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松井 二郎
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切るべきか切らざるべきか、そこが問題だ [2012年11月09日(Fri)]

 ◆続・クローン病中ひざくりげ(25)
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 夏ミカンほどの大きさに腫れあがった、肛門の右側。

 こうなった状態を "肛門周囲膿瘍(こうもんしゅうい のうよう)" というが、いつまでも耐えていないで、外科で強制的に穴をあけ、

 "痔瘻(じろう)"

 にしてしまうことにした。
 痛みに耐えるのがイヤというより、そのほうが、痛みに耐えるストレスでステロイドホルモンをバラまかずにすみ、より早くクローン病が治るはずであるからだ。

 ただ、不安がいくつかあった。
 「先生、新しい肛門周囲膿瘍ができまして……。きょう、どうこうするというのじゃなく、どうしたらいいかご相談したいと思いまして」
 「いや、それは、切開しないとダメでしょ」
 「ただ、もし痛くて2〜3日うごけなくなったりするのでしたら、仕事もあるので、準備しないといけないもんですから」
 「仕事ったってねえ……。ウミから細菌は全身にまわるんですから、そうなってからではだめです。すぐ、やらないと」

 「すぐ、ですか」
 「すぐ、です」

 「……」
 「……」

 「ファイナルアンサー?」
 「ファイナルアンサー」
 (うそです。このやりとりはありませんでした)

 「わかりました。ではお願いします。でも先生、やる前に、なにをするかひと通り説明していただけませんか?」
 「ああ、まず麻酔の注射をして、それからウミがあるかどうか調べます。あるようだったら、メスで切開します」
 「え、じゃあ、ウミの出口をつくるだけですか?」
 「そうです」
 「あの……数年前ですが、初めて肛門周囲膿瘍をやったとき、肛門科に行ったんですが、肛門に指をつっこんで内側からウミをかきだされたんです。それが気を失うんじゃないかと思うほど痛くて」
 「そんな恐ろしいことはしません(汗)」
 「そうなんですか。わかりました」
 「がまんできれば、そのあとウミも出しますけどね。痛いようならすぐにやめますんで」

 なあんだあ。よかった。
 だったら、前回(肛門の左側)も、あんなに死ぬ思いで耐えていなくても、よかったんじゃん。
 それと。
 ってことはよ。8年前の、肛門科でのあの惨劇はなんだったわけ。ほかにやりようがあったんじゃないの?
 まあ昔のことはどうでもいいが……。

 「じゃあ、麻酔の注射をしますね」
 そのあと、まったく言われたとおりの処置をしていただいた。これが、8年前の肛門ぐりぐりと比べて100分の1ほども痛くなくてすんだのだ。いよいよ、あの肛門科のじいちゃん医師への不信が強まる。
 まあ昔のことはどうでもいいが……。

 入院は、せずにすんだ。
 それどころか、施術後、すぐに歩いて帰された。

 その夜。
 切った痛みで悶絶するかと思いきや、麻酔が切れても耐えられるていどの痛みで、きのうまでより、ずっと安眠できた。
 パンツにあてておいたガーゼに、夜中、どっさりウミがでた。
 翌朝、ハレはみごとにひいていた。

          ◇

 こうして、私のおしりには、左と、右と、仲よく "痔瘻(じろう)" が並ぶことになった。
 歩くと、痛いのは痛いが、フトンの上で終日、ああ、ううと呻(うめ)いていたのに比べたら、格段にラクである。
 ああ、動けるのって、しあわせだ。

 さあ、もう、これ以上の穴は、つくらんぞ。
 これも "免疫のリバウンド" であるから、なるべくしてなったのかもしれないが、中だるみせず、せっせと漢方・鍼灸に励んでいれば、あるいは、ならずにすんだのかもしれない。
 しかし、愚か者、おサボり二郎は、痔瘻になった。

 (つづく)




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 ◆ 編集後記
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 kao06.jpgこの原稿を書き始めてから、松井痔瘻と変換されるようになりました。





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アソコにどじょうを飼いし者 [2012年11月19日(Mon)]

 こんにちは。松井二郎です。
 松井痔瘻ではありません。

 いえ、どっちでもいいんです。

 では前回の続きを。




 ◆続・クローン病中ひざくりげ(26)
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 2011年9月。

 狭いアパートの自室で、天井を見上げていることが多くなった。
 肛門の右と左に、仲良く "痔瘻(じろう)" が並んだからである。
 なにしろ、直腸からおしりの皮膚まで、常時、穴があいているのだ。いつも痛いわけではないが、ときどき痛む。それも、かなり痛むことがある。

 いちばん困るのはイスに座れないことだ。
 そーっと座れば、一瞬、ビリッ! とくるのをガマンすればなんとか座れないこともないが、長い時間はムリである。
 となると、寝ているしかない。
 寝るのにも工夫が必要で、おしりがフトンに直接あたると電撃ダメージをうける。クッションを腰の周囲に配置し、守備力を上げておかねばならない。
 ちなみに、そうすると寝返りがうてない。寝ているのもつらい。
 クローン病だから、終日だるいのであるが、ずっと横になっているほどではないのだ。しかし、よもや、痔瘻のおかげで "ほぼ寝たきり生活" になろうとは。

