異動となり担当を外れても、自ら支援した事業には思い入れと関心がある。市民救急セミナーの3回目を個人的に聴講させていただいた。かつての助成担当者として、今後のために事業評価をここに残しておこうと思う。
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山口県、北海道(札幌市)と、開催されてきた助成事業である市民救急セミナー。2006年度全3回のうち3回目となる会が東京で開催された。
これまで2箇所での開催時は、地元NHKでも取り上げられるなどし、注目を集めたが、本東京会場は結果から言って、人が数える程度しか集まらなかった。失敗である。
内容が悪いわけではない。消防局の後押しを得、社会に必要とされていることをきっちりと発信している正当なセミナーであったことには間違いない。
渋い顔の主催者側。口には出さないが誰もが居心地の悪さを感じたであろう。
私は、閉会後の打ち上げには適当な理由をつけて帰る気でいたが、終わってみると反省会ムードとなっていたので、顔を出すことにした。
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反省会では次のような気付きがあった。
そもそも主催者は、介護保険や79条許可が始まる前から現場で人一倍汗をかいてきている人間。身辺の移送サービス利用者の病院搬送から始まって、徐々に広まっていき、自治体や病院から外注されるという、積み上げ(たたき上げとも言う)があってからこそ、今回、満を持して新たなインフラとして市民救急を普及させたい、と開催に至ったものだった。
今回のセミナーのタイトルは、「あなたの周りに救える命があります」。そして主なターゲットとしていたセミナー参加者は、市民救急活動に興味のある団体。
しかしながら、よく足元を見て欲しい。
送迎や移送を行う全国3000の団体のほとんどは、常日ごろ車で運んでいるサービス利用者が、車中で体調が急変したとき、適切且つ迅速に対応できるスキルは、現在あるとは言いがたい。そのような状況で、個々の団体が本セミナーに興味を持つか?いや持たない。「社会的に救急車が足りないことが深刻化しているだって?じゃぁ力になろう!」とはなり難い。
実は、問題の一つはセミナーの訴求性にあったのである。
「衣食足りて礼節を知る」ではないけれども、自分たちの活動いわば守備範囲において「救急」できる術を身につけてからこそ、一般の人を対象とした救急活動にも手を広げることができる。マズローの欲求5段階説が想起される。
すなわち、参加者の動機づけとしては、「あなたの利用者、いざとなった時に救命できますか」をサブタイトルとする。となると、自分の活動へと顧みる。現実的にはこれがきっかけとなる。ボトムアップから着手し、段階を経て市民救急への動きを創っていく必要がありそうだ。
良く言えば、「先駆的過ぎた」し、悪く言えば「走り過ぎた」ようである。
もう一つの反省点としては、情報の効率的な発信力の不足であった。
中嶋みゆきの「地上の星」という歌やプロジェクトXにも表れているように、制度を変えていく原動力となる人らの動きは、世の中では見えない所(結構泥臭い)で行われている。彼らと密になれば伝わってくるが、全員が全員は時間的距離的に不可能だ。最後に自伝を書くしかない。
今の時代、インターネットで情報発信を行っていくことで不特定多数に知ってもらうことが必要で、且つ、定期的にリアルタイムな情報を送り続けることが重要である。(ともすれば、泥臭いことをしている人間より、情報だけ操っている側が優位に立つ場合すらある。)
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訴求力の面に課題を見出したところで、店が閉店となり、反省会はお開きとなった。ブログ記事が長くなったのは、反省会が長かったせいだ。(…と、人のせいにしようかしら。)
参加者が期待通りに集まらなかったことは残念であったが、むしろなまじ顔見知りが多人数集まって、見た目上成功したようになるより、良かったといえる気がする。反省会を踏まえて、以上。
そろそろ「こだわりの〜」のブログ名を変えようと思う。