(Mon)]

繰り返すが、近日中に発表されるであろう米ブッシュ政権による米露原子力協定の凍結措置を以って、「米露関係が更に悪化する」とか、まして、「新冷戦時代の始まり」などと、早合点した分析をしてはならない。何故なら、以下に見るように、実は、ロシア側もこの措置を求めていたのだ。

8月25日付けロイター伝が報じるところによると、露原子力関係者は次のように語っている。
・ホワイトハウスは、画期的な米露原子力協定がグルジア紛争の人質にとられるのを避けるにも、議会での採決を遅らせるべきだ。
・最近の政治的出来事を考慮にいれると、議会がこれを承認することはないだろう。それ故、これが否決されるのを回避するには、一度、承認申請を引き戻して、新政権に委ねるのが適切だ。
・現在の政治状況に、原子力の平和利用の問題を左右させるべきではない。

とすれば、むしろ、この米露原子力協定の凍結措置を以って、米露は関係悪化のフェーズから、ダメージコントロールのフェーズに移行したと見るべきなのだ。

米露関係の裏テーマにはイラン核開発問題を含む中東問題が横たわっており、ここでは、ロシアがアメリカを必要とする以上に、アメリカがロシアを必要としている状況は何ら変わっていない。とすれば、先日の露プーチン-サウジ・バンダル会談も、米露関係のダメージコントロールの一環と解釈することにも無理はないだろう。
ライス国務長官の慎重な言葉遣いの真意 [2008年09月08日(Mon)]

「今はロシアとの(原子力の平和利用に関する協力)協定を前進させるのに適当な時ではないこれに関しては、後ほど、声明を出す予定だ」

9月6日、北アフリカ諸国を歴訪中のライス米国務長官は、記者団に向かってこのように述べた。筆者なりにこのライス国務長官の慎重な言葉遣いの裏に隠された真意を読み取ってみたい。

・アメリカのユーラシア戦略にとって、イラン核開発問題を含む「対テロ」でのロシアとの共闘関係の維持は極めて重要であり、だからこそ、ブッシュ政権は、プーチン大統領退任前日にロシアとの原子力協定への正式調印んに踏み込んだ。また、ブッシュ政権は、同大統領在任中に同協定が議会承認を得られるよう、最大限の努力を払ってきた。

・しかし、今回のグルジア紛争の結果、米露関係が急激に悪化。同協定がブッシュ大統領在任中に議会承認を得られる可能性はなくなった。ただ、アメリカはロシアとの関係がこれ以上悪化するのを望んでいない。

よって、同協定が議会で否決され、事実上の廃案となるのを回避する為にも、いったん承認申請を引き戻して、再び議会申請を行うのに適当な時がくるまで、同協定は凍結する。何れにせよ、この後の扱いは、次期政権に委ねたい。
米露原子力協定凍結は制裁であり、制裁でない。 [2008年09月06日(Sat)]

米ブッシュ政権が、"ロシアによるグルジア侵攻"への制裁措置として、5月に米露間で正式調印した原子力協定の米議会での承認申請を取り下げる可能性が高まってきた。この決定が米露関係を決定的に悪化させる考える向きもあろうが、筆者は必ずしもそうは見ていない。実は、この承認申請取り下げは、制裁であって、制裁ではないのだ。どういうことか?ポイントは、これが「破棄」ではなく、「凍結」である点だ。

筆者は、東京財団ウェブサイトに掲載の論考「日ロ原子力協定を巡り難しい判断を迫られる日本政府」の中で、次のように記した。(斜体文字部分)

実は、5月に米露両政府が原子力協定に調印した時点でさえ、ブッシュ大統領在任中に同協定が米議会で承認される見込みは必ずしも高くなかった。米議会では、イラン核問題でのロシアの協力は不十分との意見が強かったからだ。

これに対して、ブッシュ政権は議会証言などを通じて、何故、この協定が必要なのか必死の説得を試み、政府外でも米シンクタンクCSISが超党派の専門家達による”THE U.S.-RUSSIA CIVIL NUCLEAR AGREEMENR - A Framework for Cooperation -”と題する報告書を発表し、これを側面援助していた。

筆者は7月のモスクワ訪問時、同報告書の執筆者の一人、カーネギー・モスクワ・センターのローズ・ゲッテンミューラー所長(クリントン政権時のエネルギー次官)と意見交換した。同所長は、「ブッシュ大統領在任中に、原子力協定が議会承認を通過するとすれば、承認賛成に傾いている上院が下院と協議の上、これを通過させるというシナリオしかない」と述べていた。

因みに、その際、最大のキーパーソンが、先に民主党副大統領候補に指名されたジョセフ・バイデン上院外交委員会委員長だった。その彼も、民主党副大統領候補に指名されることを前提に、8月16−18日、グルジアを訪問。その後の声明で、「今会期内で原子力協定が議会承認を通過する可能性はなくなった」と明言していた。この時点で、ブッシュ大統領の在任中に原子力協定が議会承認を通過する可能性は完全に潰えたのだった。ある意味、ブッシュ政権による申請凍結の動きはこの現実を追認したものといえるだろう。


