そうだ、家、建てよう。<前編> [2016年12月08日(Thu)]
◆続・クローン病中ひざくりげ(164)  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 「ほんとうに、家を建てられる可能性、あるのかな……」 「だから話してみようってば」 せっかく東京を離れ、田舎に移り住んだのだ。家くらい建てても、ばちは当たらないかな……。 家、建てるか! つぎに陶板浴へ行った日、さっそくスタッフさんに相談してみた。 「ほんとですかあ! ぜったい建ちます! だいじょぶですよ! そしたらこんど、家の完成見学会がありますから、見にこられませんか? 実感わきますよ!」 言われて、1週間後。れいによって車を40分ほど飛ばし、といっても運転するのは家内であって、わたしは助手席で寝ているだけでグロッキーで、ふらつきながら見学会場の家に入った。 ん? んん? おおお、これは、あのときと……同じだ! 森林浴をしているかのような、あの爽快なかんじ。気分がスーッとらくになってきた。陶板浴はしていない。ただ「家に入った」だけなのに! 「ようこそいらっしゃいました」 このまえ会った社長さんが出迎えてくれた。そのとなりに、初めて会う、若い営業マンらしい男性が。 「Kです。よろしくお願いします」 「松井です。こちらこそお願いします」 日に焼けたスポーツマンふうのイケメンだ。もし家を建てることになったら、この人にお世話になるのだろう。 お二人から、さまざまな説明をうけた。ふつうの新築の家にはホルムアルデヒドが充満していること。そのほかさまざまな化学物質が空気中に浮遊し、家を建てて5年たってもその濃度が変わらないこと。ひるがえってこの家は、れいの“抗酸化リバース工法”で建ててあり、それらの化学物質がないこと。むしろ酸化したものを還元すること。外壁は電磁波を遮断する素材で、これはNASAも採用していること。などなど。 気がつくと2時間がたっていた。 「だいじょうぶですか」 社長さんが私の体を気づかってくれた。 「はい。そろそろ疲れてきましたが……ふだんは、こんなにもたないんです。でも、この家のおかげなのでしょうね、きょうはだいじょうぶです。呼吸もらくな気がします。こんな家に住めたら、ありがたいと思います」 「わたしどもとしても、松井さんのような方に住んでほしい家なんです。すぐにこの家の本質を理解される方は、少ないんです」 「でも問題があって……とうてい、家が建てられるとは思えなくって」 クローン病のことを、詳しく説明した。さらに、そのためにふつうの貧乏ではないことも。 「なのでどう考えても無理かと……」 すると社長さん、 「いや、いけるでしょう」 「えっ!?」 「家を建てるとなったら、まずは金融機関にローンの仮審査をだしていただくんですが、これがけっこう通るんです」 「でも……ほんとうですか……?」 「とにかくやってみましょう」 ここでさすがに体力も限界となり、この日は帰ることに。 「では続きは、こんど陶板浴に来られたときに」 「はい。よろしくお願いします。きょうはありがとうございました」 見学会場をあとにした。 ほんとうに……家が建つ!? ◇ 「仮審査の結果が出たんですが」 見学会のとき社長さんのとなりにいたK氏と、打ち合わせである。 「どうでしたか?」 「通りましたよ」 「え! じゃあ……家が建てられるっていうことですか!?」 「これから金融機関に本申込みをすることになりますが、仮審査が通れば、本審査で落ちるということはめったにないです。というより、まずありません」 信じられない……。 「それで、とりあえず描いてみたんですけど」 テーブルに、K氏は何か図面を広げた。これは……まさか!? 「松井さんのお宅の間取り図です」 「えー! これが……わが家……ですかっ?」 「おっしゃっていた話から私が勝手に描いただけなので、これを叩き台にして決めていきます」 まじか……。まじで、家が建つのか。 わたしは、家という財産を所有することには興味がない。だが、いま私はほぼ1日じゅう家にいる。クローン病の療養の場所を手に入れるとなれば、話が別だ。 しかし、ほんとうに、かえすがえす、人生プランに1ミリもなかったことである。まだ実感がわかない。 (つづく) ◆ 編集後記  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ てゆーか、森林浴したいなー。体が良くなったら。 ◆このブログはメールマガジンの記事をアップしたものです。 最新の記事は、メールでお送りしています。 [無料購読する] ◆[ このブログのトップへ ] |