8月24日付け英FT紙によると、米ブッシュ政権が、グルジア‐ロシア紛争に関連して、今年5月、米露間で調印した原子力協定の議会承認申請を凍結する意向だ。更に、翌25日、チェイニー副大統領が9月2日からグルジア、アゼルバイジャン、ウクライナ、イタリアを訪問することが発表された。
ブッシュ政権内は、その対ロシア政策を巡り、イランを含む中東地域(アフガニスタン)でのロシアとの協調関係を重要視するライス国務長官やゲーツ国防長官らリアリスト派と、これに反対するチェイニー副大統領らネオコン派の対立があることは、本ブログでも繰り返し指摘して来た。
上記の米露原子力協定は、ライス・ゲーツらが主導してきたイラン核開発問題の解決に向けたの米露連携の象徴である。ブッシュ政権による同協定の議会申請凍結と機を一にして、チェイニー副大統領のグルジアなどへの訪問が発表されたのは偶然とは思えない。米ブッシュ政権内での対ロシア外交の主導権が、ライス・ゲーツらリアリスト派からネオコン派に移行しつつあると見て間違いない。
なお、先に民主党のオバマ大統領候補の副大統領候補に選ばれたジョセフ・バイデン上院議員(現上院外交委員会委員長)も8月16−18日、グルジアを訪問。その直後に声明を発表し、「米露原子力協定が今議会で承認される可能性はなくなった」と明言していた。去る7月、モスクワを訪問した筆者は、元クリントン政権エネルギー省高官と会い、米露原子力協定の議会承認の可能性について質問していたが、同協定が議会で承認される上で、最大のキーパーソンがバイデン外交委員会委員長だった。
一方、共和党のマケイン大統領候補もグルジアとサーカシビリ大統領とは緊密な関係にあり、サーカシビリ大統領自身、紛争勃発以来、マケイン候補と電話で一度ならず対話している事実を公言している。また、妻のシンディー女史も間もなくグルジアを訪問する予定という。
このように、グルジア‐ロシア紛争は俄かに、米大統領選挙の重要争点の一つに浮上して来た。とすれば、
先のロイター通信配信記事での筆者のコメントは修正せざるを得ない。米ソ「新冷戦」は云い過ぎとしても、米露の対立関係は米大統領選挙をまたいで長期化する可能性が高く、近い将来、国連でのイラン制裁決議を巡る討議で、ロシアが賛成票を投じる可能性はないといわざるを得ない。
勿論、この様な米露関係の悪化は、今後のイラン・アフガニスタンを含む中東情勢の行方にも、確実に悪影響を及ぼす。ユーラシア情勢は非常に危険な局面に突入しつつある。