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松井 二郎
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刻むぞ免疫のチャートッ! 燃えつきるほどヒートッ! [2013年09月18日(Wed)]

 速報です。
 松本仁幸先生が、今後がん治療もされるとホームページで発表がありました。
 こちらに、がんに対する松本先生の見解が述べられています。
 http://www.matsumotoclinic.com/column/column_33.html

          ◇

 では、前回の続きを。




  ◆続・クローン病中ひざくりげ(57)
   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 油断していたわけではない。
 けれども、またしても、歯が痛い。れいの歯肉炎である。

 「ああ、うう」

 場所はまえと同じ、左上の奥歯。グワ〜ン、グワ〜ンと、つねに激痛が波うち、その波が頭のてっぺんまで伝わる。奥歯から頭にむかって杭(くい)を打ちこまれているようだ。
 仕事をしないとヤバいのであるが、何も考えられない。口をぽっかりあけ、終日、フトンの上で天井を見ているしかない。

 ほんとうに、今度こそは、油断はなかったのだ。ヘルペスとの戦いでだるい体をひきずって、毎日歯を磨いていた。それどころか、痛いほうの歯でものを噛むこともしなかったのだ。まえは噛むと痛くなったから、噛みさえしなければいいだろうと考え、右側の歯だけで食事をすませるようにしていた。それなのに再発した。

 しかも、まえよりひどくなっている。
 前回はしばらく何も噛まずにいればおさまったのが、今度は、口をぽっかりあけて数時間しても、一日たっても、グワ〜ン、グワ〜ンがおさまってこない。
 もう一日待つ。
 おさまらない。
 さらにもう一日待つ。
 おさまらないのである。

 痛みもレベルアップし、冷たいものがしみるのは当たりまえ、熱いものもしみる。あわてて水を飲む。私は水は常温の水しか飲まない。それを飲んだ。
 ビキーン!
 「ぎゃあっ」
 しみるのである。常温の水が。
 それもふつうのしみかたではない。えぐられるようにしみる。

 歯磨きともなれば、激痛だ。
 歯ブラシがあたるだけで痛いので、磨くと自動的に悲鳴があがる。かまわず磨く。血がどっさり出る。うがいをする。
 ビキーン!
 「あぎゃああっ」

 あまりにひどいので、舌先で歯肉(しにく)をさわってみたら、
 「なんだこりゃ」
 ただれているのである。いきが悪くなった貝のように、ブヨブヨ、ビラビラしている。
 私は、あせった。ここまでひどくなったものが、免疫力だけで治るのだろうか? さすがにこれは、歯医者に行かなければならないのではないか。
 いや、前回、行ったんだ。それでも、痛み止めの注射をされるだけで、なんら解決にはならなかった。
 それなら免疫を下げるだけだ。やめておこう。
 とにかく、耐えよう。

 だが、しかし、それにしても治ってこない。
 再発してから3日たち、4日たち、5日たったが、いっこうに、痛みの勢いが衰えようとしない。
 治るのか、これ。

 6日たち、とうとう1週間、歯から頭に杭を打たれたままとなり、さすがに、まいった。

          ◇

 8日が過ぎて、ようやくおさまってきた。
 やれやれ。

 ところがだ。また、復活したのだ。
 そしてまたおさまった。
 また復活し、おさまり、何度でも歯肉炎になるのだった。

 それだけではなかった。
 口角炎も復活した。
 異様なだるさも戻ってきた。
 腹もねじり切られるように痛い。
 おしりに針を突き立てられるように痔瘻(じろう)も痛む。
 高熱もふつうに出るようになった。
 食欲がめっきり落ちたと思ったら、体重も42キロ台に、また落ちた。

 どうなっとるんじゃ。

 そしてこれらすべてが、歯肉炎がそうであるように、おさまっては、何度でも揺り戻すのだ。

 再び、歩けなくなった。

 フトンのうえで天井を見つめる。
 「そっか。相手はヘルペスなんだから、へたすると、クローン病が治るまで、いくらでも復活するんじゃないの?」
 免疫は右肩あがりに上がってくれるわけではない。治療を続けていても、株価のチャートのように、上がるときもあれば、落ちるときもある。機械ではない生身の人間を治すのだから、むりもない。
 すると、株価のチャートがストンと落ちたとき、ヘルペスウイルスは、
 「免疫が上がっているときはオレらの住みかの神経ごとずいぶん攻撃してくれたじゃねえか。やろうども! いまがチャンスだ。この体は、いまは免疫が落ちている。いまなら増殖してもとの数に戻れるぜ」
 と、またもや神経に増えまくる。
 免疫も黙っちゃいない。株価チャートが盛り返すと、
 「うおお、力がみなぎってきたぜええ。ああっ! ヘルペスウイルスのやつら、ちょっと目をはなしたスキにまた増えてやがる。みんな、いくぞ! 体内の異物はすべて殺す。それがぼくたちの仕事だッ! オラオラオラオラ」
 と、またしても神経ごと攻撃、体じゅうの神経に炎症をおこしていくのである。
 これで体じゅうが痛くなる。原因不明でかたづけられる難病のほとんどがこれだ。
 そして、このイタチごっこのような、何も治療が進んでいないかのような状態が、治るまで続く。
 そうだった。
 これが免疫のリバウンドというものなのであった。

 ああ。頭でわかっているのと、実際に体験してみるのとでは、雲泥の差だ。免疫を上げる治療が、ここまで苛烈(かれつ)を極めるものだとは。

          ◇

 「まあ、波はありますよねえ」

 鍼灸師さんは、そうねぎらってくれた。
 「じゃあ始めていきますか。きょうもコレからいきますね」
 「お、お願いします」
 チクリ。

 「いだぁあああっ!」

 (つづく)




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 ◆ 編集後記
  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

kao01.jpg SE時代に商品先物のチャートをつくっていたのを思いだします。
 もう変数の宣言のしかたも忘れましたが。





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