知識は命 [2012年07月11日(Wed)]
「ボス! たいへんです! おしりに穴があきました」 「あぁん? シリに穴なんて、だれだってあいてんだろがよ」 「そうじゃないんです。2つめの穴があいたんです!」 「なんだ、性転換手術でもしたか」 「ああ〜、そうじゃないんですってばぁ〜!」 ◆続・クローン病中ひざくりげ(12)  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 電話は、お別れした担当医からだった。 「ケンカ別れしたというのは、松井さんがそう思っておられるだけで、私は全然そんなふうには思っていませんから、またよかったらいつでもお話ししましょう」 え、ええ〜! どうしよう……。 たしかになあ。また別の病院でイチから「クローン病なんですが」というところから始めるのもキツイしなあ。 この病院には、ご縁をかんじる。逃げ出したのも、"レミケード" がイヤなだけで、この先生じたいは好きだし、病院もとてもいい雰囲気なのだ。 うん。よし。また、お世話になろう。 ◇ 病院へ。まずは外科をおとずれた。 「松井さん、よろしく。外科の□□といいます。きのうの夜間救急のつづきですね」 おしりのガーゼが交換された。 「抗生剤の点滴をするので、しばらくは毎朝きてください。それと、このあとの治療ですが」 外科の先生はかんたんなイラストを描きながら説明した。 「肛門周囲膿瘍(こうもんしゅういのうよう) のあとは、痔瘻(じろう) といって、直腸とおしりの皮膚が穴でつながった状態になります。ふつうは手術して治すんですが、クローン病の痔瘻はなんども再発するので手術はしません。レミケードという薬をつかいます」 なんですって!? 「レミケードはやりたくありません」 またこの病院のお世話になるけれど、これだけは絶対にゆずれない、退(ひ)いてはならないデッドラインである。 外科の先生は当惑そうな顔になった。 「いいですか、松井さん。それでは治らないんですよ。ウミがおしりから内臓全体にひろがります。フルニエ症候群といいますが、レミケードの副作用を心配するまえに、痔瘻で死んでしまいますよ」 「それでもレミケードはお断りします」 「死んでも?」 「はい」 先生の表情はそうとうこわばってきた。 申しわけないけれど、仕方がない。 「それではおしりの穴がふさがるかどうかはわかりませんよ」 レミケードをつかうよりはそっちのほうがいいです、と言いたかったが、私のほうもこのへんでいっぱいいっぱい、まあ、よく言えたほうだ。 ◇ そして久しぶりに担当の先生と再会した。 「松井さん、入院されてみてはどうですか。レミケードはしませんから」 前回もの別れになったときより、ずいぶん物腰がやわらかくなっておられた。 「つかうのは栄養剤だけということでいいですから。闘病するにも体力が必要です。腸の炎症をとって下痢の回数を減らさないと、体重も増えてきませんからね」 それならば、いちど入院するのも、私自身いい骨休みにできる。休暇をとるつもりで、お世話になろうか。 (このあとすぐ松本先生に電話で相談したところ、それは価値のあることだからやったらいいよ、とのことであった。ちなみに "シートン法" はもうやらなくていいでしょうとも。ホッ。) 「入院の期間は、経過をみながらですが、まあ2週間から4週間。下痢が1日10回を切るところを目標としましょう」 入院が決まった。 「あと何か、ご質問はありますか」 「質問はないですが、先生……わたし、レミケードがイヤなだけで、先生には続けて診てほしかったんです」 それは正直な思いだった。 まもなく私は病院のベッドに伏した。 ◇ クローン病が治ってくれば痔瘻も治ってくると松本先生はおっしゃる。 今回できた、このおしりの穴は、直腸にできた潰瘍(かいよう)がおしりの皮膚まで貫通してしまったものだ。クローン病の一部、というよりクローン病そのものなのである。 したがってクローン病を治せばよい。 そして、治す方法は "レミケード" ではない。免疫力を上げることである。 いまは免疫力が弱いため、体内に入ってきた化学物質を "IgG抗体" が攻撃して腸がキズだらけになる状態、いわゆるクローン病になっている。免疫を強くし、攻撃方法が "IgE抗体" へと "クラススイッチ" すれば、腸での戦いは終わる。かわりにアトピー性皮膚炎になってくる。そこで完治にむけて もうひとがんばりしなければならないのだが、攻撃されなくなった腸はキズが治っていき、キズの延長でできた今回の穴も閉じるはずである。 松本医学を知っていたから断ることができたが、ふつう、あのように医師から死ぬぞと迫られたら、"レミケード" を受けいれるだろう。 "レミケード" は免疫力をゼロに近いところまで下げる薬である。受けいれれば、クローン病は治らない。 「知識は力」という言葉がある。だが、健康を守るときに「知識は命」だ。 (つづく) ※松本医院での診療を希望される方は 松本医院ホームページ http://www.matsumotoclinic.com を 熟読のうえにも熟読されてからになさいますよう、 お願いいたします。 ◆ 編集後記  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ じつは、今回は【メルマガ創刊8周年】記念号☆ きょうから9年目に入っております。 もしかしたら10周年達成とかできるのかな。創刊した日は、おもってもみなかったけど。 それまでには、おしりの穴をひとつに戻しておきます。 ◆このブログはメールマガジンの記事をアップしたものです。 最新の記事は、メールでお送りしています。 無料購読するには今すぐここをクリック |