逆に、このような状況下で、ブッシュ政権が協定の承認申請を放置しておくと、同協定は議会で否決されることが確実視されている。これは即ち、同協定が廃案となることを意味する。それを避ける唯一の方法は、承認申請を一旦差し戻して、同協定の扱いについては、次期政権に委ねるしかない。つまり、ブッシュ政権による議会での承認申請凍結は、米露原子力協定の廃案を避ける為の救済措置の側面もあるのだ。

アメリカにとって、ロシアに対して、何ら制裁措置をとらないという選択肢はない。だが、イラン核開発問題を含む「対テロ」でのロシアとの協力関係の維持が不可欠な状況が変わらない今、ロシアとの関係を決定的に悪化させる事もできない。

そんな米ブッシュ政権からすると、米露原子力協定の議会承認申請の凍結という措置は、対外的には"ロシアによるグルジア侵攻"への「制裁措置」としてアピールできる一方、ロシアに対しては、同協定の廃案を救う「救済措置」と説明できる妙手なのだ。

米露関係の今後は、米露原子力協定の取り扱いも含め、次期大統領の判断に委ねられることになる。
米露関係に改善の兆し? [2008年09月05日(Fri)]

くしくも対ロ強硬派のチェイニー副大統領がグルジア、アゼルバイジャン、ウクライナへの訪問をスタートさせた昨日9月4日、米露関係に改善の兆しが見えてきた。

@米露両政府が、南オセチアでの国際監視人派遣について協議を開始した。
Aマケイン共和党大統領候補が、大統領指名演説の中で、「グルジアでのロシアの行動に目をつぶるべきではないが、大統領に就任した際には、ロシアと良好な関係を構築する」と明言した。
Bサウジアラビアのバンダル安全保障会議議長がプーチン大統領と会談。「サウジ政府は南オセチアでのロシアの行動は理解をもって受け止めている」と述べた他、ロシア製兵器の購入問題についても話し合った。

そもそも、サウジによるロシア製兵器購入の背景には、その代わりに、イランへの武器売却を断念させるとの意図が隠されている。しかも、米ブッシュ政権とも緊密な連携の下に行われている、との見方が有力である。とすれば、サウジの仲介で、イラン核開発問題を軸に、米露「対テロ」共闘関係の復活が模索され始めた可能性がある。要注目である。
露プーチン-サウジ・バンダル会談をどう読むか? [2008年09月05日(Fri)]

露ノーボスチ通信によると、昨日9月4日、サウジのバンダル安保会議議長(前駐米大使)がロシア南部の都市アストラハンでプーチン首相と会談した。ウシャコフ首相外交問題担当補佐官(前駐米大使)も同席した。同補佐官によると、バンダル議長はプーチン首相に対し「サウジアラビア政府は南オセチアでのロシアの行動を理解をもって受け止めている」と述べた。それ以外に、今夏調印した軍事技術協力協定に基づくロシア製兵器のサウジへの売却問題などが話し合われたという。

さて、筆者は、グルジア紛争を巡り米露関係の劇的な悪化がいわれる最中に行われたこのプーチン-バンダル会談には、少なくとも次の二つのメッセージが込められていると見る。

@グルジアからの南オセチアとアブハジアの両自治州の独立をロシアが承認したことで、チェチェンを含むロシア国内での分離独立問題へも悪影響があるのではといわれている。だが、90年代末、チェチェンの分離独立問題がかくも悪化したのは、サウジの資金がイスラム過激派に流入していたことが最大の原因だった。このタイミングでのバンダルの訪露には、「今回のグルジア紛争に絡んで、サウジがロシア国内の分離独立派勢力への支援を再開することはない」とのメッセージが込められている。

Aそもそもサウジがロシア製兵器の購入に前向きな背景には、ロシアによるイランへの兵器売却(特に、地対空ミサイルS−300)を阻止したいとの思惑があるとの見方が有力。とすれば、「このバンダル訪露には、米露関係の悪化にもかかわらず、サウジは引き続きイラン問題でロシアとの協力関係を望む」とのメッセージも込められている。

ただ、ここで一つの疑問が浮かんでくる。このバンダルの動きは、サウジ単独のものなのか、それとも米ブッシュ政権の「対ロシア関係」改善の意図を忖度したものなのか、という疑問だ。もし、後者だとしたら、グルジア紛争でこじれにこじれた米露「対テロ」共闘関係を、イラン核開発問題を軸に再度立て直すべく、サウジが仲介の労をとっているということではないのか?