 「いよいよ病人らしくなってきたな」

 読者諸氏にことわっておくと、これは "免疫のリバウンド" であるから、よくなっている過程である。
 けれども、はたからみれば、西洋医学を嫌う変人がとうとうここまで悪化したとしか映らないだろう。

          ◇

 それでも、新しくできた右の痔瘻は比較的おとなしくしてくれている。ハレはひいているし痛みもそれほどではない。
 問題は古キズ、左の痔瘻だ。
 たいへんお恥ずかしい話……

 ハレが陰嚢(いんのう)にまでひろがった。

 (え? いんのうって何? 淑女のみなさんは、わからなくていいです。竿(さお)じゃないほうです。)

 肛門の左側にあいている穴は、まわりがプックリとはれているというか、穴を中心に火山が隆起したように皮膚が盛り上がっており、その隆起が、なぜか、下へ下へとふくれてきて、おいおい、どこまで行くのか、と思っていたら、おいなりさん、

 ……失礼、
 陰嚢(いんのう)に突きあたるところまで成長して、そこで止まった。
 こうして、肛門の左脇から、たまぶくろ、

 ……失礼、
 陰嚢にかけて、プックリと山脈のようにはれあがったのである。
 それがまた、ときどき、ビリリ! と、かなり強い電撃が走る。さわると、ブヨブヨしていて、やはりビリッとくる。
 山脈のなかにウミがたまりやすくなってしまった。

 「うえぇ、キモチわりぃ」

 筆舌に尽くしがたいのである。
 チ●コ、

 ……失礼、
 陰嚢付近が、いつもブヨブヨしていて、ときどき痛む。この気持ち悪さ、たとえていえば、皮膚の下にいつもどじょうが入っていて、しょっちゅう動き、ときどき噛みつかれるようなかんじだ。

 こ、こんな場所にぃ。

 歩くと、さらにイタ気持ち悪い。
 いっそう "ほぼ寝たきり生活" に拍車がかかった。

          ◇

 これ、ほうっておいていいもんだろうか。外科で切ってもらおうか?

 さんざん迷ったが、このまえ、新しくできたハレは、切ったらすぐによくなった。このまま「どじょう」に耐えていたら、自分でよけいなステロイドホルモンをだして免疫を抑えてしまう。麻酔してでも、切ったほうが、まだしも免疫を抑えずにすむだろう。つまり、クローン病の治療にとってプラスだろう。と、イタ気持ち悪い日々をしばらく耐えて、
 「しかたない、切るか」
 と決意した、その日の夜中。
 とりわけ激しい痛みに襲われ、ウンウンうめき、そのうちにどうやら眠れたらしいが、翌朝、目がさめると、パンツにあててあるガーゼにすごい量のウミがでていた。
 それでもハレはひかない。

          ◇

 外科を受診した。

 「切りましょう」
 と速断する医師に、
 「お願いします」
 と今回は二つ返事。

 まずは麻酔の注射。おしりへの注射は、子供のころ、信じられないくらい痛かったものだが、いまは大人になったからなのか、それとも技術の進歩か、意外なほど痛くない。
 麻酔が効いたところで、医師は古キズの穴をさらに切りひろげはじめたようだ。これは痛くも何ともなく、メスがあたっている感触だけがする。
 「ウミ、ないですね」
 え? まじで?
 じゃあ、あれで、いままでにたまったウミは、とりあえず全部出たんだ。

 しかし、肛門から陰嚢にかけての「どじょう山脈」は、隆起したままだ。
 どうやら皮膚がこの形でかたまってしまったらしい。

          ◇

 というわけで、今回の切開はまったくのムダであった。
 結局、麻酔が切れたあと、この日の夜も眠れなかった。

 (つづく)




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 ◆ 編集後記
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

kao07.jpg 文章だとわかりづらいので写真をお見せしようかと思いましたが、わいせつ物チン列罪になるのでやめておきます。





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え? まさか、もうすぐ完治スか? [2012年11月29日(Thu)]

 ◆続・クローン病中ひざくりげ(27)
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 しばらくおしりの話ばかりしていたが、クローン病のメインの症状は、腹痛と下痢である。
 これは、どうなったか。

 まず、おなかだが……

 じつはいま、ぜんぜん痛くない、のだ。

 以前は、信じられないほどひどい腹痛で、夜中でも金切り声をあげていたが、 ちょっと前からは、便意をもよおす直前しか痛まないようになり、ずいぶんよくなったもんだな〜と喜んでいたのだ。
 それがいまは、チクリとも痛まない。

 下痢のほうはというと……

 以前、ひどいときは1日30回、水みたいな状態であったが、いまはだいぶ固形にちかいものに。固めの下痢、いや、下痢とはいえないような軟便が、1日10回くらいとなった。
 しかも、便意をもよおしても、ためておける。
 いままでは、便意を感じると同時に、すでに爆発寸前で、トイレにまたがると1秒もかからず排便していた。それがいまは、トイレにまたがっても、
 「あれ? ヘンだなあ」
 1秒経過しても、排便がはじまらない。しばらくかかる。
 「あ、そういや、これが普通の "大" だったっけ」
 ヘンなのは、いままでだったのだ。
 そして、おお、懐かしき、固形物がノロノロと直腸を押しながら進んでいく、この感覚!
 排出された "ブツ" も、まだまだ正常ではないものの、輪郭(りんかく)がはっきりしているし、ところどころつながっているではないか(食事中のかたはこのメルマガをあとで読んでください。あ、手遅れだ)。
 便の回数も、なかなか1日10回を切ってくれずにいたが、ついに、2ケタの壁をやぶり、9回とか8回とか、1ケタ台の日もでてきた。

 すると、体重も増えてきたのだ。
 最悪のときは40キロを切っていたが、じわじわ回復、48.3キロにまでなった。
 40〜42キロだったころは、1日30回の下痢のたび、全身全霊かたむけて、フラフラの体を
 「ふぬーっ!」
 と気合一発(出せるような気合などないが)、なんとか起き上がらせ、トイレに立っていたが、いまはスッと立って行ける。

 このように、クローン病の症状は、ずいぶん良くなっているのである。

          ◇

 かわりにひどくなってきたのが、アトピー。

 あいかわらず出ているのは首から上だけであるが、それも、いままでは「よく見るとブツブツがあるな」というかんじで、かゆみも、「かゆいといえば、まぁ、かゆいか」くらいの程度だったのが、いまは誰がどうみてもブツブツで、かゆみも、けっこうつらいときがあり、気がつけばポリポリかいていることも。
 そして顔の新陳代謝が異様に早くなった。顔を洗わない(というか、だるくて洗えない)日は、掻くと、角質がボロッと落ちる。鼻のまわりと口のまわりには、白いものが噴きだしている。脂肪である。

 この変化は、こういうことだ。
 いままでは化学物質を殺そうとしていた免疫が、IgG抗体を撃ちまくり、爆撃をうけた患部は「痛み」を感じていたのが、とうとう化学物質は殺せないとさとり、武器をIgE抗体に切りかえ(クラススイッチ)、化学物質を顔の皮脂腺(ひしせん)から追い出すようになり、脂肪の代謝量が増え、すると脂肪を好む細菌が顔に繁殖するようになり、この細菌が炎症をおこし、アトピーとなったので「かゆみ」を感じるようになった。
 つまり、治る方向にすすんでいるのである。

 「やった〜! このアトピーがおさまったら、完治じゃん」
 毎日、漢方薬を飲んでるもんなあ。
 毎日、お灸してるもんなあ。
 血液の数値も、はっきり、良くなっている。わかる人のために書いておくと……

 CRP 2.17mg/dl(正常値0.3以下)、
 アルブミン 3.6g/dl(正常値3.7〜5.5)。

 というわけで、ずいぶん調子がいいのだが、調子にのらないよう、気をつけておこう。

          ◇

 2011年10月。

 すっかり調子がよくなったので、ちょっと仕事をがんばり、ときどき外出もしていたところ、

 ジワジワ、悪くなってきた……。

 おしりも少しばかり良くなっていたのだが、またひどく痛みはじめたのである。
 さわってみると、
 「おいおい、またかよ!」
 プックリ腫(は)れている。
 しかも、肛門の右側と左側と、いっぺんにきた。
 片方だけ腫れているなら、もう片方をかばって動けるから、まだ、いいのだが、こうなると、立ち上がるのもひと苦労。歩くのもやっとの状態に、逆戻り。歩くときは、ガニ股になって、四股(しこ)でも踏むようなかたちで、
 「いったいどこのオヤジだ」
 というかんじで歩いている。格好はオヤジであるが、のっそりのっそりと歩くスピードは、老人以下で、道ゆくひとが奇異な目で見ていく。

 そしてトイレでは、ときどき
 「アギャーッ!」
 奇声を発している。
 排便をきっかけに、痛みが激烈になることがあるのだ。
 そんなときは、そのあとは1時間くらい、ギャアー、ギョエー、と、ふとんの上でもんどり打ち、いや、もんどり打つとよけい痛いので、がまんしてジッと動かず、ひたすら悲鳴をあげている。

 いつかこのアパートから追い出されるんじゃないか。

          ◇

 う〜ん。すこしばかり、活動しすぎたか。ホンのちょっと生活レベルを上げようとしただけで、調子にのっているつもりは、なかったんだがなぁ。

 てっきり、あとはこのまま順調に "クラススイッチ" が進んで、"免疫寛容" までいけるんじゃないかと思っていたが、まだまだ病人、まだまだ難病・クローン病を甘くみていたことが知らされた。

 (つづく)




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 ◆ 編集後記
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

kao07.jpg かつてのドラゴンボールのアニメのように、むりやり引き延ばしてるわけじゃありません。





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