くしくもこの日は、対ロ強硬派のチェイニー副大統領がグルジアを訪問した当日でもある。米ブッシュ政権内で、イラン核開発問題を含む米露「対テロ」共闘路線継続の必要性を確信するグループが、米露関係の再構築に向け、動き出した可能性がある。要注目である。
米政権の対ロ外交の主導権はネオコン派へ [2008年08月26日(Tue)]

8月24日付け英FT紙によると、米ブッシュ政権が、グルジア‐ロシア紛争に関連して、今年5月、米露間で調印した原子力協定の議会承認申請を凍結する意向だ。更に、翌25日、チェイニー副大統領が9月2日からグルジア、アゼルバイジャン、ウクライナ、イタリアを訪問することが発表された。

ブッシュ政権内は、その対ロシア政策を巡り、イランを含む中東地域(アフガニスタン)でのロシアとの協調関係を重要視するライス国務長官やゲーツ国防長官らリアリスト派と、これに反対するチェイニー副大統領らネオコン派の対立があることは、本ブログでも繰り返し指摘して来た。

上記の米露原子力協定は、ライス・ゲーツらが主導してきたイラン核開発問題の解決に向けたの米露連携の象徴である。ブッシュ政権による同協定の議会申請凍結と機を一にして、チェイニー副大統領のグルジアなどへの訪問が発表されたのは偶然とは思えない。米ブッシュ政権内での対ロシア外交の主導権が、ライス・ゲーツらリアリスト派からネオコン派に移行しつつあると見て間違いない。

なお、先に民主党のオバマ大統領候補の副大統領候補に選ばれたジョセフ・バイデン上院議員(現上院外交委員会委員長)も8月16−18日、グルジアを訪問。その直後に声明を発表し、「米露原子力協定が今議会で承認される可能性はなくなった」と明言していた。去る7月、モスクワを訪問した筆者は、元クリントン政権エネルギー省高官と会い、米露原子力協定の議会承認の可能性について質問していたが、同協定が議会で承認される上で、最大のキーパーソンがバイデン外交委員会委員長だった。

一方、共和党のマケイン大統領候補もグルジアとサーカシビリ大統領とは緊密な関係にあり、サーカシビリ大統領自身、紛争勃発以来、マケイン候補と電話で一度ならず対話している事実を公言している。また、妻のシンディー女史も間もなくグルジアを訪問する予定という。

このように、グルジア‐ロシア紛争は俄かに、米大統領選挙の重要争点の一つに浮上して来た。とすれば、先のロイター通信配信記事での筆者のコメントは修正せざるを得ない。米ソ「新冷戦」は云い過ぎとしても、米露の対立関係は米大統領選挙をまたいで長期化する可能性が高く、近い将来、国連でのイラン制裁決議を巡る討議で、ロシアが賛成票を投じる可能性はないといわざるを得ない。

勿論、この様な米露関係の悪化は、今後のイラン・アフガニスタンを含む中東情勢の行方にも、確実に悪影響を及ぼす。ユーラシア情勢は非常に危険な局面に突入しつつある。
グルジア紛争でコメント掲載 [2008年08月25日(Mon)]

グルジア紛争が今後の米欧露関係に与える影響について、ロイター通信からコメントを求められたものが、ウェブ上に掲載されています。詳しい分析は今月の分析レポートにて行ないます。
『諸君!』8月号に論文掲載 [2008年07月01日(Tue)]

本日発売の『諸君!』8月号に防衛研究所の兵頭慎治主任研究官との共著論文「ロシア双頭体制は新資源帝国をめざす」が掲載されています。
タイトルは編集部が付けたもので、執筆内容とは若干のズレがあるのですが、要は、未曾有のエネルギー価格高騰という追い風を受け、国際政治経済の表舞台に再台頭するロシア。米露中三国関係の構造変化を踏まえて我が国はロシアとどう向き合うべきかについて、論じたものです。是非、ご一読下さい。
マケイン共和党大統領候補が米ロ連携路線の継承を明言 [2008年05月28日(Wed)]

米共和党大統領候補に選ばれることが確定しているジョン・マケイン上院議員は、かねてより「G8からロシアを排除せよ」など、反ロシア的発言を繰り返してきたが、大統領選本選突入を目前に控え、その外交路線を大きく修正し始めた。
5月27日、デンバー大学で核安全保障政策についてスピーチを行ったマケイン候補は、2009年に期限が切れる戦略核削減条約(START)後について、法的拘束力を持つ条約の締結に支持を表明した他、イラン問題に象徴される国際的な核不拡散体制の構築についても、ロシアとの緊密連携が不可欠な国際ウラン濃縮センターや国際使用済み核燃料貯蔵施設の建設を支持すると初めて明言したのだ。
マケイン候補の外交戦略については、ネオコン派の影響力が強く、対イラン政策でも強硬路線をとるのでは、との見方が有力だったが、上記発言は、この見方が必ずしも正しくない事を示唆している。
マケイン候補の外交ブレーンに、ウィリアム・クリストル米ウィークリー・スタンダード編集長などネオコン派の面々以外に、現実主義派のブレント・スコウクロフト元米大統領補佐官が含まれることは、当ユーラシア情報ネットワークプロジェクトの渡部恒雄客員研究員が、5月13日のフォーラムで指摘した通りである。
これで、マケイン共和党候補が次期アメリカ大統領に就任しても、ブッシュ-プーチン時代に構築された核不拡散問題を含む「対テロ」での米ロ連携路線が継承される可能性が浮上してきたといえるだろう。(了)


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